インダクタンスの測り方 (4)
どれも全体的に中途半端な記事です。まず
「インダクタンスの測り方・まとめ」
を読んでいただいてからの方がいいと思います。
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これまで三回“インダクタンスの測り方”という記事を書きました。
「インダクタンスの測り方」では電磁誘導からインダクタンスを求めるという定義にしたがった測定方法をとりました。
「インダクタンスの測り方 (2)」では正弦波の信号源に抵抗とインダクタンスを直列に接続し分圧からインダクタンスを求めるという方法でした。
「インダクタンスの測り方 (3)」ではLC発振回路を作り発振周波数とコンデンサーの容量からインダクタンスを求めました。
そして同じコイルに対しそれぞれが違う値を示していました (^^:;
今回はキャパシタンスが既知のコンデンサーと直列共振回路を作りその共振周波数を調べるという方法を採ってみました。
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実験回路はいたってシンプルです。
EBの電圧を測りながらウィーンブリッジ発振器の周波数を変化させていくとEBの電圧が低くなるところがあります(こういうときはアナログなメーターの方が便利です)
だいたいどの程度の周波数にディップがあるか調べたらディップのある周波数を知るためその周辺で次のような操作を繰り返します。
1. 周波数を少し変える
2. 周波数を測る
3. EAを測る
4. EBを測る
5. EB/EAを求める
EBが最小になる周波数はメータを見えていればわかるのでそれをディップの周波数にしてもいいはずですが、今回の実験で使っている発振器は出力振幅に周波数依存性があるため念のためEB/EAを計算してディップの位置を調べることにしました。ただ実際問題として多少振幅が変化するにしても共振したときのディップは大きく実用的にはEBだけ測っていれば十分でしょう。
こうやって調べた周波数とEB/EAの関係をグラフにするとこうなります。
ディップは500Hzのところにあります。ここがLC直列共振回路の共振点でしょう。
これからLの値を求めることができます。
L = ( 1 / 2πf ) ^2 / C = ( 1 / 2 / 3.14 / 500 )^2 / 1e-6 = 0.10[H]
100[mH]ということになります。
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ところでLC直列共振回路の共振周波数でのインピーダンスは0になるはずですから上の図はおかしいです。インピーダンスが0ならEBも0になるはずだからです。
実際はこういうことになっているのでしょう。
コイルの等価直列抵抗R2があるからEBが0にならないのでしょう。
等価直列抵抗は基本巻線抵抗なのですがそれだけではありません。コアの渦電流による損失とか(この実験を行っている周波数帯ではあんまり関係ないのですが)表皮効果とかあります。
この等価直列抵抗は上の実験結果から計算することができます。共振周波数では
EB/EA = R2 / ( R1 + R2 )
となるはずだからです。
R2 = R1 * EB/EA * ( 1 - EB/EA ) = 1000 * 0.235 * ( 1 - 0.235 ) = 307
となり等価直列抵抗は310[Ω]ということがわかります。
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この直列共振回路を使う方法は三つメリットがあります。
1. コイルの等価直列抵抗によって共振周波数は変わらないので等価直列抵抗の影響を受けません
コルピッツ発振回路でのインダクタンス測定(「コルピッツ発振回路の発振条件と発振周波数 (1)」)のようなことにならないわけです。
2. 信号源に多少高調波が含まれていてもコイルのインダクタンス自体の測定にはほとんど影響しません。
インダクタンスは正しく測定できても高調波があると等価直列抵抗は実際の値より大きいように見えます。今回の実験でも影響が出ているかもしれません。
3. インダクタンスの値の精度は周波数カウンタの精度で決まるのでEBを測るDMMの精度(確度)は問題になりません。
とは言え電圧の微小な動きを見ることができるレスポンスは必要なわけでミリバル(「交流電圧計(ミリバル)の簡単な作り方」)にアナログのテスターをつないで使うというのなんかよさそうです。
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「インダクタンスの測り方 (2)」では1.54V 1600Hzの正弦波信号源にコイルと1kΩの抵抗を直列に接続し抵抗の両端の電圧を測ると0.94Vになっていました。
等価直列抵抗を考えないと「インダクタンスの測り方 (2)」に書いたようにインダクタンスは130mHになります。
でももしコイルが100mHで310Ωの等価直列抵抗を持っているとすれば抵抗の両端の電圧は0.94Vになるはずです。
つまり今回の実験の結果と「インダクタンスの測り方 (2)」の実験結果は整合性があります。
「インダクタンスの測り方」と「インダクタンスの測り方 (3)」の実験結果は説明できていませんので、これですべてが解決したわけではありません。それから「インダクタンスの測り方 (2)」と今回の実験は実験条件(周波数)が違います。周波数が違えば等価直列抵抗が違う可能性もありますのでそのあたりの検証も必要でしょう。
「インダクタンスの測り方 (5)」へ続く
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コメント
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これがいままでで一番分かりやすかったです^^
ウィーンブリッジの周波数を少し変えるには可変抵抗を増やして回路定数に自由度をもたせてなんども正弦波が出ているのを確認してからやるのでしょうか。
もしそうなら意外と手間ですね^^;
投稿: ほよほよ | 2015年1月19日 (月) 22時26分
これ、記事を書かなければならないので丁寧にやっていますが、周波数を変えていってEBが最小になるところを探すだけでそんなに時間がかかるものではないはずです。
実際はウィーンブリッジで振幅制限をやっているので周波数を変えると振幅が落ち着くのに時間がかかるとかいろいろ面倒でした。
もうウィーンブリッジはやめてPIC(16F1705)のDACで正弦波を作るようにするつもりです
・発振周波数を細かく、精度よくコントロールできる
・振幅が周波数によらず一定
・多少高調波はありますが、ウィーンブリッジでPICと同程度まで波形をきれいにするのは意外とたいへんなので、手間要らず。
いろいろやってみた結果ウィーンブリッジを使うメリットはあんまりないような気がしてます。
投稿: セッピーナ | 2015年1月19日 (月) 22時53分
EAやEBって電源とR1の右端になるのでしようか?
そんなことも分からなくてすみません(ノ_<)
投稿: 惑 | 2015年1月20日 (火) 08時39分
すみません。図が手抜きでした。今差し替えました。
EA=グランドとAの間の電圧=信号源の出力電圧
EB=グランドとBの間の電圧=信号源の出力電圧からR1の電圧降下を除いた共振回路の電圧
です。
投稿: セッピーナ | 2015年1月20日 (火) 09時09分
この方法は私の実験環境には持ってこいの方法ですね(¬_¬)
まずはミリバルをなんとかしなくてはダメですけど、というよりDMMのほうですかね^^;
投稿: 惑 | 2015年1月20日 (火) 20時16分
はいDMMの精度に依存しないというのはメリットですね。
このような方法はもう一つあってやってみたのですが、ますます混迷の度を深めています (^^;;
このシリーズもそろそろ収束に向かわせたいのですがゴールが未だに見えません。
投稿: セッピーナ | 2015年1月20日 (火) 21時58分