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2015年3月20日 (金)

コイル(インダクタ)の自己共振周波数を測ってみた

コイルというのは周波数が上がれば上がるほどインピーダンス(リアクタンス)が大きくなっていくはずですが実際はそうでもありません。高い周波数になるとコイル自身が持つ浮遊容量の影響が出てくるからです。
どの程度の浮遊容量があるのか調べてみました。

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2018年5月10日 追記

mennさんから記事の内容についてご質問をいただいたのですが、なにせ3年前のことなので詳細がすぐに思い出せません。ひとまず記事を書くときに使ったExcelファイル____実験結果とその分析____をダウンロードできるようにしました。


   ダウンロード 03162200_SD.xls (239.5K)


“Sheet2”がこの記事にあるグラフを作るのに使ったものです。160行~240行にグラフがあります。
等価キャパシタンスを求めるのはSolverを使っています。Solverのダイアログを開けばどこがターゲットで何を変化させるかはわかると思います。
もし内容について疑問やご指摘がありましたらコメントいただければ幸いです。

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まずこのような回路を作ります。
_

周波数を可変できる正弦波信号源(「PIC16F1705のDAコンバータを使った正弦波発振器(発生器) - 改良版」)に100kΩの抵抗と100mHのコイルを直列に接続し、コイルの端子電圧を交流電圧計(「一歩進んだ交流電圧計(ミリバル)の製作 - 1」)で測ります。
R2はコイルの直流抵抗です。L1、R2の値100mH/240Ωはスペック値です。これらは1kHz前後での値は実測しておりそれぞれ98±1[mH]、207±3[Ω]でした(「インダクタンス測定法 - LC並列共振周波数測定装置」)

これまで何度もやってきたインダクタンスの測定回路に似ていますが今回は測定に使う信号源の周波数がこれまでとはぜんぜん違います。これまで1kHzくらいでやっていたのですが今回は100kHz前後にします。

上の回路だったらこのような出力電圧が得られるはずです(信号源電圧は1.27Vです)
_1_2

コイルのリアクタンス(インピーダンス)は周波数が上がるに連れて増大して行きますので端子電圧もだんだん上昇していくはずです。

でも実際に上の回路で電圧を測るとこうなりました(青いグラフの方です)
_2

電圧は60kHzくらいから急に大きくなり80kHzくらいで最大になります。その後は急激に端子電圧が下がって行きます。このグラフの形は並列共振回路のものと同じような形でコイルが浮遊容量と並列共振回路を構成していることがわかります。

例によってExcel(のソルバー)を使ってこのグラフと一致するような回路定数を求めてみました。
_3

とてもよく一致します。ただ今回の測定回路は周波数特性があまりよくなくグラフが一致したから正しい結果が求まったということにはならないのですが、今回はこれが正しいものだとして話を進めてみます (^^;;

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上記の結果が得られた等価回路はこのようなものです。
__4

67pFくらいの浮遊容量があるようです。ただL1は1kHzでの実測値より小さく、R2はかなり大きくなっています。
おそらく透磁率の周波数による変化であったり、渦電流による損失の増加(=エネルギーの損失は抵抗分として測定されます)、表皮効果による実質的な抵抗の増加であるのだと思います。

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上に書いたように測定回路自体にまだ問題が残っておりこの結果を確定値とするわけには行かないのですが、この結果はそれほど的外れではないようです。
このコイルは秋月で買った太陽誘電のLHL10NB104Jであり自己共振周波数はデータシートにあります。それによると0.085MHzつまり85kHzであり、今回の測定結果80kHzもこれとそんなに違っていません(ただコイルの自己共振周波数というのは規格値というより参考値と考えた方がいいかもしれません)

測定回路の周波数特性を改善し再度同じ実験をやってみるつもりです。

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  PIC+SPI+I2C 自記温湿度計+気圧計+8ch電圧計+周波数カウンタ(技術要素一覧)
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コメント

これは!オーバクロック前提の試験ですね。
私は67kHzまででリミットかけてしまったので85kHzのピークは見つけられません(^-^;

はい、そのくらいでやめておいた方が無難なようです。クロック32MHz以上は動いたとしても意図したような動作をするかあやしいです (^^;;

ありがとうございます。
ここに答えがありました(≧∇≦)

はい、たぶんそうだと思います。
じつはAM用のバーアンテナの自己共振周波数を測ろうと思っているところでした (^^)

自分もまったく同じ太陽誘電のLHL10NB104Jの自己共振周波数を測定し回路定数を求めようとしてみたのですがうまくいきませんでした.
そこでセッピーナさんの導出した回路定数を用いてグラフを作成したところまったく異なるグラフができたので並列リアクタンスの計算式が異なるのだと考えました.

信号電圧源をVo,測定電圧をVinとすると
Vin = XC(XL+R2) / { XC(XL+R2) + R1(XC+R2+XL)} *Vo

と考え,この記事内のとおりのR1,R2,L1,C1を代入したのですが違うのでしょうか.
よろしければエクセルファイルをいただけませんか.

mennさん、実験方法や結果の処理方法について今すぐ思い出せないので明日確認の上コメントさせていただきます。
コメントありがとうございました m(._.)m

コメントありがとうございます.
お忙しいところ失礼しました,お手を煩わせてすみません.

よろしくお願いいたします.m( _ _ )m

この記事を書くときに作ったExcelファイルが見つかりましたのでダウンロードできるようにしました(記事に追記された部分にダウンロード元のリンクがあります)
何をやっていたのか、だんだん思い出しつつあるところですが、100%思い出すにはまだ時間がかかりそうなのでExcelファイルだけ先にアップロードしました。
内容について疑問やご指摘があればコメントいただければ幸いです。

excellファイルありがとうございます!
きれいにまとめてあったので見やすかったです!
ひとつご質問があるのですが,ソルバーの目的セルになっている[E1]はE2~213までの和になっています.これは実測値の曲線に計算による曲線を可能な限り近づけるためのアルゴリズムだとは思うのですがE3のセル内に入っている

=((C3-B3)*(A4-A2)/A3*1000)^2

の[ *(A4-A2)/A3*1000 ]の部分の意味がよくわかりませんでした.
自分で作成したときは単に( 計算値 - 実測値 )^2としていましたので...

Excelが何かの参考になればうれしいです。
以下ご質問にお答えします。

この測定(実験?)では周波数源の制御の問題から、低い周波数では周波数の変化幅が大きく、高い周波数では周波数の変化幅が小さくなっており測定値は高い周波数の方に集中しています。
そこで ∑( 計算値 - 実測値 )^2  と残差の合計をとってしまうと高い周波数での差を重く見てしまうことになります。そこで変化した周波数の割合 (A4-A2)/A3 を掛けることによって重みが高い周波数に偏らないようにしようとしています(こういう考え方が正しいかどうかはわかりませんが)

それから1000をかけているのはExcelではターゲットの値が小さいとSolverの収束の状況が思わしくないからという理由からだと思います(予防的にそうしたのか、実際に収束が悪かったからそうしたのかまでは覚えていません)

コメントありがとうございます.
重みを均等にするための処理だったのですね...
おかげでうまくいきました!
本当にありがとうございました!!

少しはお役にたてたようで安心しました。
また何かご指摘ありましたらよろしくお願いします m(._.)m

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