続・インダクタンスの測り方 - 5 - 交流ブリッジ
インダクタンスの測定については
「インダクタンスの測り方・まとめ」
にそれぞれの方法の概要があります。
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これまで5回に渡ってインダクタンス測定の実験を行ってきましたがあんまり芳しくない結果しか得られていません。
特に「インダクタンスの測り方 (5)」は問題で注意深く実験しその結果得られた値の信頼性も高いように思われました。なぜ得られたインダクタンスの値が周波数によって大きく異るのかいろいろ考えたのですが、うまく説明することがなかなかできません。
それで出てきた結論は結果が誤っているのではなく実際にインダクタンスが周波数によって異なっているのではないかということでした。
このとき実験に使用したコイルは手元に手頃なものがなかったのでリレーの巻線を使っていました。そこで今回は“由緒正しい”太陽誘電の電力用インダクタを使ってみることにしました。
LHL10NB104J
公称インダクタンス:100mH±5%(@1kHz、Q:0.0252)
直流抵抗:240Ω
電流:0.031Amax
自己共振周波数:0.085MHz
Q:30
というものです。
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あらためて実験回路を示します。“理論”は「インダクタンスの測り方 (5)」に書きましたので省略します。
実験の結果とそれから得られたインダクタンスと等価直列抵抗を記事の最後に表にしました。
周波数によるインダクタンスの変化は見られますがほぼ仕様値の100mHになっています。
等価直列抵抗も仕様の直流抵抗とだいたい一致しています。
なおこのインダクタの巻線抵抗は195Ωでした。仕様値の表記は“直流抵抗”となっていますが、これは実際には等価直列抵抗を指すもののようです。
これから考えるとやはり最初の実験に使ったインダクタはインダクタンスに周波数依存性がある等の理由を考えてもよさそうです。リレーのコイルはインダクタとして使うことを予想していない__そもそもリレーは直流で使うのが前提__のでそういうものを実験に使ったのが失敗のもとだったようです。
ブリッジの回路定数を変えて実験したり他の周波数でも実験してみればこのあたりの事情はもっと明確になってくると思います。
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実験結果
ブリッジが平衡する状態にして回路定数を確認し、ブリッジの平衡条件を満たすインダクタンスと等価直列抵抗を求めた結果です。
f[Hz] 周波数 |
366.4 | 824.0 | 1426 |
Vin[mV] ブリッジへの 入力電圧 |
172.8 | 139.9 | 72.1 |
Vbal.[mV] 平衡時の 電圧 |
2.27 | 0.85 | 0.22 |
R1[Ω] | 351.9 | 234.8 | 218.8 |
R2[Ω] | 386.0 | 75.6 | 25.1 |
R3[Ω] | 510.3 | 510.2 | 510.1 |
[μF] | 1.12 | 1.12 | 1.11 |
ωC[Ω^-1] | 0.002581 | 0.005783 | 0.009963 |
1/ωC[Ω] | 387.5 | 172.9 | 100.4 |
L[H] | 0.101 | 0.112 | 0.117 |
Rx[Ω] | 232 | 254 | 262 |
ωL[Ω] | 233 | 582 | 1047 |
平衡時の電圧が高い場合は信号源の高調波のレベルが高い等考えられます。
今回の場合 f=336.4Hz のケースがちょっと平衡時の電圧が高いように思われますのでこのケースについては要チェックでしょうか。
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コメント
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コイル自体が原因だとは思いもよりませんね^^;
投稿: 惑 | 2015年1月24日 (土) 19時38分
はい、リレーのコイルだってコイルには違いないだろう、と思ったのが甘かったです (^^;;
何かおかしいと気づかせてくれたこの交流ブリッジを使う方法はなかなかよさそうです。
高調波を押さえて測定すればそうとうに精度のいい結果が得られるように思えます。
投稿: セッピーナ | 2015年1月24日 (土) 20時06分