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2015年4月11日 (土)

暫定版・コンデンサのESRの周波数特性を測ってみた - PET(ポリエステルフィルム)編

コンデンサの容量とかESRとかなんとなく測れそうな雰囲気になってきましたので“メタライズドポリエステルフィルムコンデンサの周波数特性をちょっとだけ測定する”ということをやってみました。

誤解している人が多そうなコンデンサの“ESR”の意味」にコンデンサのESRというのは仮想的(?)なものでコンデンサの中にESRに相当する抵抗が存在するわけではない、だからESRは周波数によって変化するのだ、みたいなことを書いたのですが、その根拠は、メーカのデータシートを見ればわかる、でした (^^;;
あんまりなので自分でESRの周波数特性を少し調べてみました。

なおコンデンサの容量やESRの測定法などについては“まとめ”を作りました。

  「
(コンデンサ - ESR(誘電正接、tanδ、DF)とキャパシタンス(静電容量)の測定 - まとめ

最新の測定結果へのリンクもあります。
この記事にある測定結果についていうとESRがかなり高めに出ているようです。
全体的な傾向にはそんなに問題はないと思いますが....

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測定方法の全体像は記事の最後にブロックダイアグラムがあります。いちばん重要なところは次の回路になります。
Pet__

この回路は入力電圧がVin のとき Vout = Vin * Rf / ( R + ESR + 1/jωC ) の電圧が得られます。

実際にはスイッチS1を閉じて純抵抗にした場合でもVinとVoutには位相のずれが発生しました。こういうところをどう扱えばいいのか考えて行くのがけっこうたいへんです。
またオペアンプの出力に入っている300Ωはオペアンプの負荷が容量性に傾いて不安定にならないか心配で入れてあります。要否、効果についてはまだ確認していません。
このことも含めかなり電流が流れるケースが予想されるのでオペアンプは3413D(73mA出力可)にしてあります。


したがって Vout をベクトル電圧計で測って ( R + ESR + 1/jωC ) = Vin * Rf / Vout を計算すると (結果の 実数部) - R がESR、1 / ( (結果の虚数部) * ω ) が静電容量になります。

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今回はこれまでの実験の反省から回路を見直しました。大きな変更点は基準電圧源を使った正弦波発生器の出力電圧安定化で(少なくとも数時間であれば)出力電圧の変動は1mV以下(0.1%以下)になっています。おそらく数日間連続で動作させてもだいじょうぶだと思いますがまだやっていません。
またベクトル電圧計に使うアナログ乗算器のバイアス電流はFETを使った定電流回路にしていたのですがこれをやめてこちらも基準電圧源から温度係数の小さい抵抗を通して与えるようにしました(FETを使った定電流回路は温度の影響が大きかったためです)
これらによってこの記事にあるように周波数を徐々に変化させながら測定するときも安心して測定ができるようになりました(下記の結果は周波数を15分かけて1700Hzから1000Hzまで変化させて得られたものです)

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結果です。
もっと広い周波数範囲で実験したいのですが、始めてなもので....
Pet_

キャパシタンスはほとんど変化していません(高い周波数で1nF弱小さくなっていますが、実際にそうなのか、測定方法に問題があるのかはまだわかりません)

ESRは周波数が高くなるに連れて徐々に小さくなっています。19Ωから12Ωくらいまで下がっています。測定結果(実験の開始、終了時1001Bのみの抵抗値を測定しています)を見ると仮に実験方法・条件に問題があってもその影響は1Ω以下と思われるのでこの周波数領域では“周波数が高くなるとESRは小さくなる”と考えて間違いないと思います。

コンデンサのリアクタンスも周波数が高くなるに連れて小さくなるので結果として誘電正接(DF、tanδ)はほぼ一定の値になっています。

なおグラフ中にある大きなマークは“細心の注意を払って”1220.7Hzで測定した結果です。今回の結果もそれとちゃんと一致しているようです。

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1000Hz~1700Hzはいくらなんでも狭すぎるので次回は周波数範囲を広げるのが課題でしょうか。
測定条件による容量やESRの変化が大きそうなセラミック・コンデンサもやってみたいです。

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関連

  「記事一覧(測定、電子工作、天文計算
  「(コンデンサ - ESR(誘電正接、tanδ、DF)とキャパシタンス(静電容量)の測定 - まとめ

  「LCRメータの仕組みと作り方
  「自動平衡ブリッジの原理と回路の作り方
  「誤解している人が多そうなコンデンサの“ESR”の意味

ブロックダイアグラムでは水晶発振器となっていますが、今回はもちろん周波数可変になっています。具体的には「インダクタンス測定法 - LC並列共振周波数測定装置」にあるような回路を使っています。ただ発振器はLMC555ではなくLT1799を使っています。
Photo

水晶発振器
  「確度0.0005ppmの周波数測定 - GPSの1PPS出力を使った高精度周波数カウンタ
  ==> VFコンバータ
     「インダクタンス測定法 - LC並列共振周波数測定装置

バイナリカウンタ
  「24ビットバイナリーカウンター(12STAGEリップルキャリー・バイナリー・カウンター TC4040BP+SN74HC4040AP)

周波数カウンタ
  「GPS/RTC(DS3234)の1PPS出力を利用した超高精度周波数カウンター

正弦波発生器
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