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2015年1月31日 (土)

ベクトル電圧計 - 複素数としての電圧・電流を測る方法 - 原理

オームの法則は交流でも成り立ちます。でも電圧も電流もそして抵抗(インピーダンス)も複素数で表されます。

DMMでは交流回路の電圧・電流を測ることができますが測ってもわかるのはその(=複素数の)絶対値だけです。

絶対値だけではなく複素数としての電圧・電流を測るにはどうしたらいいかということについて考えます。

===

電圧がVの信号源にインピーダンスZの“何か”と抵抗Rとが接続されており、Rの両端の電圧を測るとします。

回路に流れる電流 I は

  I = V / (Z + R)

ですから抵抗の端子電圧Vrは

  Vr = VR / (Z + R)

となります。

インピーダンスZは一般的には複素数ですのでVrも複素数ということになります。つまり

  Vr = |Vr|cos(φ) + j|Vr|sin(φ)

ということです。

この式の|Vr|がDMMで測定される電圧です。ですからこの式のφを測ることができれば複素数としての電圧・電流を測ることができたということになります。

-------

(交流の)オームの法則で使われる電圧・電流・抵抗(インピーダンス)は複素数ですがこれはもちろん便宜的なものです。交流の位相の違い・変化を複素数で表しているだけです。

    Vr = |Vr|cos(φ) + j|Vr|sin(φ)

という式は交流の波形という意味では

    Vr = |Vr|sin(ωt + φ)

となります。つまり

    Vr = |Vr| ( sin(ωt)cos(φ) + cos(ωt)sin(φ))

ということです。

-------

仮にVrにsin(ωt)を掛けた電圧を作ることができたとします。

    Vr = |Vr| ( sin(ωt)cos(φ) + cos(ωt)sin(φ)) * sin(ωt)
      = |Vr| ( sin(ωt)sin(ωt)cos(φ) + cos(ωt)sin(ωt)sin(φ))
      = |Vr| ( sin(ωt)sin(ωt)cos(φ) + cos(ωt)sin(ωt)sin(φ))
      = |Vr| ( (1-cos(2ωt))/2*sin(ωt)cos(φ) + sin(2ωt)/2*sin(φ))

ここでVrの直流分だけを測定するものとします。つまりVrを(必要に応じてローパスフィルターに通し)直流電圧計で測るということです。そうすると

    Vr*sin(ωt)(の直流分) = |Vr|*cos(φ) /2

となります。同じようにVrにcos(ωt)を掛けてその直流分を測定します。

    Vr*sin(ωt)(の直流分) = |Vr|*sin(φ) /2

この二つからφを求めることができます。

    φ = atan2(|Vr|*cos(φ) /2, |Vr|*sin(φ) /2)

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つまり二つの入力端子に加わる電圧の積を出力端子に得ることできるような“もの”があれば複素数として電圧・電流を測定することができることがわかります。

(なんとなく「四象限アナログ乗算器(マルチプライヤー)EL4083の使い方 - 1」に続く)

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コメント

これはミリバル電圧計とはまた別の何かを作るということなよのでしょうか(≧∇≦)

この記事の最終目標はインピーダンスの値を“10.0+5.0j[Ω]”と表示できるようなインピーダンスメータです (^^)
最初は10MHz超まで使えるミリバルあたりを目標に始めようと思っています。

そんなメーターがあったら交流の勉強が捗りそうですね(; ̄O ̄)

デバイスのインピーダンスの周波数特性や温度特性を調べるのには便利だと思います。
でも回路の勉強はどうやってインピーダンスを測るかというのを考える方にあるでしょうからこういうのがあるとわかった気になっているけれどじつは本質的なところがぜんぜん理解できていないという人が増えそうですよ (^^;;

ところで学ぶ順?というのがあるのかどうかわかりませんが、直流RC回路って交流より後になるものなのでしょうか?
変な質問ですみません^^;

過渡現象のことですね。
ふつうは交流/高周波がある程度わかってから勉強します。
むずかしいと感じる人が多いからでしょう (^^;;
ものずごく単純に書くと.....
過渡現象についても微分方程式を解けばわかるということでは交流と同じです。
ただ交流の場合微分方程式を使わずに問題を解決する手法があります。過渡現象にもそういうのがあって過渡現象の勉強というのはそういう交流では出てこなかった手法をマスターすることですね。

調べていたら過渡現象というのが、やはり出てきて今までとは色合いが違うので躊躇しちゃいました^^;
よく見たらRCじゃなくてLCでした(;´Д`A

交流の勉強というのは定常状態について調べるわけですが、現実には定常状態というものはないわけで過渡現象というのは避けて通れないんですがなかなか面倒です (^^;;

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