じつはマイナスの電圧もちょっとは測れる16bitADコンバータMCP3425
ADコンバータでマイナスの電圧をどうやって測るかで頭を悩ましている方も多いようです。私もそうでした。記事も書きました。
マイナス電圧が測れるかどうかと言う前にそもそも単電源で動作するADコンバータでプラスであっても0V近辺の電圧が正しく測れるのかというのも疑問です。
でも16bitADコンバータMCP3425はちょっと違います。
======
図といっしょに説明を書くつもりだったのですが実験結果のExcelのファイルがどこに言ったかわからくなったので文章で要点だけ書いておきます。
実際にマイナスの電圧を測った例を記事にしました。
「ADコンバータでマイナスの電圧を測るとどうなるか? - MCP3425編」
以下私の体験談をもとにしたものです。実際に使われる場合はデータシートを熟読した上でお願いします。私も関係する場所は読んだつもりですが見落としがあるかもしれません。
MCP3425の測定電圧範囲は-2V~2Vとなっていますが、これは Vin+ - Vin- の電圧です。-2Vなんて測れるわけがありません。
Vin+ の絶対最大定格はVss-0.3Vです。この電圧を(マイナス側に)超えてはいけないわけですがこの電圧を超えると一応保護回路は働くようです。入力抵抗が極端に落ちましたので(“事故“が起きたときの体験談です。こんなのは真似しないでください)
でここからが本題ですが、保護回路が働く前までつまり-0.1Vとか-0.2Vではちゃんと電圧を測定できるようです。詳細な検討は行っていないのですが少なくとも0V近辺の±数十mVの直線性には問題がないように見受けられました。どうして単電源でマイナスの電圧が測れるのかよくわからないのですが....
ADコンバータでマイナスの電圧を測りたいという中にはブリッジのゼロ点を正確に知りたいというようなニーズもあると思いますが、そういうことでしたらMCP3425は使えそうです。
MCP3425は自動オフセット調整がついていてゼロ点はぴくりとも動きませんので、そういう意味でも平衡点検出なんかには適していそうです。
先日「ADコンバータでマイナスの電圧を測定する方法」を書いたときMCP3425をADコンバータとして使うのであれば入力の正負を判断するコンパレータのオフセットは気にしなくていいと書きましたがMCP3425の上のような特性を見つけたからです。
今直列共振周波数を流れる電流の位相の変化から検出しようとしています。つまり入力電圧との位相差が正から負に変化するときの周波数を求めようというやり方です。
この場合ベクトル電圧計の余弦波成分(正弦波と位相が90度異なる成分の意味)の電圧が正から負にかわります。こういうときゼロ点の検出にMCP3425が使えるわけですが、余弦波成分の電圧は-0.2Vではとどまりません。だからやっぱり「ADコンバータでマイナスの電圧を測定する方法」みたいな方法を使うことにはなるのですが、ゼロ点を検出するという目的であれば正負判別のコンパレータの基準電圧は0Vぴったりではなく正負どちらかにシフトさせておいた方が、つまりわざとオフセットを持たせておいた方が使い方としてはすっきりしそうです。
関連
「記事一覧(測定、電子工作、天文計算)」
「ADコンバータでマイナスの電圧を測定する方法」
ちょっとめんどうな方法ですが0Vを正確に測ることができます。
また入力電圧極性の信号も作れるのでPICなどで処理するには最適でしょう。
入力直流電圧に交流分が含まれていても波形がまるごと反転するだけなので全波整流回路を使ったときのようなヘンなことにはなりません。
なおMCP3425の入力電圧に含まれる交流分に対するレスポンスはデータシートにありますので、それを見て必要に応じLPF等入れればいいと思います。
「ADコンバータでマイナスの電圧を測定するには?」
16bitADコンバータMCP3425
「PICでI2C - ADコンバーター・MCP3425の使い方」
「MCP3425のもうちょっと詳しい使い方(ソース付き)」
分解能については
「MCP3425の精度を調べてみた - 16bitADコンバータの分解能」
ベクトル電圧計
「ベクトル電圧計の製作と調整 - 交流電圧計(ミリバル)」
“ふつう”の交流電圧計については
「交流電圧計(ミリバル)の簡単な作り方」
「一歩進んだ交流電圧計(ミリバル)の製作 - 1」
これでも直流電圧の極性変換はできますし簡単です。
ただ極性の信号を得るのにコンパレータを使うのであればけっきょく同じことかも。
なおこの方法は入力電圧に交流電圧が重畳されていると意図しない結果になりますので注意が必要です。
「交流電圧計(ミリバル)を作る - 高周波電圧計 - 1」
« 暫定版・コンデンサのESRの周波数特性を測ってみた - PET(ポリエステルフィルム)編 | トップページ | ADコンバータでマイナスの電圧を測るとどうなるか? - MCP3425編 »
「趣味の電子工作」カテゴリの記事
- PICで作る100MHz周波数カウンタ検証用XOR(エクスクルーシブオア)逓倍器(2016.03.08)
- 150MHz(~200MHz?)周波数カウンター用プリスケーラー(1/4分周器)(2016.03.06)
- 測温抵抗体(Pt100、白金薄膜温度センサー)の抵抗値を温度に変換する(平方根を使わない)計算式(2016.03.01)
- GPS/JJY(標準電波)を基準周波数源とするためのPLLの詳細(2016.02.27)
- GPS受信モジュール1PPS対決 - GE-612T vs GM-5157A(2016.02.21)
コメント
この記事へのコメントは終了しました。
« 暫定版・コンデンサのESRの周波数特性を測ってみた - PET(ポリエステルフィルム)編 | トップページ | ADコンバータでマイナスの電圧を測るとどうなるか? - MCP3425編 »
こんにちは、リンクさせていただきました。
MCP3425と同等品と思われるADS1110で実験中です、参考にさせていただいてます。
投稿: edy | 2015年4月12日 (日) 01時03分
数日前にブログリンクに入れていただいているのに気が付きました。
ありがとうございます m(._.)m
edyさんのブログを拝見したらこれからテーマにしたいと思っていたことがいくつもありました。
今後記事を書くとき参考にさせていただきますのでよろしくお願いします。
チャージポンプとか状態変数型フィルター(作りたいのは状態変数型発振器)などです。
投稿: セッピーナ | 2015年4月12日 (日) 07時34分