回路と動作確認 - 四象限アナログ乗算器(マルチプライヤー)EL4083の使い方 - 2
「四象限アナログ乗算器(マルチプライヤー)EL4083の使い方 - 1」に概要を書きましたので今度は実際に使ってみます。そしてほんとに乗算器として機能しているか確かめてみました。
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実験に使った回路はこのようなものです。
このEL4083は電流モード__入力された電流に対して出力される電流が決まる__のですがまわりは電圧モードが基本ですから入出力にバッファを入れます。
入力側はボルテージフォロワーで受け出力電圧を抵抗を通してEL4083の入力とします。
記事を書き始めて気がついたのですが、もしもっと本気(?)で作るのなら出力電流が正確に入力電圧に比例する回路にした方がいいのかもしれません。実際問題としてEL4083の入力インピーダンスは数十Ωなので上の回路でも特に支障はないと思います。
EL4083の出力はオペアンプのマイナス入力に直接接続します。こうすると(オペアンプ部分の入力抵抗は0とみなすことができるので)EL4083の出力電流にオペアンプの帰還抵抗を掛けた電圧が出力に得られます。また今回は二つの出力をそれぞれ別のオペアンプで受けその差分をDMMで測定しています。
シングルエンド出力が必要な場合の回路構成についてはまた別に記事にする予定です。
===> 「四象限アナログ乗算器EL4083CNで作る交流テスター - 周波数特性(1)」
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できあがった回路のテストをしてみました。
XとYを接続した上で電圧を加えます。この電圧をVinとすると
Vout = ( Vin / 19.6k ) ^ 2 / ( Vcc / 20.3k ) * 19.9k * K ( K = 0.92(Min), 0.965(Typ.), 1.01(Max.) )
の電圧が得られるはずです。つまり入力電圧の自乗に比例した電圧が出力されるはずです。
ところで抵抗が20kΩ前後になっているのはお徳用袋入りの抵抗から選別して使っているからなんですが許容誤差1%の金属皮膜抵抗としては抵抗値のばらつきが大きいです。ちょっと心配になります (^^;;
実験結果はこのようになりました。
入力電圧[V] | 出力電圧[V] |
4.100 | 1.951 |
3.770 | 1.649 |
3.459 | 1.386 |
3.167 | 1.162 |
2.949 | 1.005 |
2.755 | 0.875 |
2.439 | 0.683 |
2.142 | 0.524 |
1.848 | 0.386 |
1.529 | 0.260 |
1.312 | 0.187 |
1.094 | 0.126 |
0.752 | 0.051 |
0.486 | 0.012 |
この実験結果は上の回路にオフセット調整(トリミング)の回路を追加しオフセット調整をした上で実験したものです。オフセット調整についてはあらためて記事にする予定です
実験結果とK=1.00としたときの計算値をグラフにしています。
計算値より若干低い値になっています。
計算値と実験結果の差が小さくなるKを求めてみたら K=0.95 でした。この場合をグラフにすると....
少なくとも入力電圧が1.5Vを超えるととてもいい一致を示しています。一方1.5V以下では低い電圧ほど差異が目立ちます。
これは最小二乗法的な方法でKを決めているためどうしても電圧が高いほうがよく一致するようになります。低い電圧と高い電圧ではKが違ってくるというのが正しい解釈なのかも...
原因はいくつか考えられます。
1. 測定誤差が大きい(測定は単一のレンジで行っています)
2. オフセット調整が不十分であった。
3. 電源電圧(つまりバイアス電流)が実験中に変化した。
3. デバイス自体がもつ非直線性
この実験結果だけではどれと決めることはできません。
ただこの四象限アナログ乗算器は本来入力は交流、高周波を対象にしたものでしょうからこういう直流入力、直流出力はあんまり得意としていないように思います。それを考えると十分満足できる結果だと思います。
次は交流入力のテストをしてみたいと思います。
===>
「ちょっと凝った交流電圧計(ミリバル)の作り方 - 1」
「ダブラー(周波数逓倍器) - 四象限アナログ乗算器EL4083の使い方 - 3」
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関連
「測定対象別記事一覧(測定、電子工作、天文計算)」
温度、気圧をはじめいろんな物理量の測定方法について
「過去記事の一覧(測定、電子工作、天文計算)」
「四象限アナログ乗算器EL4083CNで作る交流テスター - 周波数特性(1)」
「複素数としての電圧・電流を測る方法 - 原理」
「四象限アナログ乗算器(マルチプライヤー)EL4083の使い方 - 1」
「回路と動作確認 - 四象限アナログ乗算器(マルチプライヤー)EL4083の使い方 - 2」
「ダブラー(周波数逓倍器) - 四象限アナログ乗算器EL4083の使い方 - 3」
「アナログ乗算器EL4083ので作った交流電圧計(ミリバル)の周波数特性 - 1」
「LCRメータの仕組みと作り方」
「自動平衡ブリッジの原理と回路の作り方」
「交流電圧計(ミリバル)の簡単な作り方」
「簡単に作った交流電圧計(ミリバル)の周波数特性」
「DMM交流電圧の周波数特性を調べてみた」
「ちょっと凝った交流電圧計(ミリバル)の作り方 - 1」
「ダブラー(周波数逓倍器) - 四象限アナログ乗算器EL4083の使い方 - 3」
参考
「intersil - EL4083 Datasheet」
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