一枚の写真だけで流星の経路を計算する方法
もちろんふつうはそんなことはできません。でも流星群に属する流星であればそこそこできるのではないかと思います。
今回は理屈を書きます。次の記事では実際に計算してみる予定です。
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何か直接測定できない量があるときそれと関連付けられた量が測定できれば知ることができます。バネの伸びる長さを測っておもりの重さを知る、といった方法です。
直接測定できない量が二つあれば関連付けられた量も二つ必要です。離れたところにある物体の位置を三角測量で知るというのがそれです。
流星の出現点(消滅点)となると直接測定できない量は3個あります(地理上の経度・緯度・標高、あるいは方位角・高度・距離、あるいは観測地または地心を原点とした直交座標)
したがって関連付けられた量も3個必要です。写真からわかるのは2個(方位角と高度、あるいは赤経と赤緯など)ですから出現点を特定することができる違う観測地で写した少なくとも2枚の写真が必要になることになります。
だから1枚の写真ではどうしようもなく「こぐま座流星群の実経路を計算してみた」に書いたように出現点・消滅点の高度を適当に仮定して経路を計算するというのが関の山です。
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ところが流星群に属する流星の場合は事情が違ってきます。どちらから流星が飛んでくるかわかっているからです。
出現点・消滅点をまとめて考えるとわからない量は6個あります。一方写真から得られるのはそれぞれの方向を示す量の4個です。これに輻射点の位置2個が加わると既知の量は6個になりますので出現点・消滅点を特定できそうです。
観測地OからAの方向に出現点、Bの方向に消滅点が見えたとした場合流星はOAを結ぶ直線のどこかから出現してOBを結ぶ直線のどこかで消滅したとしか言えません。つまりG1とかG2のような経路も考えられます。しかし輻射点が決まるとこういう経路はありえないわけでR1、R2のような経路しか許されなくなります。
この図は二次元なので未知の量が4個に対して既知の量が3個なのでまだ経路を特定することはできませんが、三次元になると未知の量と既知の量の個数がいずれも6個になるので特定が可能になるはずです。
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なかなか計算がたいへんそうですが、今使っているExcelシート(「Excelで計算する流星の実経路」にあるもの)をちょっと手直しすればいけそうです。
まず出現点と消滅点を適当に仮定します。これから観測地Oからの出現点と消滅点の方向を求めます。また輻射点の方向つまり消滅点から出現点への方向を求めます。
そして
出現点の方向が観測結果と一致する
消滅点の方向が観測結果と一致する
消滅点から見た出現点の方向が輻射点の方向と一致する
の三つを条件を満たす出現点・消滅点をExcelのソルバーで見つければいいはずです。
幸い二箇所から撮影することができてすでに経路が特定できた流星があります(「実経路がわかったふたご座流星群の流星」)この結果と上の方法で計算した結果を突き合わせればこういう方法がどの程度有効かわかってくると思います。
(「一枚の写真と放射点から流星の実経路を計算してみた」へ続く)
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関連
「流星経路計算・記事一覧」
「ふたご座流星群・観測結果報告 - 1」
「ふたご座流星群・観測結果報告 - 2」
「ふたご座流星群・観測結果報告 - 3」
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