pn接合の順方向電圧(VBE)と温度の関係 -1
「pn接合の順方向電圧(VBE)と電流(IB)の関係」を書いてもう半年も経ちました。
この記事は“VBEと温度の関係を考える”というテーマの最初の記事だったおのですが後が続きませんでした (^^;;
最近環境も整備されてきたので再びこのテーマを再開したいと思います。
その後もっと精細な測定もやってみました。
「pn接合順方向電圧(VBE)の温度係数を測ってみた(高精度版)」
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VBEは温度が下がると2mV低下するというのはよく知られた事実です。このことを利用して温度を測定することができないかと考えたのがこのテーマに取り組もうと思ったきっかけです。
まずどんなものだかあたりをつけてみました。
「自記温度計、自記気圧計 - 複数のSPIデバイスがいっしょに使えなかった話」で作ったものには電圧を測る機能もあります。これで時刻や温度とともにVBEも測ってSDカードに保存しておくことにしました。
定電圧電源から抵抗を通してトランジスタのベースエミッタ間に電流を流しベースエミッタ間の電圧をADコンバータMCP3208で測ります。
この方法だとVBEの変化に応じて流れる電流も変化するのではないかと思われるかもしれませんが、それはそんなに気にすることはないと思います。
VBEの電圧がちょっとでも変わると流れる電流は大きく変化します。「pn接合の順方向電圧(VBE)と電流(IB)の関係」にある図のようにVBEの0.1Vの変化はIBの一桁以上の変化に相当します。このことはつまり、電流が多少変化したとしてもVBEはほとんど変化しない、ということを意味しているからです。
使っている抵抗は私の手元にあるものの中ではけっこう高価なもので1本30円もします (^^;;
この方法の場合260uAくらいのベースエミッタ間には電流が流れているのですがVBEが10mV変化したときの電流の変化は1uAくらいのものです。そしてこの1uAの電流の変化に対するVBEの電圧の変化は0.1mV~0.2mVくらいにしかなりません。
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測定装置(?)全体を外気にさらしたりお家の中に取り込んだりして測った昨夜から今日にかけての気温の変化とVBEの変化です。
気温は4.2度23.2度まで変化し、それに伴ってVBEも変化しています。ただ19度の変化に対し48mVも変化しておりちょっと大きすぎるようにも思えます。
なお気温は白金薄膜抵抗の抵抗値から求めたもので私の持っている温度計の中ではいちばん正確と思われるものです(「(趣味の)白金抵抗温度計の製作 - 準備編」などの記事にあります)
これを気温に対するVBEのグラフに作りなおしてみます。
やはりVBEの温度係数は大きくて-2.8mV/Kになっています。
なお途中にデータが乱れているところがありますが、これはデータの点数が少ないので急に温度が変わったときのものでしょう。温度計とトランジスタは温度の変化に対するレスポンスが違いますから急に温度が変化するとこういう現象が起きます。こういうデータは少ないので結果(最小二乗法で求めています)にはあんまり影響は及ぼしません。 <== 原因がはっきりしているのならちゃんと取り除いて計算すべきでした。
ところでこのグラフはなにかヘンです。10度を境に挙動が違うようです。試しに10度以下と10度以上に分割してみました。
10度以下のところでは温度係数は-1.6mV/Kと小さい値を示しています。
10度以上のところのグラフはこうなりました。
今度は温度係数は-2.1mV/Kとそれなりの値を示しています。
全体を通しての温度係数はこれらの平均になっているわけではないです。10度あたりのところで何か不連続な現象が起きているようです。この近辺のデータがなくてこれ以上追求できないのが残念です。
電圧測定はMCP3208を使っているのですが、今基準電圧として電源電圧を使っています。定電圧源の電圧が変化した(変化している)と考えるのが妥当なような気がしますが.....
上に書いたように直列抵抗の抵抗値が変化したというのはあってもこれほどの影響はないと思います。
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少なくともこの結果からVBEの電圧が温度によって-2mV/Kくらいの割合で変化しているのは確かなようです。
もっと広い温度範囲、より高い分解能で(ひとまず0.1mVにするつもりです)で調べてみたいと思います。
(「pn接合の順方向電圧(VBE)と温度の関係 -2 測定方法」へ続く)
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関連
「pn接合(VBE)の理想係数と飽和電流の簡単な求め方」
「pn接合の飽和電流と理想係数を測定する - ダイオード・1SS355」
「pn接合順方向電圧(VBE)の温度係数を測ってみた(高精度版)」
「pn接合の飽和電流と理想係数の温度特性(を調べる準備)」
「pn接合順方向電圧(VBE)の理想係数や温度特性の測定装置」
「pn接合の順方向電圧(VBE)と電流(IB)の関係」
「pn接合の順方向電圧(VBE)と温度の関係 -2 測定方法」
「pn接合の理想係数を測る」
「測定対象別記事一覧(測定、電子工作、天文計算)」
温度、気圧をはじめいろんな物理量の測定方法について
「過去記事の一覧(測定、電子工作、天文計算)」
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周波数カウンタなんですが、こちらの方のプログラムを16F648A用に移植して作りました。
T1CKIを測定に用いるところがポイントです。
http://www8.plala.or.jp/InHisTime/page078.html
もし、移植して作った私のプログラムソースが必要でしたら差し上げます。
投稿: ほよほよ | 2015年2月15日 (日) 03時34分
ありがとうございました m(._.)m
リンク先を拝見したのですが参考になりました。TIMER1でゲートタイムを作り、TIMER0でカウントし、オーバーフローをプログラムでカウントするということですね。
こういうのはプログラムよりアーキテクチャを理解することが先みたいですね (^^;;
低周波の周波数測定と高周波の周波数変動(=温度係数)測定が目的なのでまずはキャプチャだけで行ってみたいと思います(ゲートは1PPSが使えます)
温度・気圧測定といっしょにやるので割込みとループはできるだけ避けたいという事情があります (^^;;
投稿: セッピーナ | 2015年2月15日 (日) 08時30分