VM39S5G(VCTCXO) - 温度補償型水晶発振器の温度係数を測る
発振周波数ができるだけ温度に依存しないようにと作ってある“超高精度温度補償型水晶発振器”の発振周波数が温度でどれだけ変化するか調べようというある意味大胆な企画です (^^;;
温度補償型水晶発振器の温度変化さえ気になるという方はこちらの方がいいかも。
「超高精度VCTCXO・VM39S5GをPLLでGPSに同期させてみた」
現段階(2015年11月)でも誤差は1Hz以内にできていると思います。
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GPS受信モジュールの1PPS信号をゲート信号として使っていますのでサンプル時間を128秒にすると周波数分解能0.01Hz、不確かさ0.0005ppmを達成できるはず、というのは「確度0.0005ppmの周波数測定 - GPSの1PPS出力を使った高精度周波数カウンタ」に書いたとおりです。
サンプル128秒だと測定・記録の間隔は5分になってしまいます。さすがにそこまではしたくないので32秒でやってみました。これでもVM39S5Gの発振周波数12.9MHzだと周波数分解能は0.03Hzありますからいいでしょう。
10時間ほど動かし外気を取り入れたりストープをつけたりしながらVM39S5Gの発振周波数を測ってみました。例によって「PIC+SPI+I2C 自記温湿度計+気圧計+8ch電圧計+周波数カウンタ(技術要素一覧表)」に書いた“統合計測装置”(?)を使います。
温度は白金薄膜抵抗の抵抗値から算出します。電圧は8チャンネルの12bitADコンバータで測り比較的確度の高いDMM(PC700)と突き合わせてできるだけ精度をあげます。
「発振周波数の電源電圧による変化 - 「超高精度・温度補償型水晶発振器VCTCXO・VM39S5G」」や「VM39S5G(VCTCXO)の外部制御電圧と発振周波数の関係 - 超高精度・温度補償型水晶発振器」に書いたように発振周波数は電源電圧が0.01V変化すると0.4Hz、外部制御電圧が0.01V変化すると0.8Hzも変化してしまいますのでおろそかにできません。電源電圧はもちろん「VM39S5G(VCTCXO)を使ってみた - 2 - 電源電圧」に書いたシャントレギュレータで安定化してあります。
このような測定結果が得られました。
気温の変化と発振周波数の変化がきれいに連動しています。ちゃんと温度係数が求められそうですが、その前に電源電圧が変化していなかったか確認します。
最初に思うのはもう少し分解能がほしいということでしょうか。使っているのはMCP3208で12bitなのでしようがありません。このADコンバータは基準電圧は外部から与えるタイプなのでしっかりした基準電圧源を用意する必要があります。
話が横道にそれましたが電源電圧も外部制御電圧も安定しています。申し分ありません。
最初のグラフを温度対周波数偏差のグラフに直してみます。念のため気温下降時と上昇時を別のグラフにします。
温度補償型水晶発振器の温度に対する周波数の変化はちょっと複雑なようですが、このような狭い温度範囲では直線と考えていいはずですし、グラフもそうなっています。
気温の下降時も上昇時もだいたい同じ変化を示しています。そして気になる温度係数は
0.44[Hz/K] ( 0.034[ppm/K] )
ということになります。
ところでこの気温が1度変化したときの周波数の変化を電源電圧の変化に換算すると
電源電圧 0.011[V]
外部制御電圧 0.006[V]
ということになります。
さすがに温度補償型と銘打つだけのものはあります。上のグラフを見てもわかるように室温はそう大きく変化するものではないです。とすると電源電圧や外部制御電圧の定電圧性を確保する方が先決のような気がします。
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この実験を行っている“装置”については
「PIC+SPI+I2C 技術要素一覧表(自記温湿度計+気圧計+8ch電圧計+周波数カウンタ)」
にあります。
そのほかの関連記事(とそのリスト)
「「超高精度・温度補償型水晶発振器VCTCXO・VM39S5G」を使ってみる - 1」
「発振周波数の電源電圧による変化 - 「超高精度・温度補償型水晶発振器VCTCXO・VM39S5G」」
「VM39S5G(VCTCXO)の外部制御電圧と発振周波数の関係 - 超高精度・温度補償型水晶発振器」
「VM39S5G(VCTCXO)を使ってみた - 2 - 電源電圧」 (この記事)
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