« 海面更正気圧の計算結果を気象庁とくらべてみた - I2C大気圧センサーLPS25H+LPS331AP | トップページ | PIC+SPI+I2C 自記温湿度計+気圧計+8ch電圧計+周波数カウンタ(技術要素一覧表) »

2015年2月26日 (木)

自動平衡ブリッジの原理と回路の作り方

「自動平衡ブリッジ」という言葉は知っていたのですが、実際どういうものかは知りませんでした。

というかこんな風に“妄想”していました (^^;;

(ホイートストンブリッジとかマクスウェルブリッジなどの)ブリッジに検流計のかわりに直流増幅器を接続する。
直流増幅器の出力でサーボモータを駆動する。
サーボモータでブリッジの一辺を構成する可変抵抗器(あるいはバリコン)を動かし平衡点を自動的に探す。

-----

自動平衡ブリッジを使った例
  「アルミ電解とタンタルコンデンサのESRを測ってみた
     自動平衡ブリッジの位置付けはこの記事の最後にあるブロックダイアグラムを参照。
  「インダクタンス測定法 - LC並列共振周波数測定装置
  「金属皮膜抵抗と炭素皮膜抵抗の温度係数を測ってみた - まとめ

=======

実際の自動平衡ブリッジはどんなもののかというとじつはとても簡単です。
Rxが測定対象の抵抗、R1は抵抗値が既知の抵抗です。
Bridge00

自動平衡ブリッジというのはただのオペアンプを使った反転増幅器でしかなかったです。

復習しておくと、オペアンプのVin+はGNDに落とされているので(オペアンプの増幅率は100dBとかとんでもなく大きいことを前提に考えると)Vin-もGNDに落とされていると考えることができます。
したがってRxを通してVin-の方向に流れ込む電流は Vin/Rxということになります。
ただVin-は(電位はGNDと実質的に同じになっているものの)実際にはGNDには落ちていないわけで(オペアンプの入力抵抗がとても大きいことを前提に)この電流はそのままR1の方に流れていきます。こちらの方の電流の大きさは -Vout/R1になるはずです。
つまり Vin/Rx = - Vout/R1 という関係が成り立ちます。

結論として

    Rx = - R1 * Vin / Vout

で測定対象の抵抗の抵抗値を求めることができます。

------

この方法は電圧源(信号源)を交流にしても使えます。電圧計にベクトル電圧計を使えばLCRメータということになります。
我々(=アマチュア)がやろうとすると信号源はオペアンプの出力になるでしょうから上の回路で測定対象としてコンデンサーを使うのは“禁止行為”でしょう。そういうところをどうするかという工夫は必要になります。

  「LCRメータの仕組みと作り方
  「ベクトル電圧計 - 複素数としての電圧・電流を測る方法 - 原理


-----

単に抵抗値を測るだけだったらDMMで済むわけでなぜ“自動平衡ブリッジ”を持ちだしているかというと抵抗の微小な変化を知りたいためです。
つまり半年以上前に書いて放置してある
  「炭素皮膜抵抗の温度係数を測定する話
のためです。

-------

まずこんな回路を考えてみました。

Bridge01

Vin/Rx  - Vin/R2 = - Vout/R1

Rxの変化に対するVoutの変化量は最初の回路と同じです。ですが、最初の回路が2.0Vから2.01Vに変化するようなとき(R2を適当に値にしておくと)0.0Vから0.01Vにすることができます。DMM等で測るにしてもどちらが測りやすいかは明らかです。

さらにR1を大きくすると0.0Vから0.01Vへの変化を0.0Vから0.1Vの変化にするということもできるようになりますます測りやすくなります(この場合拡大率(?)が大きくなるほどオフセット電圧がバイアス電流が、という話がシビアになっていきます)

-------

二番目の回路ではちょっと困ったことがあります。
Rxの微小な抵抗の変化を測定するのが目的ですが、この回路だとR2の微小な抵抗の変化も同じように出力電圧に影響します。
ですからR2には温度係数の小さい抵抗を使うべきなのですがそうすると高精度の抵抗をいろいろ用意して置く必要があるわけでR2を適当な値に調整するというのは実際には難しいです。
また現在進めている温度測定も電圧測定もすべてPICを使ったシステムではできれば単電源のオペアンプを使えた方が簡単ですし安心(安全?)です。

そこでこんな回路を考えてみました。
Bridge02

この回路だとまず基準になる抵抗R3の抵抗値を調整する必要はありません。
R3の抵抗値を調整する必要ないのはR4でゼロ点調整(あるいはそれに相当する調整)ができるからです。

この回路の場合R4の温度特性は(抵抗の全体で同じように変化するのであれば)結果に影響は出ません。

おおまかな説明になりますが.....

