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2015年2月 6日 (金)

インダクタンスの測定にコンデンサは使うべきでない!?

正確には「インダクタンスの測定にセラミックコンデンサは使うべきでない!?」です。
いまさらこういう記事を書くのがいかにも素人ですが....

フイルムコンデンサならいいかというと...
よく売っているポリエステル(PET)のものはけっこう温度係数が大きいようです。セラミックでなくてもコンデンサは使わないほうが無難かも(「
メタライズドポリエステルフィルムコンデンサの温度係数を測ってみた」)

交流ブリッジを使う方法についてはもう二回記事を書いていますが再度やってみました。

交流ブリッジによる測定はそれなりの精度が期待できるように思うのですが、同じように精度が期待できるはずの「インダクタ(コイル)の複素インピーダンスを測ってみた」と結果が違っていたからです。

この記事はコンデンサの容量があてにならないから、という観点で書いていますが他にも問題はあります。例えばLCで発振回路を作ってその発振周波数からLを求めようとするとコンデンサやインダクタンスのESRの影響で発振周波数が変化するという問題もあります。

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インダクタンスの測定については

  「インダクタンスの測り方・まとめ

にそれぞれの方法の概要(特長、問題点)があります。

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これまでは交流ブリッジでインダクタンスを測定するとき、ブリッジに使用するコンデンサーの容量をDMMで測定しそれを使ってインダクタンスの値を計算していました。

今回は回路定数もちょっと変えているのですが、コンデンサーの値として「コンデンサーの容量とESR・誘電正接(tan δ)を測ってみた」にある方法を使い自分で測った値(キャパシタンスとESR)を使ってみました。

測定の方法はすでに書いているので結果だけ示すと

  インダクタンス 99mH、 等価直列抵抗 182Ω @1249Hz

でした。「インダクタ(コイル)の複素インピーダンスを測ってみた」での測定結果は

  インダクタンス 98mH、 等価直列抵抗 206Ω @1249Hz

で割りとよく一致するようになりました。一方前回「続・インダクタンスの測り方 - 5 - 交流ブリッジ」の交流ブリッジでの測定結果は

  インダクタンス 117mH、 等価直列抵抗 262Ω @1426Hz

であり、記事にはしていないのですがその後の交流ブリッジでの測定で

  インダクタンス 112mH、 等価直列抵抗 224Ω @1249Hz

という結果も出ています。

インダクタ(コイル)の複素インピーダンスを測ってみた」にしても「続・インダクタンスの測り方 - 5 - 交流ブリッジ」にしても測定の手法や測定値の処理について特に問題があるようには思えませんし不確かさも他の方法に比べれば小さいと思われます。なぜこんなに測定値に違いがあるのか不思議でした。

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これは前回までESRの影響を無視していたことがあります。今あらためて確認してみると前回の測定条件はESRの影響を受けやすいものになっていました。

しかしいちばん大きな理由はセラミックコンデンサーのキャパシタンスが使用条件によって大きく変わることにあるのではないかと思います。

今は「回路と動作確認 - 四象限アナログ乗算器(マルチプライヤー)EL4083の使い方 - 2」に書いた方法を使っているので測定するとき直流分をカットしていますが以前は信号源に直流分があっても測定結果に影響はない(と思っていた)のでPICのDAコンバータの出力(をPIC内蔵のオペアンプを通したもの)をそのまま使っていました。

メーカーの資料を調べてみるとセラミックコンデンサーのDCバイアス特性は悪くこれは決定的にまずそうです。DCバイアスが4Vあるだけでキャパシタンス80%減なんて製品もありました。これは極端な例ですがもしキャパシタンスが重要な要素となるならDCバイアスがあるような状態__例えば上のようにDCに乗った信号を使うとか、単電源の発振器を作る__というのはやめておいた方が良さそうです。

さらになんとコンデンサーに印加される信号の電圧によってもキャパシタンスは変化します。データシート上のコンデンサの容量は1Vrmsでの値を言っておりこれまたものによっては信号電圧が0.1Vrmsになるとキャパシタンスが半減してしまうものもありました。これまで(測定できる範囲で)信号電圧を小さくした方が(直線性がよくなり)正確な測定ができるはずと思っていたのでかなりショックです。

他のデバイスと同様に周波数依存性や温度依存性はもちろんあり(セラミック)コンデンサのキャパシタンスってなんだろうという気分になってきます。

交流ブリッジはとても分解能がよさそうなので力を入れていたのですが、こういうことを考えるとインダクタンスの測定に使うべきではないような気がしてきました。

記事の最初に書いた測定結果もたまたま一致しているだけのようにも思えてきます。

LC発振回路の周波数からインダクタンスを計算する「インダクタンスの測り方 (3)」にしてもLC回路の共振周波数からインダクタンスを決定しようとする「インダクタンスの測り方 (4)」にしてもこれまでコンデンサの容量が既知であることを前提としてやっていましたが、そういう前提自体かなりムリがありそうです。

今後はインダクタンスの測定は「インダクタ(コイル)の複素インピーダンスを測ってみた」に書いた方法にしぼって行きたいと思います。これはメーカがインダクタンスを測る方法(あるいは測定法として推奨する方法)__LCRメータを使う方法__によく似た方法でもあります。
(LCRメータについては「LCRメータの仕組みと作り方」にあります)

今の回路では測定周波数は1kHz前後なのでμHオーダーのコイルのインダクタンスを測るのにはムリがあります。これについては今測定周波数を1MHzにする準備を進めています。

ところでコンデンサを使うにしてもセラミック・コンデンサでないならいいのか?それはまだ調べていません。セラミック・コンデンサ以外で使えそうなものがあればまたそれを使った測定法を記事にしたいと思います。

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その後千石電商さんで「WIMA MKS2 63V 0.1μF(±5%、tanδ ≦ 0.008) メタライズドポリエステルフィルム」を買ってきました。ちょっとさわった印象としてはかなり安定した感じです。そのうち実験に使い記事にしたいと思います。
でも高かったです (^^;;

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コメント

あれ、この記事読み飛ばしてました~;;
最後の部分にあるように、これがフィルムコンデンサであった場合が気になりますね^^;

ミリバルアダプタなんですが、うまく測るコツがありそうです。測定対象とミリバルをつないで少しおきます。
DMMもVレンジにしたあとピンをショートさせて表示が0.00Vに落ち着くのを待ちます。それから測定します。

以前はDMMも含めてすべて接続してからPICの電源を入れて交流入力開始、測定値を読み取っていました。PICが交流を出し始めるまでの問題やDMMが4Vを表示している状態から交流を受けて測定を始める問題などがMIXしてよくわからない状態に陥っていたような気がします。

確度(許容誤差)、温度特性などフィルムコンデンサーの方がぜったいいいですね。
AC電圧に依存する特性は(あったとしても)耐圧の高いものを使えば(たぶん)よくて、DCバイアス特性は(これもあったとしても)DCがかからないように使えばいいでしょうからフイルムコンデンサを使えばひととおり解決するような気がします。
セラミックにもそれなりの特性のものがあるようですが入手法が....
はい測定器はやっぱり、電源を入れて30分待つ、でしょうか (^^;;
ミリバルは納得の行く結果が出てよかったですね (^^)
今度はシステムに組み込めるようにシングルエンド出力のミリバルを計画中です。

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