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2015年4月16日 (木)

恒星の位置(赤経・赤緯・高度・方位)計算 - ヒッパルコス星表の使い方から大気差の計算式まで(Excel版)

この分野には「長沢工「天体の位置計算」地人書館」というバイブル的な書籍があるのですが、実際に計算しようとするといろいろ疑問も湧いてきます。恒星の位置計算についてこれまで書いた記事をまとめ誤解しやすいところやポイント的な要素を補足してみました。

完全にできあがってからだといつになるかわからないのでひとまず記事にしこれからおいおい追記していきます。

=======

この表にある項目の具体的な計算式は

  「太陽の赤経・赤緯・地心距離をExcelで求める(海洋情報部の計算式) 2017年版
  「
月の赤経・赤緯・地心距離をExcelで求める(海洋情報部の計算式) 2017年版
  惑星(金星・火星・木星・土星)の赤経・赤緯・地心距離をExcelで求める(海洋情報部の計算式) 2017年版


の“恒星視位置”のシートに、恒星(と月)のExcelによる位置計算の最新の成果が

    「アルデバラン食出現時刻早見地図(全国版、2015年11月26日)

にあります。

この手の計算は特に難しい数学的な知識が必要なわけではないのですがけっこうめんどうです。
天文計算に取り組む方はめんどうなことはわかって(覚悟?)始められると思いますが、実際に始めると思ったよりさらにめんどうだということに気づかれると思います。
なぜかというと依存関係が複雑だからです。恒星の高度・方位角を求めるためにはグリニジ恒星時が必要、グリニジ恒星時を求めるためには真黄道傾斜角が必要、真黄道傾斜角を求めるためには章動が必要、と際限がありません。

そこで表はこういう依存関係ができるだけわかるように作っていくつもりです。

作成途中での検算/デバッグには国立天文台 - 天文情報センター・暦計算室 - 暦象年表のデータがとても役に立ちます。暦象年表の該当ページへのリンクも入れておきました。

項目 小項目 概要 計算に必要なもの
星表 全般

星表を利用するときは必ず次の三点を確認します。
・座標系
・星表元期
・固有運動の取り扱い
座標系がJ2000.0(ICRS)だからと言って星表元期もJ2000.0ととは限りません。
-------
参考
SIMBAD: Query by identifiers
恒星の星表番号(識別名)は星表ごとに違います。異なる星表の星表番号の突き合わせをするとき便利です。

取得法 以下に星表ごとにどこにあるかリンクを書いておきました。
星表番号を指定して位置を知る、位置範囲を指定して該当する恒星のデータを取得する、全データを取り込む、などができます。
------
参考
ほよほよのブログ - Tycho2星表
ほよほよのブログ - Tycho2 星表を MySQL に取り込む
ほよほよのブログ - Tycho2 星表を MySQL に取り込む その2
ほよほよのブログ - Tycho と MySQL ここまでのまとめ
ヒッパルコス系の星表データをまるごと取得するときの具体的な方法があります。
ヒッパルコス星表 参考
  「ESA - Hipparcos - Access the Catalogue Data
  「
VizieR archives Catalogue I/239
    「
Contents of the Hipparcos Catalogue
    「
Contents of the Tycho Catalogue
    座標系: ICRS
    元期: J1991.25
    固有運動の赤経方向成分はcos(δ)を掛けたもの
ティコ1星表(Tycho-1) 参考
  「ESA - Hipparcos - Access the Catalogue Data
  「VizieR archives Catalogue I/239
    「
Contents of the Hipparcos Catalogue
    「
Contents of the Tycho Catalogue
    座標系: ICRS
     元期: J1991.25

    固有運動の赤経方向成分はcos(δ)を掛けたもの
ティコ2星表(Tycho-1) 参考
  「ESA - Hipparcos - Access the Catalogue Data
  「VizieR archives Catalogue I/259
    「
The Tycho-2 Catalogue Information and Links
    座標系: ICRS
     元期: J2000.0
    固有運動の赤経方向成分はcos(δ)を掛けたもの
補足

