VFコンバータ(VCO)の製作(1) - 自動周波数特性測定器に向けて
例えばアンプの周波数特性を知りたいとかコンデンサーの容量とESRが周波数によってどう変化するかを調べるようなときふつうはオシレーターの周波数を変えて電圧を読み取りというような操作を繰り返していきます。
これを自動化しようということを考えています。つまりこんなことです。
(「インダクタンス測定法 - LC並列共振周波数測定装置」より)
そうするとまず第一に
1. 周波数が(外部の電圧などで)広い範囲で可変でき
2. (一般的には)純正弦波出力の
3. 振幅が一定している
発振器が必要になります(「自動周波数特性測定装置」のその他の技術要素については記事の最後にあります)
このうち2.と3.は「PIC16F1705の8ビットDACを使って(実用的)正弦波発振器を作る - 1」で実現できました。
これはPICで作っているのでプログラムを書けば1.はすぐに実現できそうなものですが、じつはそれができません。上の記事を読んでいただければすぐにわかりますが出力周波数が離散的なのです。またこれと同じ理由であんまり高い周波数を作ることができません。
ところがつい最近画期的な解決法を編み出された方がいます。
「ほよほよのブログ - (追記あり)周波数可変な正弦波発生回路」
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詳しいことはほよほよ さんのブログを読んでいただくとしてこんなことができます。
外部から周波数fの矩形波を入力すると(例えば)f/256の周波数で振幅一定の正弦波が出力される。
となるとあとは外部から注入する矩形波の周波数を電圧で変化させるようにすればできあがりです。じっさいそういうものはVCOとVFコンバータという名前で秋月に行けばあるわけですが、ここでは自分で作ることにしました。
LT1799を使った例も書きました。
「PIC16F1705のDAコンバータを使った正弦波発振器(発生器) - 改良版」
ここもほよほよ さんと同じ555を使う方法にします。555で作った発振器(無安定マルチ)は抵抗値を変化させると発振周波数が変わります。だから抵抗値を電圧で変えられるようにすればいいのですがここで注意が必要です。
周波数の変化のさせ方なのですがいろんな周波数特性のグラフを見るとわかるように周波数の対数が直線的に変化するようにしたほうが何かと便利です。
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例えば555で抵抗値を直線的に変化させるとこんなことになります。
つまり電圧の変化に比例するように抵抗値を変えては高い周波数での周波数変化が急峻になるということです。
B型の可変抵抗を使うと上と同じような動きになるでしょう。これはほよほよさんも悩みのタネみたいです。
ですが、A型の可変抵抗(を逆向きに)使うと状況は少し改善するはずです。
(これはA型の抵抗値変化をこうなるはずだと想像して作ったものなので実際にこうなるかどうかは責任が持てないです)
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電圧で抵抗を変化させる方法をいろいろ考えたのですが、上のA型可変抵抗のような動きがなかなか思いつきません。でもそのうち手元に使えそうなものがあるのを思い出しました。
「ウィーンブリッジ発振器の振幅制限には使えそうにないCdS」の記事に書いたCdSを使ったフォトカプラーです。
さっそく入力(これは要するにLED)側にかけた電圧と出力側の抵抗値の関係を調べてみました。
あまりにも抵抗値の変化が激しいので抵抗値の方は対数目盛りにしてあります。
周波数は抵抗値の逆数です。抵抗値が対数グラフで直線っぽい動きをしています。周波数は抵抗値の逆数ですから抵抗値の対数が直線に近いということは周波数の変化も直線的になるはずです。
入力電圧と周波数の関係はこうなると思われます。
周波数が高い方での電圧に対する感度が低下するようですが「自動周波数特性測定器」の信号源の周波数制御には問題なく使えそうです。
ただこのCdSを使ったフォトカプラーには注意しなければならないところがあります。レスポンスが悪いことです。だからFM変調とかPLL用VCOとかにはまず使えないと思います。でも今回はゆっくり周波数を変化させていくことを考えていますから特に問題はなさそうです。
CdS受光素子の抵抗の高周波特性はどうなんだ、と思われる方もいらっしゃると思います。それは私もよくわかりません。調べようと思えばある程度は調べられるのでそのうちに記事にするかもしれません。
現状では555で4MHzの発振のRとして使うことが可能だったことは確かめてあります。ただこれも4MHzでも直流・低周波と同じ抵抗値を示すということを確かめたわけではありません。
ではさっそく製作に入りたいと思います。
(「VFコンバータ(VCO)の製作(2) - 自動周波数特性測定器に向けて」へ続く)
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関連
「記事一覧(天文、電子工作、測定)」
「自動周波数特性測定器」の技術要素
制御用電圧の発生
「続・コレクタ電圧とコレクタ電流の関係を調べてみた - 積分回路とMCP3208を使う」
「VFコンバータ(VCO)の製作(2) - 自動周波数特性測定器に向けて」
信号源
「VFコンバータ(VCO)の製作(1) - 自動周波数特性測定器に向けて」 (この記事)
「PIC16F1705のDAコンバータを使った正弦波発振器(発生器) - 改良版」
電圧等測定
「交流電圧計(ミリバル)の簡単な作り方」
「複素数としての電圧・電流を測る方法 - 原理」
「LCRメータの仕組みと作り方」
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「GPS/RTC(DS3234)の1PPS出力を利用した超高精度周波数カウンター」
記録
「PIC/I2C大気圧センサーLPS331APの測定値をSDカード(SPI)に記録する - はじめに」
「自記温度計、自記気圧計 - (複数のSPIデバイスがいっしょに使えなかった話)」
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コメント
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おお!すごいですね!
今日は対数的に変化する可変抵抗を探していたのですが秋月では見つからず(探し方が悪いだけ?)、多回転抵抗を2種類投入するしかないかな~ってあきらめていたところでした^^;
CdSって光センサですよね。昔2つくらい買った記憶があります。これから探さないと・・・
毎回ためになりますm(_ _)m
投稿: ほよほよ | 2015年2月16日 (月) 20時32分
ここでいうCdSはアナログフォトカプラだったのですね^^;
今日秋月でポチる前にこの記事が読みたかったです;;
投稿: ほよほよ | 2015年2月16日 (月) 21時26分
可変抵抗でAカーブのものは秋月でいうと抵抗値の後にAがついているものです。
例えば
http://akizukidenshi.com/catalog/g/gP-00243/
とか。
CdSフォトカプラーはウィーンブリッジのときの残骸です (^^;;
CdSの特性というよりLEDの特性を利用していると言った方がいいかもしれません。
構造はただのLED+CdSなのでパイプにでも入れて遮光してやってみたらどうでしょう。
投稿: セッピーナ | 2015年2月16日 (月) 22時00分