pn接合の順方向電圧(VBE)と温度の関係 -2 測定方法
“あたりをつけよう”としてやってみた前記事「pn接合の順方向電圧(VBE)と温度の関係 -1」ではそれらしいようなそれらしくないような結果になっていました。
次のステップに進む前に測定方法(回路)の紹介をしたいと思います。
VBEについては自動平衡ブリッジを使うより正確な測定方法が「ログアンプ - ベース電流(IB)とベース電圧(VBE)の関係」にあります。
またその後より精細な測定も行っています。
「pn接合順方向電圧(VBE)の温度係数を測ってみた(高精度版)」
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測定に関係する部分だけ抜き出すとこのようになっています。
MCP3208の計測結果はPIC18F26K22を使ったシステム(?)で行っていますが、それについては「自記温度計、自記気圧計 - 複数のSPIデバイスがいっしょに使えなかった話」及びその記事からリンクされている記事や「PIC+SPI+I2C 自記温湿度計+気圧計+8ch電圧計のソース - main()」を参考にしていただければと思います。
回路図とは直接関係ないのですが前回の反省から(センサーと基板を接続するコネクターは除き)すべてハンダ付けしました。安定性・再現性は向上していると思います。
電圧源、抵抗類は(アマチュアが容易に入手できる範囲ではありますが)比較的精度(不確かさ)が高いものを選んであります。また温度は0deg.Cと36.5deg.Cで校正した白金薄膜抵抗を使った温度計によるものです。
基本的には定電圧源から抵抗を通してトランジスタやサーミスタに電流を流し電圧降下を測定するという方法です。トランジスタに関しては定電流源を使うべきだとは思いますがそうすると定電流源の温度特性を調べる必要が出てしまいます。前記事に書いたとおりこういう方法でも結果にはさほど影響しないですし、影響が無視できない精度の測定になっても回路定数などから補正も可能なのです。
VBEの電圧降下を測定するときは(赤い線で示したように)両端の電圧の差分を見るべきなのですが今はベース側の電圧しか測っていません。実測すると分解能1mVであればこれで問題なさそうです。トランジスタのベース、エミッタからは2本ずつ線を引き出してあり電流を流す線と電圧を測定する線を分離して測定できるようにはしてあります。
昨夜から今朝にかけても測定してみました。
深夜の屋内はほとんど温度が変わらず、そこからとつぜん屋外に出したので二極分化的結果になってしまいました。
サーミスタ(Th2)もこの図は上の回路図での電圧降下を示しています。これからサーミスタの抵抗値を求め「サーミスタ温度計の精度を調べる - 1」に書いた方法で温度を求めます。
肝心のVBEの温度による変化はこうなっていました。
途中がないのですが、今回は温度とVBEの関係はだいたい線形になっているようです。温度係数は-1.8mV/deg.Cになっています。これを見ると少なくともVBEを使って0.5度分解能の温度計は問題なく作れそうです。
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前回の結果でいちばん気になったのは電源電圧の温度特性でした。測定に使っているMCP3208は基準電圧を外部から与えるようになっており、今は基準電圧として電源電圧を与えているのでこれが変化するとそのまま測定結果に影響を与えてしまいます。
今回は電圧基準の電圧を分圧しこれをMCP3208で測定するという方法で間接的に電源電圧の安定性を調べています。
基準電圧を作るのに使っているのはLM4040AIZでこれは電圧の確度0.1%(つまり誤差は4mV以下)と標準20ppm/度の温度係数(つまり温度が50度変化したときの電圧の変動は標準1mV)ととても小さいです。
もしこの基準電圧(を分圧したもの)を測定しそれが温度によって変化するようであればMCP3208の基準に使っている定電圧電源の電圧が変動していることになります。
抵抗で基準電圧を分圧しているところがちょっと問題ですが、ここは同じロットの0.5%ものの金属皮膜抵抗を使って分圧しています。
温度が15度下がると基準電圧の測定値は2mV低くなっています。となると定電圧源の電圧は(電圧の違いを考えると)15度で3mV高くなっているようです。VBEは電圧源の1/4くらいの電圧なのでVBEの測定結果には1mV弱の影響が出ていると思います。
より精度の高い測定を行おうとするとこの影響ももっと正確に評価すべきでしょう。
ただ今回のテーマを離れて考えるとこの定電圧源TA48M033Fは温度係数が小さくてその面では安心して使えるものではないかと思います。
データシートを見ると25度以下の温度係数が大きいように見えますが、グラフをよく見たら接合部温度に対するものでした。グラフの使用条件(0.5Wの消費電力)から考えると(熱抵抗が125度/Wなので)気温が零下15度以下では温度係数が大きくなるということを言っているようです。またこのことからは気温が低いときは多少消費電力を大きくしておいた方が温度による電圧変化が小さくなりそうです。
引き続き測定を続けます。
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関連
「pn接合(VBE)の理想係数と飽和電流の簡単な求め方」
「pn接合の飽和電流と理想係数を測定する - ダイオード・1SS355」
「pn接合順方向電圧(VBE)の温度係数を測ってみた(高精度版)」
「pn接合の飽和電流と理想係数の温度特性(を調べる準備)」
「pn接合順方向電圧(VBE)の理想係数や温度特性の測定装置」
「pn接合の順方向電圧(VBE)と電流(IB)の関係」
「pn接合の順方向電圧(VBE)と温度の関係 -2 測定方法」
「pn接合の理想係数を測る」
「測定対象別記事一覧(測定、電子工作、天文計算)」
温度、気圧をはじめいろんな物理量の測定方法について
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