炭素皮膜抵抗の温度係数を測ってみた(暫定版)
以前から測ると言い続けながら放置していたカーボン皮膜抵抗の温度係数を測ってみました。
前記事「メタライズドポリエステルフィルムコンデンサの温度係数」ではフィルム(PET)コンデンサの温度係数は炭素皮膜抵抗みたいに大きいと書いたのですが炭素皮膜抵抗の温度係数の実際はどうでしょう?
前記事に重ねて書きますが、製品規格でいう温度係数というのはある一定の温度範囲(常温から使用限度上限くらいの温度)での容量の変化を温度の差で割った平均的なものなのですが、この記事では特定温度における温度に対する容量の変化率を温度係数と言っています。
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抵抗器の温度係数についてはまとめ記事を作りました。
「金属皮膜抵抗と炭素皮膜抵抗の温度係数を測ってみた - まとめ」
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タイトルに“暫定版”とあるのはデータの処理にちょっと自信が持てないところがあるからです。今後引き続いて調べていくと数値的には一、二割の増減があるかもしれません。
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「炭素皮膜抵抗の温度係数を測定する話」では(ホイートストン)ブリッジを使えば微小な抵抗変化を測定することができると書いたのですが、最近は「インダクタンス測定法 - LC並列共振周波数測定装置」にできるだけ測定を自動化する方向で進めています。ブリッジを使う方法はちょっと使いづらいところがあります。
そこで「自動平衡ブリッジの原理と回路の作り方」に書いた最後の方法を使うことにしました。
これだったら微小な抵抗の変化をADコンバータで測定でき、かつ測定した結果をSDカードに記録するということができるようになります。ヒーターにスイッチを入れて放っておけます。(「PIC+SPI+I2C 自記温湿度計+気圧計+8ch電圧計+周波数カウンタ(技術要素一覧)」)
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今回実験するのは秋月電子通商で買った1/4Wの100個入り10kΩ抵抗です。おそらくタクマン電子のRD25SJ10kΩではないかと思います。
上の回路図でR3にはマルツで買った温度係数25ppmの金属皮膜抵抗、R1にはふつうの(これについては別の記事で書きます)100kΩのふつうの金属皮膜抵抗を使っています。
また電源は上の回路図では単電源になっていますが今回は±5Vの電源を使っています。
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(断熱)容器に入れた抵抗(と白金薄膜抵抗)をヒータで加熱し適度な温度になったところでヒータの電源を切り自然に冷えるのを待つということをやってみました。
今回も室温は安定しておりこれは安心材料です。
上のグラフを温度対自動平衡ブリッジの出力電圧のグラフにしてみました。
温度の上昇時も下降時も温度に対する出力電圧はだいたい一致しています。今回問題としてりう温度係数=直線の傾きに関して言えば同じと言ってもいい値になっています。
<== つい勢いで書いてしまいましたが、このグラフは直線の傾きが同じになるように補正を加えた上でのものです。温度が上昇するときも下降するときも(温度のムラが原因で同じ直線にはならないかもしれないが)傾きは同じになるはずという理屈です。よく考えるとこれはちょっとヘンなような気がします。このあたりの事情つまり補正の仕方や温度係数の求め方は詳しい内容を新たに記事にするつもりです。
これから温度係数を計算するやり方は「自動平衡ブリッジの原理と回路の作り方」にある式をもとにしています(ここがちょっとあやしいです)
結果だけ書くと -350ppm/℃ です。炭素皮膜抵抗の温度係数としてはまあまあ妥当なところではないでしょうか。
念のためもう一度同じ抵抗でやってみました。
これからは 340ppm/℃ が得られました。
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記事の冒頭に書いたようにこれはある特定の温度における温度に対する抵抗値の変化率です。微分温度係数とでもいうべきものでしょうか。
データシートやカタログにある温度係数はこれとは定義が違います。データシート上の温度係数は室温での温度係数が0でもトータルではプラスあるいはマイナスになることがありますし、逆に室温で1000ppm/℃でもトータルでは温度係数ゼロになることも定義上はありえます。
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関連記事
「金属皮膜抵抗(茶帯)の(室温での)温度係数を測ってみた(暫定版)」
「金属皮膜抵抗(緑帯)の(室温での)温度係数を測ってみた(暫定版)」
「自動平衡ブリッジの原理と回路の作り方」
(今回測定に使った方法です)
記事一覧(天文、電子工作、測定)
(各種の測定に関する記事の一覧が記事の最初にあります)
「炭素皮膜抵抗の温度係数を測定する話」
(ブリッジを使って温度係数を測定する方法について書いています)
PIC+SPI+I2C 自記温湿度計+気圧計+8ch電圧計+周波数カウンタ(技術要素一覧)
(今回の測定に使った装置の概要と技術要素ごとの記事へのリンクがあります)
「精密抵抗のお値段 - 抵抗器の精度と価格の関係」
(お金さえだせば温度係数がどうのこうのということに悩まされずに済みます)
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