100万分の1秒くらいずれている?GPSの1PPS出力 GE-612T vs. GM-5157A
「GPS受信モジュール・GE-612T vs GM-5157T 1PPS対決(高分解能版)」に理論(?)を書きましたのでこれから実際にやってみた結果を書いていきます。
最初は“二つのGPS受信モジュールの1PPS出力にタイミングのズレはあるか?”です。
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重要な補足
この記事にもこの補足にもいろいろ書いているのですが(出力が安定した後は)1PPS信号がおそるべき精度で等間隔で出ていることは確実です。周波数カウントのタイムゲートなんかだったら安心して使っていただけます。
GM-5157Aの例
「確度0.0005ppmの周波数測定 - GPSの1PPS出力を使った高精度周波数カウンタ」
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さらに重要な補足
この実験はGM05157A側の出力にコンパレーターを入れたままテストしていたようです。そのためその遅延が含まれておりGM-5157Aの方の1PPSはもともと0.52μ秒程度遅れているのではないかと思われます。このことの詳細は
「“ガセ”だったGPS受信モジュールの1PPS出力タイミングの違い」
「GPS受信モジュール1PPS出力タイミング変動の高精度測定の方法を考えてみた」
「GPS受信モジュール1PPS出力・巴戦 - NEO6M-ANT-4P * GE-612T * GM-5157A」
「GPS受信モジュール1PPS対決 - GE-612T vs GM-5157A」
にあります。1PPS出力は(少なくともμ秒あるいはそれ以下のオーダーで見ると意外と変動しているもののようです。
(「“ガセ”だったGPS受信モジュールの1PPS出力タイミングの違い」より)
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この記事にある結果はGPS受信モジュールの1PPS出力タイミングに100万分1秒程度の違いがあることを示しています。
その後引き続き実験を行っているのですが実際の状況はもっと複雑です。まったく同じタイミングで1PPS出力が行われているケースやズレが逆転するケースもあります。
推測でしかありませんが
1. GPS出力の時刻のゆらぎ。
(これはデータシートからも予想されます)
2. 二つのGPS受信モジュールの経緯度・標高の取得内容の違いによる時刻補正の違い。
(経緯度・標高が違えばGPS衛星までの距離が違ってくるので時刻の補正値も異なると思われます。なぜ同じ場所においたGPS受信モジュールで内容が違ってくるのかが疑問ですが、おそらく反射波の影響ではないかと思います。)
等が考えられます。
最終的な結論を出すにはまだまだ実験を繰り返していく必要がありそうです。
なおXORの二つの入力に同一のGPS受信モジュールの1PPS出力を与えた場合タイミングの違いを示すパルスが出力されないことは確かめました。
またより分解能の高い(=1億分の1秒程度)テスト方法も検討中です。
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まずはこの回路です。どちらが進んでる、遅れてるということではなくズレがあるかないかだけを確実に調べるのが目的です。
二つのGPS受信モジュールの1PPS出力の立ち上がりあるいは立ち下がりでズレがあるとそこでパルスが一個発生します。
出力に「24ビットバイナリーカウンター」で作ったカウンターを接続し動画を撮ってみました。
毎秒2カウントされています(右上の1が点灯してもすぐに消え常に偶数になっています)
これは1PPSの立ち上がりでも立ち下がりでも1PPS出力にタイミングのズレが発生していることを意味しています。
前回の記事にはなかったのですが次はこんな回路でやってみます。1PPS信号がどのくらいずれているかがパルス数をカウントすることによってわかります。
これも動画を撮ってみました。
コマ送りしながら画像を見ると次のようにカウントされています。
-- | 1PPS 立ち上がり |
カウント | 1PPS 立ち下がり |
カウント |
初期値 | 84 | -- | -- | -- |
1 | 91 | 7 | 91 | 0 |
2 | 97 | 6 | 98 | 1 |
3 | 105 | 7 | 106 | 1 |
4 | 112 | 6 | 112 | 0 |
5 | 119 | 7 | 120 | 1 |
6 | 126 | 6 | 126 | 0 |
7 | 133 | 7 | 134 | 1 |
おもしろいことに立ち上がりのズレが大きく立ち下がりはほとんどズレがないようです。
使っているクロックは8MHzなので6~7カウントということは立ち上がりについては100万分の1秒弱のズレがあることになります。
“重要な補足”に書いたとおりこのときは100万分の1秒弱のズレがあったということでありこの二つのGPS受信モジュールの1PPS出力が常に100万分の1秒のズレがあるという意味ではありません。
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ところで最初の実験では毎秒2カウントされておりこれは立ち上がりも立ち下がりもズレがあることを意味しています。しかし次の実験では立ち下がりにはカウント0のところがありズレがないように見えます。
別の実験ですからそういう結果が出ても問題はないのですが、この現象は簡単に説明できます。タイミングのズレがクロックのパルス幅(この場合は1600万分の1秒)より小さくなったとき、もしズレを示すパルスがクロックのHighで出れば1カウントされますがもしクロックLowで出れば0カウントとなります。この時刻の測り方は測定対象のパルスの幅はクロックのパルス幅より大きいことを前提にしていますからこんなことが起こります。
つまりタイミングのズレが1600万分の1秒以下のときは平均二回に一回カウントされます。
確かに二回目の実験の立ち下がりのデータを見るとそんな感じです。
ここでいう“平均二回に一回カウント”の“平均”という言葉にはちょっとむずかしいところがあります。つまり必ず上のようなわかりやすい結果になるわけではないのですが煩雑になるので説明は省略します。
それから“1600万分の1秒以下”というのは要するに60ns以下ということです。ゲート一個で発生する遅延ですのでこの実験結果から立ち下がりのタイミングにズレがあると即断するのはちょっとムリがあります。このレベルになるとGPS受信モジュールから上記の回路に至る経路での遅延を綿密に検討する必要があります。XORに同じ信号を入力してもパルスは出力されない、というのをまだ確かめていませんでした (^^;;
同一のGPS受信モジュールの1PPSを双方のXORの入力とした場合ズレを示すパルスは出力されませんでした。
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関連
「GPS受信モジュール1PPS出力パルス幅の比較 GE-612T vs GM-5157A」
「24ビットバイナリーカウンター」
「バイナリーカウンターで測るGPS受信モジュール1PPS信号のパルス幅」
「(改訂版)GPS受信モジュールあれこれ」
「GPS受信モジュール1PPS対決 - GE-612T vs GM-5157A」
「GPS受信モジュール1PPS出力・巴戦 - NEO6M-ANT-4P * GE-612T * GM-5157A」
(RSフリップフロップ+XO、分解能:1/48,000,000秒)
「続・GPS受信モジュール GM-5157A vs GE-612T 1PPS対決」
「GPS受信モジュール・GE-612T vs GM-5157A 1PPS対決(高分解能版)」
「100万分の1秒くらいずれている?GPSの1PPS出力 GE-612T vs. GM-5157A」
(XOR+バイナリカウンタ+XO、分解能:1/8,000,000秒)
「GE-612T vs GM-5157T 1PPS対決(GPS受信モジュール)」
(動画、分解能:1/100,000秒)
「GE-612T vs GM-316 1PPS対決 - GPS受信モジュール」
(PCオーディオ、分解能:1/10,000秒)
「セット優先RSフリップフロップとリセット優先RSフリップフロップ(RS-FF)」
「超高精度SPIバスRTC(リアルタイムクロック)DS3234Sは一ヶ月に0.2秒進む」
「測定対象別記事一覧とリンク集」
「過去記事の一覧(測定、電子工作、天文計算)」
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