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2015年4月26日 (日)

高性能の定電流回路(バイラテラル回路) - 思わぬところで見つけた負性抵抗

前記事では定電流回路を作って白金測温抵抗体の抵抗を測ろうとしたのですが残念な結果に終わりました。そこで今度はまじめに作ってみました。

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今回は前回省略したボルテージフォロアをちゃんと入れました。
_02

抵抗はR5については0.5%、RLの電流測定用の100Ωは0.1%を使っています。R1~R4は「秋月電子通商の金属皮膜抵抗器の話 - KOA MF1/4CC2002F 20kΩ」に書いた20kΩの抵抗で1%ものですが温度係数は小さいです。R1とR2は選別して相対値を0.1%以下にしてあります。Vrefは2.5Vの基準電圧源です。オペアンプはOP07系を使っています。

上はちょっと不正確でした。詳しいことは前記事のリンク先の解説を読んでいただきたいのですが、この回路のポイントは左側のオペアンプが差動増幅器になっておりR1とR2の比とR3とR4の比とを一致させることです。R1=R2=R3=R4とすれば Iout=Vref/R5 となります。

なお実際に作ったものは
  「サーミスタ/白金測温抵抗体/pn接合による温度測定のための定電流電源(バイラテラル回路)
にあります。

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前回RLを100Ω/200Ωで電流の変化を見たのですが今回は100Ω/200Ωではまったく電流が変化せず100Ω/1100Ωとしました。

さっそく出力抵抗を調べてみたのですがおもしろいことに気が付きました。ふつうRLを小さくすると流れる電流が大きくなるのですが、実験してみるとRLを小さくするとわずかに電流が減るのです。どうやら定電流源の内部等価抵抗が負性抵抗になっているようです。

余談っぽくなりますが、前記事「定電流回路(バイラテラル回路)の出力抵抗を測ってみたけれど....」の最後にこの回路の解説へのリンクがあります。この回路がR1、R2の設定しだいで内部抵抗がマイナスになること、またそのことですぐに回路が不安定になるというわけではないことが説明してありますので興味がある方はご覧になってください。
負性抵抗(の測定)というのはテーマとしてはおもしろいです。以前「オペアンプで作った負性抵抗の抵抗値を測ってみた - 1」などという記事を書きました。

負荷を変化させたときの電流の変化はとても小さくて“大きすぎて測定できない”というのとするのが正しい態度だと思いますがムリヤリ計算してみました。

ケース1
  R2a=100Ω Va=0.083429V
  R2b=1100Ω Vb=0.083437V

  等価内部抵抗 -10MΩ
  等価電流源 0.81mA
  等価電圧源 -8kV

ケース2
  R2a=100Ω Va=0.125172V
  R2b=1100Ω Vb=0.125187V

  等価内部抵抗 -8MΩ
  等価電流源 1.31mA
  等価電圧源 -10kV

ケース1の8μVの差はMCP3425の分解能の限界、ケース2もその2倍でしかないです。だから上で算出した内部抵抗の有効数字は一桁もありません。でも何度もやってみましたが上のような傾向は確実に見られました。

“内部抵抗(の絶対値)が極めて大きい”ことだけは確かでこれだったら問題なく白金測温抵抗体の抵抗値測定を内部抵抗の補正なしで行うことができそうです。
測定対象とする温度範囲にもよるのですが、MCP3425で電圧測定をする場合等価抵抗(の絶対値)が1MΩ以上あれば白金測温抵抗体を流れるは一定であると考えて計算することができるようになります。

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前記事での負荷に対する電流の変化
_old

負荷抵抗が200Ωから100Ωと小さくなると電流は2μAほど増えます。

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今回の記事の回路では負荷抵抗に対する電流の変化
_new

負荷抵抗を1100Ωから100Ωに小さくするとやっと電流の変化が見られます。0.1~0.2μAくらい減っています。

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そのまま白金薄膜抵抗の電流による温度測定値の変化(つまり自己発熱)を測ってみました。
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なんというか微妙な結果です。
もう自己発熱は無視できるということで先に進もうかと思っています (^^;;

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関連

  「定電流(バイラテラル)回路の内部抵抗を測ってみた
  「サーミスタ/白金測温抵抗体/pn接合による温度測定のための定電流電源
  「定電流回路(VIコンバータ)の安定性を調べてみた
  「思わぬところで見つけた負性抵抗 - 定電流回路(バイラテラル回路)
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  「(水中の)サーミスタの自己発熱・熱放散係数を測ってみた

  「温度センサー3種の精度比較(摂氏0度~40度編)

  参考

    「白金抵抗温度計の校正とその使い方 - JCSS:計量法認定
    「JEMIC 計測サークルニュースVol.26, No.2 ~ 4 連載(1997) - 浜田登喜夫 - 白金抵抗温度計の校正とその使い方

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コメント

測定数値が調整無しで実現できる回路系の限界にきているのかと。

・U1アンプのゲインが正確に×1になってない(1/1000以下で誤差が発生)
   ボリューム(ポテンショ)をつないでゲイン調整できるように
     100ΩくらいのをR1とR2の間に  スライダからU1(-)に
・U1、U2のオフセット電圧が効いている。
   ボリューム(ポテンショ)をつないでオフセット調整できるように
・Vrefの出力インピーダンスとU1のバイアス電流の関係
   R4とVref間にもバッファアンプを
・回路の発振に注意
   R1に並列にコンデンサ

調整の方法
  まずは各アンプのオフセット調整
  負荷抵抗を変化させても「電流が一定」になるようにゲインを調整
    負荷をボリュームにして、ぐるぐる回しても電流が変化しないように
  Vref電圧を調整して出力電流を確定

詳しくしかも具体的にお教えいただきありがとうございます m(._.)m
バイアス電流の影響はちょっと気になるのですが、その後徹底的に抵抗を選別したら定電流源の等価並列抵抗を数百MΩまで持っていけてサーミスタにも使えるようになったのでそのまま使っています。ご指摘のとおり作り(というか調整)がかなり雑なのかもしれません (^^;;
測定対象の抵抗と基準となる抵抗の抵抗値の比を知るのが目的なので、定電流源の等価並列抵抗が測定対象やADコンバータの内部抵抗より十分高くてドリフトがあんまり大きくなければ測定には使えてしまうもので....

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