実経路がわかったふたご座流星群の流星
「同じ流星が撮影できた?ふたご座流星群」に書いた12月14日 22時15分45秒~49秒の間に(東京から見て)オリオン座のところを流れた流星なんですが、サダルテミスさんのお話を聞くとまったく同じ時刻に撮影されたもので同一の流星と考えて問題ないようです。
サダルテミスさんが撮影された流星
「飛んだね! ふたご座流星群☆彡 」
私が撮影した流星
「ふたご座流星群・観測結果報告 - 1」
そこで実経路を計算してみました。結果だけ書くと
出現 東経 140.14度、北緯 35.03度 高度 98km
鴨川市南南東10kmの沖合の上空
消滅 東経 139.85度、北緯 34.98度 高度 69km
館山市の上空
となりました(サダルテミスさんからオリジナルの画像を提供していただきさらに精度の高い計算を行う予定ですので“暫定値”です)
流星の実経路をどうやって求めるかというとふつうは流星の出現点、消滅点のそれぞれの観測地からの方位角と高度を求めてそれから三角測量的な方法で決定するということになりそうですが、それとはちょっと違った方法でやってみました。
===> 「Excelで求める流星の実経路」
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写真からは出現・消滅点の赤経・赤緯がわかります。時刻と観測地の緯度・経度・標高がわかれば方位角と高度(仰角)を求めることができます。
あとは二つの観測地の方位角と高度から流星の出現・消滅点を算出すればいいのですがちょっとやっかいです。地球が丸いからです。それも球ではなく回転楕円体です。
現実的な問題として出現・消滅はデジタル的な現象ではなく写真から出現・消滅点を特定しづらいということもあります。つまり二箇所で撮影したカメラも撮影条件も違う写真を比較するわけですから写真から特定した二つの出現点・消滅点が同一とは断定できないわけです。
今回はこれまでやってきた「趣味の天文計算」のノウハウを使い測量的な方法ではなく天文計算的な手法で流星の実経路を求めてみました。二つの写真の出現点・消滅点がじつは違っているかもしれないということも考慮しています。
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この方法は赤経・赤緯をベースにしているので観測地を仮定してどう見えるかもすぐにわかります。
たとえばこの流星を千葉(市役所)で見たらこんな風に写ったはずです。PENTAX Q7 08 WIDE ZOOM(35mm版17.5mm相当)で天の北極が上になるように撮影した場合を想定しています(自分の都合で恒星のデータを入れているので明るい恒星でも写ってない(?)ものがあります)
千葉なのにけっこう低いところに写っています。オリオン座の右側アルデバランからちょっと離れたところを流れています。千葉市って房総から意外と遠いんですね。
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具体的には
「観測地から見た月の視位置(赤経・赤緯)を計算する」
に書いた方法・Excelのシートを使います。
これは次の手順をとっています。
1. 観測地の地心直交座標を求める。
2. 月の視位置(赤経・赤緯)から月の地心直交座標を求める。
3. 月の地心直交座標から観測地の地心直交座標を引き算し月の測心直交座標を求める。
4. 月の測心直交座標を視位置(赤経・赤緯)に変換する。
この計算は別に月でなくても成り立ちます。例えば人工衛星とか。
もちろん流星に対しても使うことができますが一点注意すべき点があります。3.のところで観測地の地心直交座標は視恒星時の分だけ地球を回転させて考える必要があります。流星の場合はさらに流星の地心直交座標も地球の回転を考慮する必要があります。
流星の場合出現点消滅点がわからないから計算しているわけで2.の計算はできません。
そこでまず流星の地心座標を適当に(適切に)仮定して以上の計算を行います。
そうすると仮定した位置に対する流星の(観測地からみた)視位置(赤経・赤緯)が求まります。これを実際に二点で観測された視位置に合うように位置の仮定を修正していけば正しい流星の位置を求めることができるはずです。
「視位置に合うように位置の仮定を修正していく」のがたいへんそうですがこれはExcelのソルバーの機能を使えば簡単にできます。
地球が平面でないこと回転楕円体であることは1.(および3)のところに含まれていますので直接意識する必要はなくなります。
次から実戦的な方法を具体的に書いていきたいと思います。いろいろ書きますが最終的にはExcelに観測した赤経・赤緯を入力してソルバーを動かせば流星の経路がわかる、というようなものを目指します。
なおLibreOfficeのようなExcelの互換アプリ(?)でも(Excelとまったく同じように動くわけではありませんが)ソルバーの機能は使えます。Excelをお持ちでない方はそういうものを使っていただいてもいいと思います。
関連
「流星経路計算・記事一覧」
「ふたご座流星群・観測結果報告 - 1」
「ふたご座流星群・観測結果報告 - 2」
「ふたご座流星群・観測結果報告 - 3」
「じつはふたご座流星群じゃなかった(?)14日の流星」
「同じ流星が撮影できた?ふたご座流星群」
「実経路がわかったふたご座流星群の流星」
「Excelで計算する流星の実経路」
「決定された流星の実経路をSVGで地図にプロットする」
「計算した流星の経路を表示するための星図の作り方」
「サダルテミスさんが見た流星はこぐま座流星群だったか?」
「こぐま座流星群の実経路を計算してみた」
「趣味の天文計算・記事一覧」
「写真から未知の天体の赤経・赤緯を求める (1)」
「写真から未知の天体の赤経・赤緯を求める (2)」
「「写真から星の座標を得る」アプリ」
「観測地から見た月の視位置(赤経・赤緯)を計算する」
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