インダクタンス測定法 - LC並列共振周波数測定装置
今回はコイルとコンデンサの並列共振周波数からコイルのインダクタンスと等価直列抵抗を求める方法を試してみました。
満足すべき結果が得られたと思います \(^o^)/
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まず「LC並列共振周波数測定装置」から説明します。
回路的にはこんなものです。
まず「制御電圧発生器」である電圧範囲(この例では1.8V~1.6Vくらい)で変化する電圧を作ります(「VFコンバータ(VCO)の製作(3) - 自動周波数特性測定器に向けて」に説明があります。ただこの記事にあるものは微妙すぎて取り扱いがたいへんなので手動で開始、終了するようにしました。
この回路は一定の割合で増加(あるいは減少)する電圧を作ることができます。実際にはコンデンサーには大容量のものが必要で極性が出てくるので増加にするか減少にするかはどちらかに決めておく必要があります。
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VFコンバータは秋月あたりで買ってきた方が早いと思いますが自前で用意しました。これは上にリンクした記事に説明があります。
ここではだいたい128kHzから256kHzくらいを発振させており前段で作った電圧で周波数を制御することができます。
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「ほよほよ式正弦波発生器」は「ほよほよのブログ - 周波数可変な正弦波発生回路 」のアイデアを使わせていただきました。これは入力として与えられた矩形波の周波数の1/128(あるいは1/256)の周波数の正弦波を出力するというものです。
これで1kHzから2kHzの正弦波を得ることができます。
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「自動平衡ブリッジ」については「自動平衡ブリッジの原理と回路の作り方」に説明しましたが、どういうものなのか一言で書くと「内部抵抗ゼロの電流計、内部抵抗無限大の電圧計」を実現するものでしょうか。
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「交流電圧計(ミリバル)」は名前のとおりです。以前「交流電圧計(ミリバル)の簡単な作り方」なんて記事を書きましたが、今回は測定電圧をPICを使ってSDカードに記録しておりシングルエンド出力が得られる「一歩進んだ交流電圧計(ミリバル)の製作 - 1」で作ったものを使用しています。
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この回路では交流電圧計では次の式で得られる電圧が測定・記録されます。
Vout = Vin / ( XC // ( XL + Rx) + R ) * R1
XC、XLはそれぞれコンデンサとコイルのリアクタンスです。“//”は並列リアクタンスであり
XC // ( XL + Rx ) = XC * (XL + Rx) / ( XC + XL + Rx )
です。並列共振回路では共振周波数でインピーダンス XC // ( XL + Rx ) は最大になりますのでこの回路の出力電圧はそこで最低になります。
つまり出力電圧が最低になったときの周波数とコンデンサのキャパシタンスからコイルのインダクタンスを求めることができます。
実際に測定した結果は次のようになりました。
今回はコンデンサーの容量はカタログ値100nF±5%(DMMによる実測値は 98.4±1.1nF)でありコイルのインダクタンスのカタログ値は100mHなのでディップが1600Hzあたりにあることはわかっているのでその近辺に絞って測定しています。
余談ですが以前「インダクタンスの測定にコンデンサは使うべきでない!?」という記事を書きました。その反省(?)から今回はメタライズドポリエステルフィルムコンデンサを使っています。0.1μFのコンデンサ一個で60円はけっこうきついです (^^;;
さらにこのメタライズドポリエステル(PET)フイルムコンデンサは調べたら温度係数がけっこう大きかったです(「メタライズドポリエステルフィルムコンデンサの温度係数を測ってみた」)
ディップは1610Hz~1620Hzあたりにありますのでその周波数からコイルのインダクタンスを求めることができるわけですが、このグラフからはもっと詳しいことがわかります。
上の計算式の結果がこのグラフになるわけですから計算式の中の未知数LxとRxを適当に仮定してこのグラフとできるだけ同じになるようなものを探せばインダクタンスLxとともに等価直列抵抗Rxも求めることができるはずです。
実際にやってみたらインダクタンス98.1mH、等価直列抵抗 207Ω のときそのような結果が得られました。
メーカーのサイトでこのインダクタLHL10NB104Jのデータを調べて見たところ
L=100[mH]±5% 直流抵抗 240[Ω] (Lの測定周波数は1kHz)
となっています。直流抵抗の値の実測値がこれより小さいわけですが、LCRメータと同じ手法でインダクタンスを測定した「インダクタ(コイル)の複素インピーダンスを測ってみた」でもインダクタンス 98[mH] のと等価直列抵抗 206[Ω] のという結果が出ていました。
異なる方法でインダクタンスと等価直列抵抗を測ってまったく同じと言ってもいい結果が得られているわけで、実測値の方が正しいと考えて間違いないと思います。
と書いても疑問を持つ方もいらっしゃると思うので誤差については次に記事で考えてみます。
==> 「LC並列共振周波数からインダクタンスを求めるときの誤差」
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関連記事
「インダクタンスの測り方・まとめ」
趣味の測定(?) (ほんとはこれまで書いた記事の一覧です)
(各種の測定に関する記事の一覧が記事の最初にあります)
PIC+SPI+I2C 自記温湿度計+気圧計+8ch電圧計+周波数カウンタ(技術要素一覧)
(現在作成中の装置の概要と技術要素ごとの記事へのリンクがあります)
趣味の電子工作
PIC
趣味の気象観測
趣味の実験
時刻と時間
GPS受信モジュール
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コメント
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この結果も素晴らしいですね^^。
実は私もLC並列共振回路でいくつかコイルのインダクタンスを測りましたが周波数が直列より上がってしまうので大きいLのものしか測れませんでした。
グラフにして高精度でフィッティングできる数値を求めるあたりはさすがです。たくさんの測定ポイントが得られるとこういったメリットがあるわけですか~すごいです^^。
投稿: ほよほよ | 2015年3月 7日 (土) 15時33分
単に無精するために始めた“自動測定”ですがおっしゃるとおりたくさんの測定ポイントが得られるというのはメリットですね。
それらしい結果が得られていますし、測定と結果の検証を同時にやっているようなことになるので測定結果に自信が持てるのがいいです (^^;;
投稿: セッピーナ | 2015年3月 7日 (土) 16時04分