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2015年2月 5日 (木)

コンデンサーの容量とESR・誘電正接(tan δ)を測ってみた

インダクタ(コイル)の複素インピーダンスを測ってみた」の続きです。

今度はコンデンサーを対象に複素インピーダンスを測ります。コンデンサーの容量ももちろんわかりますが、誘電正接やESRも求めることができます。

原理的にはLCRメーターと同じです。
  「LCRメータの仕組みと作り方
  「自動平衡ブリッジの原理と回路の作り方

ESRについては
  「誤解している人が多そうなコンデンサの“ESR”の意味
に簡単な説明を書きました。

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測定に使った回路です。
Impedance

右側の測定部分は「回路と動作確認 - 四象限アナログ乗算器(マルチプライヤー)EL4083の使い方 - 2」で作ったものです。測定部分の出力電圧は

  Vout = Vx * Vy * 0.15  (Vx, VyはRMS、VoutはDC)

となるように回路定数が設定されています。

左の端子からは「PIC16F1705の8ビットDACを使って(実用的)正弦波発振器を作る - 1」で作った正弦波とそれと90度位相が違う正弦波(余弦波?)が入力されます。このとき直流成分は除いておくことが必要です。一方出力電圧は交流分を除いて測定します。

まずS1、S2のスイッチをともに上に倒すと信号源電圧を測定することができます。
次にS1を下に倒します。S2を上に倒したまま測定すると信号源と同相成分の電圧が測れます。最後にS2を下に倒し信号源と90度位相が異なった成分の電圧を測ります。


まずX,Yの両方に同一の信号源の正弦波を接続し電圧を測ると0.3443[V]でした。

    √(0.3425 / 0.15)  = 1.511

信号源電圧は 1.511[V] ということになります。

実際にはこの前にX and/or YをGNDに落として指示が0[V]になるかとかX.Yに位相が90度異なる正弦波(つまり正弦波と余弦波)を入力して指示が0[V]になるかといったことをチェックし(回路図では省略しましたが)オフセット調整をするのですが、煩雑になるのでその話は省略します。

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XにR1の端子電圧、Yに正弦波を入力して電圧を調べると0.1800[V]でした。またYを余弦波にすると0.1668[V]でした。

    0.1800 / 1.511 / 0.15  = 0.794、 0.1668 / 1.511 / 0.15  = 0.736

から抵抗R1の端子電圧が 0.794+0.736j[V]であることがわかります。これをR1の抵抗値0.989[kΩ]で割るとR1を流れる電流、つまりコンデンサーを流れる電流がわかります。
これは 0.803+0.744j[mA]となります。

信号源電圧 1.511+0.000j[V]から抵抗R1の端子電圧0.794+0.736j[V]を引いたものがコンデンサの端子電圧です。これは0.717+0.736j[V]です。

コンデンサーの端子電圧 0.717+0.736j[V] を流れる電流 0.803+0.744j[mA] で割ったものがコンデンサーのインピーダンスです。これは 23-938j[Ω] となりました。

今度はコンデンサーですから虚数部分は容量性リアクタンスであることを示すマイナスになります。

信号源の周波数が1249[Hz]であることからキャパシタンスを求めます。

  1 / ( 938 * 2 * π * 1249 ) = 0.136E-6

結局このコンデンサーは 0.136[uF]のキャパシタンスと23[Ω]の等価直列抵抗=ESRを持つことがわかります。

この“等価直列抵抗”というのはコンデンサやインダクタでのエネルギー損失を抵抗に換算したものです。ですからコンデンサのリード線やインダクタの巻線の抵抗だけを意味するものではありません。コンデンサーの誘電損失やインダクタの渦電流によって起きるエネルギー損失も等価直列抵抗に加わります。

また誘電正接は純容量性リアクタンスとの位相のずれ(角度)のタンジェントですので複素インピーダンスの実数部分を虚数部分で割ったものになります。

  23 / 938 = 0.025

誘電正接(tan δ)は 0.025 ということになります。

このコンデンサーは0.1[uF]の積層セラミックコンデンサです。容量がずいぶん違っていると思われるかもしれませんがそんなにヘンな値ではないです。同種のコンデンサーと思われる製品のデータシートを見たら容量の許容範囲は -20%/+80%となっていました。(パスコンに使うような)コンデンサーはふつう容量が少なければクレームが来るでしょうが多ければラッキーと思われるようなものですから。
実際DMMの容量計で測定しても 1.127[uF] 0.127[uF] でした。だいたいあっていると思います。

誘電正接の0.025はなんとも言えません。これはデータシートでは0.05以下と規定されていました。だいたいこんなものじゃないんでしょうか(メーカーの測定周波数は1±0.1kHzとなっていましたので今回の測定と同じ周波数帯です)

-------

  「コンデンサ - ESR(誘電正接、tanδ、DF)とキャパシタンス(静電容量)の測定 - まとめ

  「インダクタ(コイル)の複素インピーダンスを測ってみた
  「インダクタンスの測り方・まとめ
  「複素数としての電圧・電流を測る方法 - 原理

  「四象限アナログ乗算器(マルチプライヤー)EL4083の使い方 - 1
  「回路と動作確認 - 四象限アナログ乗算器(マルチプライヤー)EL4083の使い方 - 2
  「ダブラー(周波数逓倍器) - 四象限アナログ乗算器EL4083の使い方 - 3
  「ちょっと凝った交流電圧計(ミリバル)の作り方 - 1

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コメント

よく、このコンデンサは低ESRです!って宣伝してるのはこれだったのですね。
容量とは別個にESRを下げるというのは素材研究の成果なんでしょうか。
ところで、0.1uFのコンデンサを実測したら1.127uFだったとありますが、これくらいは大体合ってるでよいのでしょうか(勘違いだったらすみません)。

最初ESRというのはタイトルに入れていなかったのですが食いつく人がいるだろうなあと思って追加しました。SEOです (^^;;
オーディオなんかのような低い周波数だと誘電体損失の影響が大きいみたいなのでそのあたりを研究しているんじゃないでしょうか。ほとんど付刃の知識ですが (^^;;
製品にもよるのですが0.1uFの安物(?)のコンデンサは0.08uF~0.18uFの範囲にあればOKみたいですよ。
DMMがどういう方法でキャパシタンスを測っているかわからないのでなんとも言えませんが、ひょっとしたら私の測定結果の方が正しいなんてこともあるかもしれません (^^)

ん~、ということは 1.127 は 0.127 の間違いですか?

あれ、あれあれ (^^;;;;;;;

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