ADコンバータでマイナスの電圧を測定するには?
インダクタンスの測定はLCRメーター方式でやると決めたのですが一つ問題があります。
インダクタンスに流れる電流を測るときその位相も必要なので正弦波、余弦波の両方を信号に掛け算しその直流分を測ります。
正弦波を掛けたときはこの電圧はプラスになるのですが、余弦波を掛けたときはマイナスになります。
一方ふつう入手できる(PICで使えるような)ADコンバーター(「MCP3425のもうちょっと詳しい使い方(ソース付き)」、「PIC18F26K22でSPI - 8ch/ADコンバータ MCP3208の使い方(ソース付き)」参照)はマイナスの電圧が測定できません(一見マイナスの電圧が測定できるようにも見えますがあれは差動入力の場合です)
もっともADコンバータによっては1mVも測れないというものでもないです。
「じつはマイナスの電圧もちょっとは測れる16bitADコンバータMCP3425」
「ADコンバータでマイナスの電圧を測るとどうなるか? - MCP3425編」
どうやってマイナスの電圧を測るか?
今ない頭を絞っています。
その後ない頭から絞り出した結果はこちらにあります。
「ADコンバータでマイナスの電圧を測定する方法」
こういうときはまずググってみます。
「週刊電気技術 - A/D変換器の測定範囲を負電圧まで拡張する」
なるほど~
入力電圧とプラス側電圧の平均値になりますから入力電圧が電源電圧の範囲にあればプラス側電圧とGNDの間に収まります。
ただこの方法の問題はゼロ点が不明確になることでしょうか。実際はオフセット調整を必ず行うのでそれで吸収できないことはなさそうですが。(Vdd+Vin)/2 が測定電圧になるのでVddを正確に保つか別に定電圧源を用意する必要があります。
似た方法としては入力電圧をシフトする方法もありそうです。これは入力電圧範囲が半分になりますが分解能は落ちません。ただ正確な定電圧源が必要なことは同じです。
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LCRメータに使うということ考えると別の解決法もあります。
インダクタンスを測るときについて言えば余弦波を掛けて測定するときだけマイナスになります。だったら余弦波を測るときだけ極性を逆転すればいいという考え方もできます。
これはアナログスイッチなりリレーを使えば簡単です。ただどっちもON/OFF抵抗とか耐久性とか考えなければならないのであんまり使いたくないです。
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「交流電圧計(ミリバル)の簡単な作り方」に書いた方法を使うのもありそうです。この場合入力がマイナスだろうがプラスだろうが必ずプラスの電圧が出力されます。
余弦波を測るときだけマイナスになるのはわかっているわけですから計算するときこれはプラスになっているけれどほんとうはマイナスなんだと考えれば__プログラムを作れば__すみます。
この方法の問題は出力がGNDから浮いてしまうことです。出力をシングルエンドにする方法もありますが、回路が複雑化します。
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cos(ωt)をかけるからマイナスになるわけで-cos(ωt)を掛けるという方法も考えられます。これは「PIC16F1705の8ビットDACを使って(実用的)正弦波発振器を作る」で作ったプログラムを1行変更するだけですみそうです。
ただこれをやってしまうと今度はキャパシタンスの測定で同じことに悩むことになります。けっきょくこれをやろうとするとcos(ωt)を出力するか-cos(ωt)を切り替える仕組みが必要になります。
これは反転増幅器を途中に入れるという方法もありますがどちらにしても自動で切り替えるのは面倒そうです。
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ということでお悩み中です。
今のところ cos(ωt)を反転増幅器を通して -cos(ωt) にするということで“緊急対応”しようかと思っています。「PIC16F1705の8ビットDACを使って(実用的)正弦波発振器を作る」で作ったPICに使っていないオペアンプがあるのでこれが利用できそうです。
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「コンデンサーの容量とESR・誘電正接(tan δ)を測ってみた」
「インダクタ(コイル)の複素インピーダンスを測ってみた」
「ちょっと凝った交流電圧計(ミリバル)の作り方 - 1」
「四象限アナログ乗算器(マルチプライヤー)EL4083の使い方 - 1」
「回路と動作確認 - 四象限アナログ乗算器(マルチプライヤー)EL4083の使い方 - 2」
「ダブラー(周波数逓倍器) - 四象限アナログ乗算器EL4083の使い方 - 3」
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