ADコンバータでマイナスの電圧を測るとどうなるか? - MCP3425編
前記事で16bitADコンバータMCP3425だったらマイナスの電圧を測れないこともないと書いたのですが、文章だけでちょっと説得力に欠けました。
今朝早起きしてマイナスの電圧を測る実験をしてみました(あいかわらず以前の実験結果が見つからないのです)
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これはあくまでMCP3425の実験結果です。他のADコンバータがどうなのかはこの記事を読んでも何もわかりません。ご自分でお使いのものがどうだかはデータシートで確認するか実験していただくしかないのですが、実験するときは絶対最大定格に注意していただきますようお願いします。
ほんとはMCP3425といっしょにMCP3802もやってみるつもりだったのですができなかったのでMCP3802の方は別に記事にしたいと思います。
なおedyさん(「迷走の果て・Tiny Objects」)によるとこのMCP3425とADS1110は同等品だそうです。とするとTIのOEMなんでしょうか。いずれにしても知っておくと得する情報かも。
ADS1110に関する記事は例えば「迷走の果て・Tiny Objects - ADS1110の変換モードについて」にあります。PSoCのソースつきです。恥ずかしながらPSoCってなんだか今日まで知りませんでした。今日からわかったというわけでもありませんが)
<=== この二つはそっくりさんだけれどもまったく同じではないそうです。
詳しいことはedyさんの
「迷走の果て・Tiny Objects - MCP3425はADS1110と同等品ではありません」
にあります。
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オペアンプを使った積分回路で電圧が下降していく回路を作り出力電圧を測ります。
積分回路なので電圧の時間に対する変化率は一定しているはずです。
まずブリッジの平衡点を探すような用途でいちばん気になる0V近辺の挙動を調べてみます。電圧を7mVから-8mVまで変化させました。
グラフに関する補足
・入力電圧0mVに対し0mVを示すのは確認ずみです。
・同時にDMMを接続して測定値を比較していたのですがこの範囲に関してはMCP3425の示す値とDMMの表示値には0.1mVを超える差はありませんでした(このとき使ったDMMは分解能が0.1mVのものです)
・ちょっと分解能(62.5μVの設定になっています)に問題があるような結果ですがノイズ対策のコンデンサを入れ忘れたためだと思います。ここが気になる方は
「MCP3425の精度を調べてみた - 16bitADコンバータの分解能」
をご覧になると安心できると思います。
・入力がマイナスになると保護回路が働き入力インピーダンスが低下する可能性があります(というか絶対最大定格より低い電圧を間違って入力したときは入力抵抗が低下していました)
今回は信号源(電源)の出力インピーダンスが極めて低いため仮に入力抵抗が低下していてもその影響は結果にあらわれません。
===> 「ADコンバータでマイナスの電圧を測ったときの内部抵抗の低下 - 16bitADC/MCP3425」
・グラフの右側の方のデータがまばらになっていますが、これはデータの記録をしているSDカードへの書き込みが時間とともにだんだん遅くなり4秒ごとの書き込みに間に合わなくなったためです(電圧以外にも気温・気圧をはじめいろんなデータを記録しています)
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次にもっと広い範囲0.15Vから-0.3Vでやってみました。この-0.3VというのはMCP3425の場合絶対最大定格ギリギリの値になります。
(図に入れ忘れたのですが)直線近似のグラフを入れて見るとちょっとずれがあるように見えないこともないですが、実用的にはぜんぜん問題なさそうです。
(ずれがあるのは積分回路の方の問題の可能性があるのでこの方法では直線性についての確定的な結論は出せません。もっとも完全に直線だったら直線性に問題なしという結論を出しても問題ないとは思いますが)
結論
MCP3425は-0.3V以上であればマイナスの電圧も測れそうだ
関連
「記事一覧(測定、電子工作、天文計算)」
「ADコンバータでマイナスの電圧を測定するには?」
「ADコンバータでマイナスの電圧を測定する方法」
ちょっとめんどうな方法ですが0Vを正確に測ることができます。
また入力電圧極性の信号も作れるのでPICなどで処理するには最適でしょう。
入力直流電圧に交流分が含まれていても波形がまるごと反転するだけなので全波整流回路を使ったときのようなヘンなことにはなりません。
なおMCP3425の入力電圧に含まれる交流分に対するレスポンスはデータシートにありますので、それを見て必要に応じLPF等入れればいいと思います。
16bitADコンバータMCP3425
「PICでI2C - ADコンバーター・MCP3425の使い方」
「MCP3425のもうちょっと詳しい使い方(ソース付き)」
分解能については
「MCP3425の精度を調べてみた - 16bitADコンバータの分解能」
電圧計について
「ベクトル電圧計の製作と調整 - 交流電圧計(ミリバル)」
交流電圧計ですが位相が逆になると出力がマイナスになります。
だからマイナス電圧の測定の必要がでてきます。
「交流電圧計(ミリバル)の簡単な作り方」
「一歩進んだ交流電圧計(ミリバル)の製作 - 1」
これらでも直流電圧の極性変換はできますし簡単です。
極性の信号を得るのにコンパレータを使うのであればけっきょく同じことかも。
ただ全波整流回路なのでこの方法は入力電圧に交流電圧が重畳されていると意図しない結果になりますので注意が必要です。
「交流電圧計(ミリバル)を作る - 高周波電圧計 - 1」
さすがにこれは直流電圧はムリです。
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こんにちは、ブログを紹介していただきありがとうございます。
残念ながらADS1110とMPC3425は同等品ではありませんでした。
差し替えてスレーブアドレスを変更さえすれば使えるということではありませんでした。
まぁ、ほとんどそっくりさんなんですが。
もう少しいじってみます。
投稿: edy | 2015年4月15日 (水) 17時30分
お教えいただきありがとうございます m(._.)m
記事に補足を入れておきました。
最近ここぞというポイントでの電圧測定はMCP3425を使っています。
お値段の割には機能も精度(分解能、直線性)も文句なしで気に入っています。
場面によってはDMMより役に立ちます。
投稿: セッピーナ | 2015年4月15日 (水) 19時50分