国立天文台
の暦象年表
単にある日時の特定の恒星の視位置を求めたいだけなら国立天文台の暦象年表を使うのが便利です。

参考
国立天文台 - 天文情報センター・暦計算室 - 暦象年表
  「
恒星の視位置
  「
恒星の出入りと子午線通過
  「
恒星の高度と方位

国立天文台に暦象年表・恒星の視位置はどの星表を元に計算しているか問い合わせたところヒッパルコス星表2007年改訂版であるまた恒星の視位置の計算にあたっては重力場の影響は考慮していないとの回答がありました。(2014年10月に確認した内容です)
座標系 ICRS/ITRF
J2000.0変換
視位置は別にして一般に使われるのはJ2000.0でしょうが、上にあるようにヒッパルコス系の星表データはICRS/ITRFです。
厳密にはICRSからJ2000.0への変換が必要です。
(たいていの場合変換は必要ないです。この変換をする前にもっと他のことに注力した方がいいでしょう)
ICRSとJ2000.0の相互変換の記事も書きましたが、これは私の“独自研究”です。使われる場合は必ず内容をチェックした上でお願いします。
目安としては
  計算精度が(度で)小数点以下4桁かそれ以下のとき
    ==> ICRS/ICRFとJ2000.0座標系は同じものとして扱う。
  計算精度が(度で)小数点以下5桁のとき
    ==> ICRS/ICRFの赤経の値を -0.00002度 したものを
       J2000.0座標系での赤経とする。
  計算精度が(度で)小数点以下6桁かそれ以上のとき
    ==> ちゃんと計算する
みたいな感じでしょうか。
天文計算のための天文用語集 - 1
ICRS(ICRF)からJ2000.0座標への変換
J2000.0座標系からICRS(ICRF)に変換する
J2000.0北極の位置
J2000.0平均春分点の赤経
固有運動 恒星の相対位置に影響を与える(実質唯一の)要素です。
したがって恒星の相対位置を問題にする場合は必ず固有運動を適用する必要があります。
とても小さい動きなのですが星表元期__例えばヒッパルコス星表だとJ1991.25__から20年以上経てば恒星によってははっきり動いているのがわかります。
特に動きが大きいバーナード星などはアマチュアの望遠鏡/カメラでも短期間(数週間)の観測で動きを検出することができます。
視線速度なんてどうでもいいような気がするのですが、これもバーナード星だとけっこう影響があります。
バーナード星は動いているか? - 1
バーナード星 - 固有運動の実測値
「バーナード星の固有運動は何日でわかるか?」ランキング
恒星視位置(赤経・赤緯)計算が間違ってました!
恒星の視位置に対する固有運動と視線速度の影響
固有運動・年周視差・歳差、その大きさの違い
固有運動値(μα(またはcosδμα)、μδ)
赤緯
(視線速度)
歳差 恒星の視位置に対する影響はけっこう大きいですが恒星の相対位置に対する影響はまったくありません。長期間で見た場合は恒星の視位置の変化は歳差によるものがほとんどです(短期間では年周光行差の方が大きい)
歳差を適用した恒星位置が“平均位置”です。
固有運動・年周視差・歳差、その大きさの違い
月の赤経・赤緯・地心距離をExcelで求める(海洋情報部の計算式) 2017年版
歳差モデル
(例えばIAU1976歳差理論)
ユリウス世紀数
章動

歳差の動きに対してまとわりつくような動きになります。
計算に必要な定数がめちゃくちゃ多いので入力するのがたいへんです。視位置に対する影響はさほど大きくないのでExcelファイルではまだ定数をぜんぶ入力していません。
相対位置に対する影響はまったくありません。そもそも視位置に対する影響も軽微です。
歳差・章動を適用した恒星位置が“真位置”です。
太陽の赤経・赤緯・地心距離をExcelで求める(海洋情報部の計算式) 2017年版
月の赤経・赤緯・地心距離をExcelで求める(海洋情報部の計算式) 2017年版

国立天文台 - 天文情報センター・暦計算室 - 暦象年表 - 章動

章動モデル
(例えばIAU1980章動理論)
平均黄道傾斜角
ユリウス世紀数
月平均近点角
太陽平均近点角
月平均緯度引数
月太陽平均離角
月平均昇交点経度
年周視差 恒星の視位置や相対位置のどちらも影響を受けますがその大きさはとても小さいです。
小さすぎてアマチュアの観測機材で検出できるかできないかのギリギリのレベルです。
固有運動・年周視差・歳差、その大きさの違い
固有運動や年周視差はアマチュアには無縁なものなのか?
固有運動だけでは説明できないバーナード星の動き
月の赤経・赤緯・地心距離をExcelで求める(海洋情報部の計算式) 2017年版
年周視差
太陽(真)位置
年周光行差 恒星の視位置に与える影響はとても大きいです。長期間での歳差・固有運動の影響を除けば恒星の視位置に対する影響はいちばん大きいです。恒星の相対位置にも影響を与えるのですが近接した恒星間の相対位置に対する影響はきわめて小さいので相対位置に限れば実際には無視してもたいして問題になりません。下のリンクにあるように年周光行差を計算していないアプリもありました。
年周視差・年周光行差を適用した恒星位置が“視位置”です。
固有運動・年周視差・歳差、その大きさの違い
  (年周光行差の影響もグラフにあります)
天文アプリの精度比較(恒星編) - Stellarium 0.12.3
月の赤経・赤緯・地心距離をExcelで求める(海洋情報部の計算式) 2017年版

