フイルムコンデンサ・静電容量の温度特性 - PPS(ポリフェニレンスルフィド)とPET(ポリエステル)
先日メタライズドPET(ポリエチレン・テレフタレート)のフイルムコンデンサの温度係数が思わしくない、PPS(ポリフェニレンサルファイド)だったらどうだろう、と書いたのですが、入手できたので温度特性を調べてみました。
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たいていの方は結果にしか興味がないと思うので結果から先に書きます。
どうやって測定しているかはあとで....
じつは先日のPETの測定のときどのコンデンサを使ったのか忘れてしまったので新たに調べてみました。先日ほどではないですが400ppm/Kを超えています。
念のために書いておきますがこのコンデンサはとんでもないコンデンサとか言いたいわけではないです。このコンデンサの容量を自動平衡ブリッジを使って測ってみたら98.8nFと確度も高く、ESRは3Ω(誘電正接 DF(tan δ) = 0.002)と小さかったです。 <=== (追記) ESRが小さいのは間違いないのですが、小さすぎて正確に測れません。測定方法の不確かさを検討したところこのESR、tan δの値もかなり誤差がありそうです。
一方PPSは-100ppm/Kより(絶対値が)ちょっと大きいくらいで確かに温度係数が小さいです。数時間の実験をやるとき静電容量の変化が変化が500ppm以下であればたいていの場合実害はないので問題なさそうです(室温の変化は数度もないのがふつうです)
でも最近(「金属皮膜抵抗と炭素皮膜抵抗の温度係数を測ってみた - まとめ」に書きましたが)温度係数の実測値が1ppm/K以下なんて金属皮膜抵抗を見てしまったのでちょっと迫力に欠けます。もう少しピシっと決めてほしかったです (^^;;
ところで上のグラフを見ていて思うのですが、0.033μFのPETのコンデンサと0.1μFのPPSのコンデンサを並列にすると0.133μFの温度係数が小さいコンデンサができあがるような気がするのですがどんなものなんでしょう。
なおこのコンデンサーの実測結果は静電容量 98.7nF、ESR 4Ω(誘電正接 DF(tan δ)=0.003という結果が出ました。この測定結果は上に書いたものより誤差は小さいと思います(静電容量 ±0.5nF、ESR ±1Ω程度)
なおスペック値は100nF±2nF、DF(tan δ) < 0.006 となっていました。
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温度係数を測定したときのブロックダイアグラムです。
さすがに回路図は書ききれません。詳細については最後にリンクを作っておきました。
LMC555でCR発振器を作りその発振周波数を測ることによってコンデンサの容量の変化を調べています。コンデンサだけを(白金薄膜抵抗といっしょに)断熱容器に収めヒータで加熱しています。
発振回路そのものは室温に保たれていますし、抵抗は緑帯の高級品(?、実測10ppm/K)を使っているので室温が多少変化してもそんなに影響はないはずです。
発振周波数は1kHz前後と周波数を測るにしても周期を測るにしても中途半端なのでバイナリカウンタで分周した上でその周期を測ることにしました。
周期を測るのには20MHzの水晶発振器であるエプソントヨコムSG-8002DCを使っています。周波数の確度こそそれほどでもありません__といっても今回使ったものは室温での実測で20MHzに30Hz足りないだけでした__が温度係数は温度補償型水晶発振器に迫るものがあり安心して使えます。
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関連
コンデンサの特性
「フイルムコンデンサ・静電容量の温度特性 - PPS(ポリフェニレンスルフィド)とPET(ポリエステル)」 (この記事)
「メタライズドポリエステルフィルムコンデンサの温度係数を測ってみた」
「コンデンサーの容量とESR・誘電正接(tan δ)を測ってみた」
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「記事一覧(測定、電子工作、天文計算)」
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「確度0.0005ppmの周波数測定 - GPSの1PPS出力を使った高精度周波数カウンタ」
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