メタライズドポリエステルフィルムコンデンサの温度係数を測ってみた
セラミックコンデンサに懲りたのでフィルムコンデンサを使うようにしたのですが、これもこれで問題がありました。温度係数がけっこう大きいのです。
製品規格でいう温度係数というのはある一定の温度範囲(常温から使用限度上限くらいの温度)での容量の変化を温度の差で割った平均的なものなのですが、この記事では特定温度における温度に対する容量の変化率を温度係数と言っています。
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「村田製作所 - 静電容量の温度特性」にあるグラフを見るとフィルムコンデンサはとても温度係数が小さいように見えます。ところがじつはフィルムコンデンサの温度係数は意外と大きいようです。このグラフは縦軸がパーセント表示になっています。コンデンサとしては温度係数が小さいフィルムコンデンサでも炭素皮膜抵抗程度の温度係数を持っているようです。
実際に温度による容量の変化を測ってみました。LMC555+C+Rで発振器を作りC(メタライズドポリエステルフィルムコンデンサ)のみを断熱容器に入れ加熱します。
容器内の温度が高くなるに連れて発振周波数が下がり(加熱をやめて)温度が低くなると今度は発振周波数が高くなっています。発振周波数が下がるということは容量が大きくなるということなので正の温度係数を持っているようです。
こういうとき問題になるのは容器の外にある発振回路特に抵抗の影響です。今回は気温(室温)は20度で安定していますのでこれは問題なさそうです(念のため抵抗には温度係数25ppm以下という金属皮膜抵抗を使っています)
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温度に対する周波数の変化を見てみます。
温度が上昇するときも下降するときもほぼ直線的に変化しているのですがずれています。
容器内に温度ムラがあり上昇するときは低めの、下降するときは高めの温度を示しているように思えます。おそらく温度センサーの温度を均一にするために入れてあるアルミブロックへの密着度が低かったのではないかと思います。単なる推測ですが。
傾きが温度係数を示すわけですが、これも違います。平均をとってもいいのですがよく見ると全体的な傾きは温度上昇時の赤いグラフの方にあっているように思えます。
温度が1度上がると周波数は41Hzほど下がっています。41/64370として-640ppmということになります。ですからコンデンサの容量は640ppmの温度係数を持つということになります。
(上のようにグラフが温度上昇時と下降時で分離していることの理由が検証できていないなどあり)この値が正しいとはまだ断言できませんが上にリンクした村田製作所の資料に傾向的に一致するデータにはなっています。
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ところで「TDK - エレクトロニクス入門 - フィルムコンデンサ②」を見るともしフィルムコンデンサで温度係数優先だったらポリフェニレンスルフィド(PPS、ポリフェニレンサルファイド?)フィルムコンデンサを選ぶべきらしいです。
高価なのが難点とあります。千石電商のサイトを見たらそこまで高価というものでもなかったのですがSMDでした (^^;;
==> 「フイルムコンデンサ・静電容量の温度特性 - PPS(ポリフェニレンスルフィド)とPET(ポリエステル)」
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コメント
この記事へのコメントは終了しました。
私がこの前購入したルビコンのフィルムコンデンサはPPSなのか気になってきました(きっと違うのでしょう^^;)
SMDのコンデンサなら材料が高価でも小さい分安価になるわけですか、次買うときは考えてみます。
そういえばタンタルコンデンサもいくつか持っているのでESRなんかも計測してみたいですね。いっぱい課題があります^^;
投稿: ほよほよ | 2015年3月 9日 (月) 21時02分
PPSはちょっと特殊(あまり使われていない?)みたいですね。
今度秋月に行ったとき千石に寄って買ってみようかと思っています。
タンタルはここぞというときに備えて買ってはいるのですがめったに使いません。
確かにアルミ電解といろいろ比べてみるとおもしろそうですね (^^)
投稿: セッピーナ | 2015年3月10日 (火) 08時27分