参考
国立天文台 - 天文情報センター・暦計算室 - 暦象年表
  「
恒星の視位置
光速
日心引力定数
地球軌道長半径
光行差定数
地球軌道離心率
真近点角
黄道傾斜角
高度・方位角 月の赤経・赤緯・地心距離をExcelで求める(海洋情報部の計算式) 2017年版

参考
国立天文台 - 天文情報センター・暦計算室 - 暦象年表
  「恒星の高度と方位
経度・緯度
グリニッジ視恒星時
極運動 勉強中です。
日周光行差 勉強中です。
大気差 大気差の計算式
カノープスの写真に見る大気差の影響
大気差を実測する(太陽編)

参考
国立天文台 - 天文情報センター・暦計算室 - こよみ用語解説
高度
太陽位置 太陽の赤経・赤緯・地心距離をExcelで求める(海洋情報部の計算式) 2017年版

参考
国立天文台 - 天文情報センター・暦計算室 - 太陽の地心座標
月位置 月の赤経・赤緯・地心距離をExcelで求める(海洋情報部の計算式) 2017年版

参考
国立天文台 - 天文情報センター・暦計算室 - 月の地心座標
真近点角 Excelで解くケプラーの方程式」(平均近点角==>離心近点角) 平均近点角
グリニッジ視恒星時 月の赤経・赤緯・地心距離をExcelで求める(海洋情報部の計算式) 2017年版

参考
国立天文台 - 天文情報センター・暦計算室 - グリニジ恒星時
ユリウス世紀数
真黄道傾斜角
黄経における章動
月平均昇交点経度
グリニッジ平均恒星時 月の赤経・赤緯・地心距離をExcelで求める(海洋情報部の計算式) 2017年版

参考
国立天文台 - 天文情報センター・暦計算室 - グリニジ恒星時
ユリウス世紀数
UT1
平均恒星時係数
ユリウス日
ユリウス世紀数
月の赤経・赤緯・地心距離をExcelで求める(海洋情報部の計算式) 2017年版

参考
国立天文台 - 天文情報センター・暦計算室 - ユリウス日
日にち
計算法 赤経赤緯と方向余弦 極座標(赤経・赤緯)と直交座標(方向余弦)の変換 (1)
極座標と直交座標の変換(方向余弦) (2/3)
極座標と直交座標の変換(方向余弦) (3/3)
座標の回転 座標の回転と行列演算 (1/2)
座標の回転と行列演算 (2/2)
Excelの行列演算の関数を使う
座標の回転
(四元数)
参考
ほよほよのブログ - TychoDBとアプリを連動させてみる
ほよほよのブログ - あなたにとって方向が変わらない星
度の小数と度分秒、時分秒の変換 度分秒・時分秒と度との変換(1)
位置観測 写真から未知の天体の赤経・赤緯を求める (1)
写真から未知の天体の赤経・赤緯を求める (2)
「写真から星の座標を得る」アプリ
「写真から撮影方向を分析する」アプリ
「写真から撮影方向を分析する」アプリ (2)


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  太陽と黒点
  天文計算の本
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コメント

おお!久々にブログタイトル「天文計算」的な記事が来ましたね(≧∇≦)
こないだTVで月のアリスタルコスの発光現象を取り扱っていたので、私もひさびさに月の写真でも撮ろうかと思っていたところでした。(といきまいたら新月に近い時期でまったく見えないんですけどね^^;)

興味の向かう対象とか世間様のニーズとかから最近どうしても電子工作的な方向に向かってしまいます (^^;;
先日コズミックフロントネクストか何かで月面では(天文学的)最近まで火山活動があって噴火の形跡がある、みたいなことを言っていたような。
みんなで見ていたらそのうち噴火の写真も撮れるかも (^^)

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