ログアンプ - ベース電流(IB)とベース電圧(VBE)の関係
先日はベース電流とベースエミッタ間電圧の関係を調べようとして思わしい結果が得られませんでしたので今回はちょっと工夫しました。
まあまあ意図した結果が得られたと思います。
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今回使ったのは次のような回路です。
ベース電流が小さくなるとベース電流自体を測るのもたいへんですし、ベース電圧を測るのも難しくなってきます。ベースエミッタ間を抵抗と考えるとベース電流が0.1μAの場合5MΩということになります。内部抵抗が10MΩの電圧計で測っても回路に大きな影響を与えてしまいます。
オペアンプの反転増幅回路を使うとこれが簡単に解決します(要するに「自動平衡ブリッジの原理と回路の作り方」です)
ベース電流はA点の電圧をR1の抵抗値で割るだけで求まります。ここは一言で言うと“内部抵抗ゼロの電流計”になっています。ベースエミッタ間電圧はB点の電圧を測るだけです。こちらは“内部抵抗無限大の電圧計”になっています。
使い方は簡単でスイッチS1を接続した状態で可変抵抗R8を調整し電圧の(つまりベース電流の)始点を決めます。このあとR3で電圧の増加する(あるいは減少する)ペースを決めてスイッチS1をオープンにするとA点の電圧はじょじょに増加(あるいは減少)していきます。
あとは「PIC+SPI+I2C 自記温湿度計+気圧計+8ch電圧計+周波数カウンタ」が一定時間ごとに電圧を測定しその結果をSDカードに書き込んでくれます。
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A点の電圧は約3Vとか0Vまで下げながらR1の抵抗値98.3kと2.018Mの二つでやってみました。抵抗値が98.3kΩではベース電流は30μAから0.5μAまで、2.018MΩでは1.5μAから0.1μAまで変化させました。
IB-VBEのグラフです。
なんとなくそれらしいグラフになっていますので実験方法には特に問題なさそうです。
問題となるのは電圧と電流の対数の関係を見たときそれが線形になっているかという点です。前回「ベース電流(IB)とベース電圧(VBE)、コレクタ電流(IC)の関係を調べてみた」ではみじめな結果に終わりました。
片対数グラフにしてみます。
R1が98.3kΩのときと2.018MΩのときで差異がありますがまあまあ満足できる結果が得られたように思います。
この回路の場合ベース電流はA点電圧に比例しています。つまり
A点の電圧(=入力電圧)の対数に比例した出力電圧が得られる
わけでログアンプになっていることになります。
ところでこの差異はどうして生じたのかという点、厳密にはベースエミッタ間電圧はベース電流の対数に完全に比例するわけではない(「pn接合の理想係数を測る」)、というのがあるのですが、それより前にチェックすべきことがありました。
今回の場合実験方法に問題があると思います。実験ではベース電流0.1μAまで測定しています。100nAということになるのですが、これはこの回路で使っているオペアンプのバイアス電流に近いオーダーです。
もっとバイアス電流の小さいオペアンプを持っていたのだからそれを使えばよかったのにというのが反省点です(「オペアンプの特性比較(オフセット電圧、バイアス電流、スルーレート他)」)
まずこの点を改善しないと先に進めないような気がします。
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その後この実験結果をpn接合の順方向電圧を求める理論式(?)に当てはめたところオペアンプのバイアス電流が0.035[μA]と考えると辻褄があうことがわかりました。
緑色の点は飽和電流 7.6E-15[A]、理想係数 1.16、バイアス電流 0.035[μA]、気温 295Kとして計算した電圧です。上と同じように赤、青の実験結果もプロットしてあるのですがぴったり一致しているため青、赤が緑に隠されてまばらにしか見えなくなっています。
オペアンプのバイアス電流がほんとに0.035[μA]なのか調べてみたいものです。
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なお最初の回路で出力側にオペアンプ(反転増幅回路)が入っていますが、これは実験環境からくる制約です。
電圧の測定に使っている8チャンネルADコンバータMCP3802は入力できるのはプラスの電圧に限られます。今回の場合A点の電圧とB点の電圧を同時に測る必要があるわけですがこれは正負が逆になりますからMCP3208では測ることができません。そこで反転増幅回路を入れて極性を逆にした上で測定しています。
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関連記事
「pn接合の順方向電圧(VBE)と電流(IB)の関係」
「pn接合の理想係数を測る」
「続々・コレクタ電圧(ICE)とコレクタ電流(IC)の関係を調べてみた」
「ベース電流(IB)とベース電圧(VBE)、コレクタ電流(IC)の関係を調べてみた」
趣味の測定(?) (ほんとはこれまで書いた記事の一覧です)
(各種の測定に関する記事の一覧が記事の最初にあります)
PIC+SPI+I2C 自記温湿度計+気圧計+8ch電圧計+周波数カウンタ(技術要素一覧)
(今回の実験に使った現在作成中の装置の概要と技術要素ごとの記事へのリンクがあります)
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