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2015年4月10日 (金)

暫定版・アルミ電解とタンタルコンデンサのESRを測ってみた

自動平衡ブリッジを使うとき適切な値の抵抗と直列にして測定すればコンデンサの容量とESRを正しく測れそうだということがわかりました。そこでアルミ電解とタンタルの容量とESRを測ってみました。

なおこの記事でいうESRは“コンデンサに交流電圧を印加したときコンデンサで消費される(実効)電力が抵抗で消費されたと考えたときの抵抗の値”のことを言います(わざわざこういうことを書くのはESRという言葉を別の意味で使われている記事もあるからです)

このESRの定義はメーカーのデータシートにあるものと同じですが、データシートにあるESRの測定条件はふつう10μF以下は1kHz、1Vrms、10μF超は120Hz、0.5Vrmsによるもののようです。

今回の測定は1220.7Hz、印加電圧約0.1Vrmsによるものです。また直流電圧は印加する準備ができずほぼ0Vで測定しています。

=======

測定の方法はこれまでさんざん書いたので結果だけ書きます。
(簡単に書くとオペアンプの反転増幅回路の入力に測定対象コンデンサと1kΩの抵抗を直列にして入れ帰還抵抗を1kΩとして出力の入力との同相成分と90度異なる成分の電圧を測りコンデンサの抵抗分とリアクタンス分を求めます。詳細は記事の末尾にある関連リンクを参考にしてください)

------

キャパシタンスの測定に関してはもうまったく問題ないのではないかと思います。
ESRに関してはtanδが個体によってかなり違います。今回の測定方法・条件ではESRの測定の確度は±0.5Ω程度と思われるのでほんとにこれだけ違うのかどうかは微妙なところです。
ただ個別の容量・ESRと並列・直列にしたときの容量・ESRの関係はわりとまともな結果になっていますのでそんなにとんでもない値になっているということはないと思います。

いずれにしてもより確度の高い測定を目指します。

------

アルミ電解コンデンサ ルビコン PK(85℃ 標準品) 4.7μF、10μF 50V

ESRの
測定値[Ω]
容量の
測定値[μF]
誘電正接
損失角の正接
(DF、tanδ)
個別の
測定値から
算出したESR
[Ω]
個別の
測定値から
算出した容量
[μF]
4.7μF 1.1 4.2 0.04
10μF 1.2 8.9 0.08
並列 0.5 13.0 0.05 0.7 13.1
直列 2.7 2.9 0.06 2.3 2.9

注 ESRが0でない場合直列並列にしたときの合成容量は 1/C = 1/C1 + 1/C2 C=C1+C2とはならないです(タンタルも同じです)

<=== 直列にしたときの話を書いていましたが、kmnkさんのコメントにある指摘通り、これは勘違いでESRの影響が問題になるのは並列のときです。

-------

タンタルコンデンサ 星日電子 10μF 6.3V (TBM0J106DECB?)

このコンデンサはデータシートには100kHzでのESRが載せてあるようです。この周波数でアルミ電解とESRを比べるのはかわいそう(?)かも....  <== 勘違いです。他の製品と取り違えていました。ESRは小さい方がいいと思ってついこういうことを書いてしまうのですが、用途によってはあんまり小さいESRは問題になるわけで、そのあたりは何に使うかで考えてください。

ESRの
測定値[Ω]
容量の
測定値[μF]
誘電正接
損失角の正接
(DF、tanδ)
個別の
測定値から
算出したESR
[Ω]
個別の
測定値から
算出した容量
[μF]
10μF-1 1.1 10.3 0.09
10μF-2 2.1 10.3 0.17
並列 0.6 20.5 0.13 0.8 20.5
直列 2.8 5.1 0.11 3.2 5.1

---------

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コメント

セッピーナさんお久しぶりです。
少し前の記事ですが、気になることがあったので。。

> 注 ESRが0でない場合直列にしたときの合成容量は 1/C = 1/C1 + 1/C2 とはならないです(タンタルも同じです)

これは、「直列」ではなく並列の間違いでしょうか?

