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2015年2月 9日 (月)

もっとも波形がきれいなウィーンブリッジ発振回路 - 2

とても美しい正弦波が得られた「もっとも波形がきれいなウィーンブリッジ発振回路」ですが出力が不安定だという問題がありました。

今回はこれをどうやって安定化させるかについて書きます。

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まず実験して気づくのは波形の振幅が大きい方が(帰還抵抗R5を大きくして振幅を大きくした方が)出力が安定していそうに見えることです。

これは推測でしかありませんが...
出力を大きくするとナツメ球に流れる電流が大きくなります。そうするとナツメ球のフィラメントの温度も上がります。外乱を受けにくくなるはずですしおそらく特性が安定するのではないでしょうか。つまり電源電圧もあげた方がよさそうです(ここの記述にはほとんど根拠がありません。と思う、だけです)

これまで±9Vで実験しました。使っているオペアンプは±15Vまで使えますが電源の用意がないので±12Vでやってみることにします。
Natsumecase1level

かなり安定してきたのですが、それでも細かいゆらぎがあります。また周波数を変えると大きく出力が変動します。

でもスペクトラムは文句なしの状態です。
Natsumecase1spectrum

そこで帰還抵抗を思い切って大きくしてみました。
Natsumecase2level

出力がピタッと安定します。
ですがスペクトラムは悲惨なことになっています。
Natsumecase2spectrum

これだけ高調波が多いともちろん目でみてすぐわかるくらい波形はくずれています。
Natsumecase2wave

要するに出力がオペアンプの出力電圧範囲で制限され正弦波の“頭”クリップされているわけです。

------

そこで帰還抵抗を調整し振幅がほどほどに安定している点を探します。
“ほどほどに安定”とは周波数を変えたとき振幅が変動するが定常状態の振幅は比較的安定している状態です。
Natsumecase3level

この状態は周波数を変化させると振幅が変動しますが振幅は一定の大きさ(=オペアンプの出力電圧範囲)で制限されています。

スペクトラムも最初のものとそんなに変わりません。
Natsumecase3spectrum

このくらいの高調波ですと波形を見てもたいていの方は正弦波にしか見えないと思います。
Natsumecase3wave


これまでウィーンブリッジ発振回路はどうしても納得が行かずもう何ヶ月もブレッドボードに組んでいました。これでやっと基板に組めそうです \(^o^)/

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回路図
Natsumecircuit2_2

実際には周波数を可変できるようにするためR1、R2は二連の可変抵抗にしてあります。
帰還量を調整するR5は400Ω固定抵抗+500Ω半固定抵抗くらいにしておいた方が調整しやすいでしょう。
ナツメ球に直列に抵抗を入れてオペアンプの負荷を下げるというのも考えられますがやってみていないのでそれで正常に動くものかどうかはわかりません。

調整のポイント

電源電圧は高めの方がよさそうです。私は±12Vで実験しました。±15Vでもやってみたいです。

   <=== “勇み足”でした。±9Vでもちゃんと安定したきれいな波形が得られました。

帰還抵抗R5を通してかなりの電流が流れます。オペアンプの最大電力損失、最大出力電圧の出力電流(負荷抵抗)に対する特性、可変抵抗の電力容量等に気を配ってください。

振幅制限の99%をナツメ球でまかない残り1%をオペアンプ自体の非直線性(=出力電圧範囲に制限があること)でまかなおうというような気持ちでやっていますので最大出力電圧振幅が小さくなること自体に問題があるわけではありません。

可変抵抗がナツメ球の室温での抵抗値(私のは100V、5Wのもので約200Ωでした)の2倍以下だと発振が起きません。

可変抵抗の抵抗値が大きすぎると正弦波の上下がクリップされて波形がきたなくなります。

周波数を変えると出力が変動する範囲で可変抵抗をできるだけ大きくします

出力が安定し周波数を変えると出力が変動するという点が見つけられないときは安定性重視であれば可変抵抗の抵抗値はほんの少し大きめに、波形重視であれば抵抗値を心持ちちいさめにして妥協点を探します。ただ実際にやった感じだとDMMで出力を見ていて4桁目が変化しなくなるくらいに出力が安定するところでも波形はきれいでした。

波形を見ずに出力電圧だけ見ていても調整は可能でした。つまり可変抵抗の抵抗値が小さい方から少しずつ大きくしていくと出力電圧のふらつきがなくなります。そこで周波数を変えて出力が変動すればOKです。周波数を変えても出力があんまり変動しないようならちょっと抵抗値を小さくします。

この“周波数を変えると出力が変動する”というのはギリギリのところで動いているときの正常な動作だと思います。LC発振回路と違ってRC発振回路は発振条件を変えれば過渡現象が盛大に起きそうな気がします。
そのうちどういう過渡現象が起きるか「
Excelで解く過渡現象 - LCR回路」の手法で分析してみたいものです。

1kHzを超える周波数の交流電圧を正確に測れるDMMをお持ちの方はそう多くないと思います。そういう場合は「交流電圧計(ミリバル)の簡単な作り方」をお使いください。100kHzくらいまで測れます (^^;;

この発振器にしても発振周波数の確度や出力レベルの安定性(=一定レベルに保つこと)ができるわけではありません。そういうのが必要な方は
  「
PIC16F1705の8ビットDACを使って(実用的)正弦波発振器を作る
の方がいいと思います。


なお振幅制限に使うナツメ球はどんなものでもだいじょうぶだと思います。
この実験で使ったのはかなり前にビックカメラで買ったYAZAWA CORPORATIONのもの(13-000)で 室温でDMMで測った抵抗値200Ω、5Vの電池を接続して17mA流れました(=300Ω)別に百均で買ってきたもの(朝日電器、G-1010H)もこれよりちょっと抵抗値が低めなくらいでこれとほとんど違いはなく問題なく使えそうでした。
5Vの電池を接続したときは最初突入電流(と言ってもたいしたことはありませんが)が流れ数秒で上に記した電流に落ち着きます。

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  「もっとも波形がきれいなウィーンブリッジ発振回路 - 1
  「もっとも波形がきれいなウィーンブリッジ発振回路 - 2」 (この記事)

  「ウィーンブリッジ発振回路の帰還量(増幅率)と波形の関係
  「ウィーンブリッジ発振回路の発振条件 - Excelで複素数の計算
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  「ウィーンブリッジ発振回路の振幅制限には使えそうにないFET?

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