LC並列共振周波数からインダクタンスを求めるときの誤差
「インダクタンス測定法 - LC並列共振周波数測定装置」で対象としたコイルのインダクタンスは98mH、等価直列抵抗は207Ω、と書きました。
これがどのくらい信用できるのかということについて考えます。
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このグラフが、インダクタンスは98mH、等価直列抵抗は207Ω、と判断した“根拠”です。
インダクタンスは98mH、等価直列抵抗は207Ω、と考えると計算値と実測値がぴったり合うから、という理由ですが。ではそう考えなければグラフはあわなくなるのでしょうか。
まずインダクタンスが99mHだと考えます。共振周波数は下がりますのでグラフは横にずれるはずです。
これはひと目でわかるほどずれています。これだったら0.1mH違ってもそれとわかるのではないでしょうか。
もっとも共振回路を構成しているコンデンサはデータシート上は5%の誤差があり、DMMの測定結果を信じるとしても±1.1nFの誤差があります。測定方法に0.1mH=0.1%の分解能があるとしても精度はけっきょくコンデンサの容量値の精度に依存してしまいます。今回対象にしたコイルのインダクタンスは98mH±1mHとかんがえるのが妥当なところでしょう。
なお周波数の測定精度ももちろん関係します。ただこれが問題になることはないと思います。今回は周波数測定のタイムゲートにはGPS受信モジュールの1PPS信号で校正した“超高精度”RTC・DS3234Sの1PPS信号を使っており周波数の測定誤差は 0.0001%以下を確保しています(「ほんとうに超高精度かもしれないRTC・DS3234Sを使った周波数カウンター」)
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次に等価直列抵抗の方です。これは207Ωでなく200Ωだと考えて同じようにグラフを作ってみます。
実測値と計算値は曲線の曲率が違うのが見てとれると思います。等価直列抵抗が小さくなれば共振時のディップはそれだけ急峻になるからです。
図は省略しますがRx=210Ωの場合もわずかに曲率が違うのがなんとなくわかりました。こちらの測定値の分解能は2Ωあるいは3Ω(つまり1%前後)というところでしょうか。
じゃあ誤差はどうなるのか?
これもコンデンサの精度に依存します。
例えばコンデンサがじつは98.4nFではなく1%大きくて99.4nFだとします。そうするとインダクタンスは1%小さく測定されます。この結果それぞれのリアクタンスは1%ずつ小さいことになります。この結果等価直列抵抗は(途中は省略しますが)1%小さく測定されます。
つまり今回の場合207±2Ωということになります。上に書いたように測定自体にも2Ω程度の誤差が予想されますのでトータルではsqrt(2^2+2^2)で±3Ωということになります。今回の等価直列抵抗の測定結果は207±3Ωと考えればいいのではないでしょうか。
前記事の回路図からRの影響が心配になる方もいらっしゃると思いますがこれはもちろん出力電圧には影響しますが出力電圧の曲線の形(曲率)に対する影響はそれほど大きくありません。
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