白金測温抵抗体の自己発熱(熱放散係数)を測ってみた - 1
なかなかうまく測れない白金測温抵抗体の自己発熱ですが、今回なかなか性能のいい定電流源ができたのでまたまた測定してみました。
今回使用したのは秋月で買った白金薄膜抵抗をアルミパイプに封入したもので室温と水中での自己発熱を測定します(作成中の写真が「自己発熱を測定してわかる白金測温抵抗体の扱いにくさ」にあります。ただ実際に作ったものは四線式とするためリード線は二組引き出してあります)
それからそれなりの測定器を使って自己発熱を補正するときのやり方は「サーミスタや白金抵抗温度計の自己発熱の影響を補正する方法」にあります。
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使用する回路はこんなものでいたってシンプルです。
(ただスイッチは三個使っています。これを一個で済ませようとすると自己発熱はおろか温度もまともに測れなくなってしまいますので念のため)
定電流源は「思わぬところで見つけた負性抵抗 - 定電流回路(バイラテラル回路)」で作ったものを使います。こういう測定のとき問題になるのは定電流源の安定性(温度変化)と内部抵抗ですが、等価並列抵抗はおそらく10MΩ(正確に言うと-10MΩ)あります。白金測温抵抗体の抵抗値は100Ω前後であり今測定している温度範囲であれば抵抗値変化は10Ω以下ですので実質影響はありません。
まず基準になる抵抗(1000B)に電流を流し端子電圧を測定し定電流源の電流値を測定します。この測定は有効数字6桁くらい(少なくともフルに5桁)必要ですが、そんな確度が得られる測定器はもっていないので、ここでは基準となる抵抗の端子電圧が0.100000Vのときの電流を1.00000mAと“定義”することにします。
電流値がわかったらスイッチを切り替え白金薄膜抵抗に同じ電流を流し端子電圧を測定します。端子電圧を電流値で割れば白金薄膜抵抗の抵抗値が求められます。
あとは所定の係数の二次方程式をとけば抵抗値から温度を求めることができます。これを二つの電流で行えば自己発熱が何度分くらいあるかわかります。
所定の係数で温度を求めるだけだと0.3℃から0.4℃くらいの誤差があるのですが、今回は温度を求めることではなく温度差を求めることが目的なので特に支障ありません。
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端子電圧の変化です。
最初と最後に1000Bの端子電圧を測っています。その間でPt100の端子電圧を測っています。14分と17分の間あたりに段差がありますが、これは白金薄膜抵抗を(室温よりちょっとだけ温度が高い)水の中に入れたためです。
ところで最初と最後で1000Bの端子電圧が違ったらどうするか?
平均を使うという方法もありますが、私の場合は室温の安定したときに再度実験することにしています。
1000Bはとても温度係数が小さいはず(同じ型番の1002Bの抵抗の温度係数の実測値は1ppm/K程度でした!)ですが定電流源や電圧測定に使うMCP3425の温度特性までは抑えきれていないので、実験をやり直した方が安全だと思います。
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電圧から抵抗値を求めます。
赤い線が流している電流の変化、緑の線が抵抗値変化です。水中に入れたとき大きく(と言っても0.3Ωですが)変化していますが、よく見ると電流の増減にともなって抵抗値が細かく変化しているのがわかると思います。
なお電流値は今回は思い切って(?)1mA、2mAと変化させています(規定の電流は1mA)
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抵抗値から温度を求めてみます。
紫の線が電流が小さいとき空色の線が電流が大きいときの温度です。
電流が大きくなるとわずかに温度が上がっているのが見られます。
次の記事「白金測温抵抗体の自己発熱(熱放散係数)を測ってみた - 2」でこの結果を詳細に検討してみたいと思います。
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参考
「白金抵抗温度計の校正とその使い方 - JCSS:計量法認定」
「JEMIC 計測サークルニュースVol.26, No.2 ~ 4 連載(1997) - 浜田登喜夫 - 白金抵抗温度計の校正とその使い方」
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