この回路はRx,R1,R3がだいたい同じくらいの抵抗値の場合、Rxの抵抗が1%変化すると出力電圧がVs1の1/2の1%程度変化します。R1を10倍すると変化も10倍になります。

例えばRx、R3が10kΩ、R1が100kΩ、Vs1は2VとするとR4が中点にあるとして

  Rxの抵抗値が10.00kΩから10.01kΩに(0.1%)変化したとき
      出力電圧は1.0Vから1.01Vに(1%)変化します

炭素皮膜抵抗の場合は温度が数度変化するとこの程度の変化が起きるものと思われます。

ひとまずこの回路で実際に作ってみたいと思います。

Rxの変化率とVoutの変化率の関係は厳密に考えるとけっこうめんどうというかややこしいです。オフセット電圧・バイアス電流やその温度係数まで考慮するとさらにややこしいです。
でも上のような条件での測定であれば(そして抵抗の温度係数を求めるというような1,2桁の精度でいいという目的であれば)上のように考えてもそんなにヘンな値が求まることはないです。

(続く)

--------

  「記事一覧(天文、電子工作、測定)

  「インダクタンス測定法 - LC並列共振周波数測定装置
  「金属皮膜抵抗と炭素皮膜抵抗の温度係数を測ってみた - まとめ

  趣味の実験
  趣味の電子工作
    PIC

« 海面更正気圧の計算結果を気象庁とくらべてみた - I2C大気圧センサーLPS25H+LPS331AP | トップページ | PIC+SPI+I2C 自記温湿度計+気圧計+8ch電圧計+周波数カウンタ(技術要素一覧表) »

趣味の実験」カテゴリの記事

コメント

自動平衡ブリッジというタイトルに期待が高まりました^^。
私も機械的な仕掛けで精密に測定を行うものだとばかり・・・。
前半は反転増幅の話で何度も復習してますのでわかりましたが、後半はやっぱりピンと来ません^^;
LTspiceで書いてやってしまおうかなぁ~

やっぱり、そうですか....
“測定”ボタンを押すとウィーンとモーターが回り出すような (^^;;

計算しだすとけっこうめんどうですね。結果から温度係数を求めたり誤差の評価で各回路定数で出力電圧を微分したものが必要なんですがLTspiceでできるなら使うかも (^^;;

R1をRx,R2の20倍にしてやってみたら指をRxに軽くふれるだけで10mVくらい出力が変化しました。

最近電子回路を触っていて、オペアンプのせいか高周波のせいかわかりませんが、確実に人体を検知してると思われることが多くて面白いです。
人感センサとか脈拍とったりいろんな応用ができそうです^^。

高周波になるとほんのちょっとした浮遊容量などで動作が大きく変わりますからね。
LTspiceの通り動かなくなったらきっとそのせいです (^^;;
そう言えばミリバルで抵抗(DMM)と並列にコンデンサーを入れていたのはまずかったかもしれません。確かめようと思っているのですが他のことに時間をとられていて....

ダイオードブリッジ整流の波を均すのにコンデンサを入れてるだけかと思ってましたが、まずいのですか?
製作したミリバルモジュールから取り除くのはやればできます(が、できれば避けたいです^^;)。

帰還ループの中にコンデンサーが入っているため高い周波数での増幅率が下がりそれが原因で発振っぽくなっているのではないかと心配になっています。
私の場合もそうなんですが高い周波数での出力電圧が高くなっているのはこれが原因ではないかと不安です (^^;;
できるだけはやいうちに確かめてみて結果をお知らせします。

この記事へのコメントは終了しました。

トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 自動平衡ブリッジの原理と回路の作り方:

« 海面更正気圧の計算結果を気象庁とくらべてみた - I2C大気圧センサーLPS25H+LPS331AP | トップページ | PIC+SPI+I2C 自記温湿度計+気圧計+8ch電圧計+周波数カウンタ(技術要素一覧表) »

フォト

サイト内検索

  • 記事を探されるんでしたらこれがいちばん早くて確実です。私も使ってます (^^;; 検索窓が表示されるのにちょっと時間がかかるのはどうにかしてほしいです。

新着記事

リンク元別アクセス数

  • (アクセス元≒リンク元、原則PCのみ・ドメイン別、サイト内等除く)

人気記事ランキング

  • (原則PCのみ、直近2週間)
無料ブログはココログ