容量がC1、ESRがR1のキャパシタのインピーダンスZ1は
Z1 = R1 + 1/(j*ω*C1)
と表されます。
同様に、容量がC2、ESRがR2のキャパシタは
Z2 = R2 + 1/(j*ω*C2)
と表されます。

この2つを直列にした時のインピーダンスZ=Z1+Z2は
Z = (R1 + R2) + 1/(j*ω)*(1/C1 + 1/C2)
と表されますから、合成キャパシタの等価直列抵抗Rは
R=R1+R2
合成キャパシタの等価容量Cは
C=1/(1/C1 + 1/C2)

のようになるはずです。

一方、並列につないだ場合には、

Z = (Z1*Z2)/(Z1+Z2)となり、
途中計算略

合成容量
C=((R1+R2)^2*C1^2*C2^2*ω^2 + (C1+C2)^2) / (C1*C2*(R1^2*C1+R2^2*C2)*ω^2 + (C1+C2))

等価直列抵抗は、
R = (R1*R2*(R1+R2)*C1^2*C2^2*ω^2 + (R1*C1^2+R2*C2^2)) /(R1+R2)^2*C1^2*C2^2*ω^2 + (C1+C2)^2

と周波数に依存する面倒な式になります。

このままではよくわからないので、
ωを0に近づけた時の極限を見ると、

ω→0
C → (C1+C2)
R → (R1*C2^2 + R2*C1^2)/(C1+C2)^2
とこんな感じになります。
低い周波数ではCは想像通り和になるけど、
Rは、双方のコンデンサの容量に依存した値になります。

一方、周波数を無限に近づけた時の極限を見ると、
ω→∞
C → (R1+R2)^2*C1*C2 / (R1^2*C1 + R1^2*C1)
R → R1*R2/(R1+R2)
となります。
高い周波数では、Rは並列接続そのもの(Cのインピーダンスが0になるので当たり前)
一方、CはRに依存した値になります。

ご指摘ありがとうございます。
おっしゃるとおり“注”は間違っています。“並列”が正しいです。記事は訂正しておきました。

1/(1/4.2+1/8.9)=2.9 なので表の計算は合っていると思います。

計算は実部と虚部に分けて考えるのがめんどうなのでExcelでIMDIVとかIMPRODUCTを使って済ませています (^^;;
(たぶんどっかの記事にExcelのシートをアップロードしたような....)
1/(1/10.5+1/10.5)=5.3 みたいに表の値(5.2)とちょっと違っているケースがありますが、これはExcelの方は測定値の四捨五入していない生の値を使っているのに対し表は測定値も四捨五入して表示しているためです。

それからESRを考慮したコンデンサーのインピーダンスはωを変化させて考えるのはRの周波数特性がわかっていない限りあんまり意味がないのではないでしょうか。

Rと表現するのは印加した電圧と位相が同じ電流が流れるということを意味しているのであって、その大きさが周波数依存しないということを意味しているわけではありませんから。

ただこの頃の実測結果は今考えると自動平衡ブリッジやアナログ乗算器の特性を完全に押さえきれてなくて結果にはあんまり自信がないです (^^;;
実験条件もメーカーのものとはかなり違いますし、そのうちもう一度ちゃんと測定しようと思っているのですが....

ESRは周波数依存ですから、R(ω)と書く必要がありますが
その場合でも、ここに書いた式は成り立ちますので。
定数でなくても意味はあると思います。
Cも周波数依存なのでC(ω)と書く必要があります。

式の形になることで、低周波の場合と高周波の場合では、
合成したキャパシタのESRが何に依存し、どんな感じになるかという
雰囲気を知ることに役立つと思ってます。

こういうのはキリがなくてインダクタ分はどうなるんだみたいな方向に進みかねないのですが、1000Hz程度での測定ですのでこの辺で許してください。
kmnkさんが私より経験も知識も豊富なことは十分に理解しております。
そういう方から間違ったことはちょっとでも書くなというようなスタンスのコメントをいただくと以前のブログと同様にめげてブログをやめてしまいそうです。

(電解コンデンサは詳しく調べていないのですが)上のコメントはフィルムコンデンサではこのあたりの周波数ではだいたいCは一定、Rは周波数に反比例するという(あるい意味典型的な)特性を示していたという私の乏しい知識と限られた経験をもとにした素人のたわごとと思って見逃してください m(._.)m

なんか、勘違いされてる気がします。
間違ったことを絶対書くな、なんて全然思ってませんよ?

セッピーナさんが今まで行ってこられた実験と考察の結果を見ている時、
いままで私が漠然と思ってきたことを実際に検証しているのが
すごいなって思う事が多いです。

私は自分で、抵抗の温度係数の計測をやって
ロット内のばらつきが大きいことや、数時間にも及ぶ
長時間の時定数を持つ抵抗変化があることを初めて知り、
選別すれば精度を高められると思っていた今までの希望が
無くなって悲しかったりしてます。

私は、相手に自分の考えを示すとき、
ある程度の検証や計算結果を一緒に示さないと
言いがかりをつけるようで、申し訳ないと思う性分なので、
結果をいっぱい書くため分量が増えてしまいます。
それが、気になってらっしゃるのでしょう。

ご気分を悪くされてるようなので、これで終わりです。

別に気分を悪くしたということではなくて(メンタルが弱いので)落ち込んでいるだけです。
ご心配をおかけして申し訳ありません m(._.)m

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