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2015年4月15日 (水)

コンデンサのキャパシタンスとESR測定の現状と課題 - LCRメータ方式

LCRメータと同じ方法で測定を行い、コンデンサやコイルのキャパシタンスが、ESRが、インダクタンスが、という記事を書きまくっています。測定結果についてはそれなりの整合性が出てきたので少なくとも容量の大小とかESRの大小が間違っているということはないと思って書いています。

つまり二つのコンデンサを測定して100nF、99nFというキャパシタンス値が得られたときこの二つのコンデンサには1nF程度の差があるということは間違いないでしょうし、100nFと50nFのキャパシタンス値が得られたときは容量がだいたい二倍違うということも言えると思います(これはコンデンサを直列にしたり並列にしたとき“公式”どおりの値が得られるという意味でもあります)

ただ測定結果がC=100nF、ESR=10Ωとなったときほんとうに100nFであり10Ωであるかどうかということにはまだ自信がもてません。

LCRメータ方式には解決すべき課題が山のようにあるのですがここではそのうち自動平衡ブリッジ部分にある問題について書いてみます。

さまざまな課題の一つは正弦波発生器の二つの出力の位相差(正確に書くとアナログ乗算器に入力した二つの信号の位相差)が正確に90度にならないことです。この“対策”についてはすでに記事を書いています。
  「
キャパシタンスメータの原理と作り方 - 実戦的ベクトル電圧計の数学
  「
キャパシタンスメータの原理と作り方 - 続・実戦的ベクトル電圧計の数学 

=====

LCRメータの中心になるのは次のような反転増幅回路です。
Eq01

この回路では

  Vout = Vin * Rf / Zx

の関係が成り立ちますのでVoutを測定すれば

  Zx = Rf * Vin / Vout

を計算すれば未知のインピーダンスZxがわかります。

もちろん最初はこういう考え方でやったのですがすぐに行き詰まりました。Zxとして抵抗を使ってもVinVoutの位相が一致しないのです。つまり純抵抗のはずなのにリアクタンス分があるような結果が出てきます。実際に測ったときは例えばこんな結果です。

  Vin = 1.1037 [Vrms]
  Vout = 1.0989 - 0.0057j [Vrms]
  Rf = 996[Ω]


から

  Zx = 1000.4 + 5.2j [Ω]

が得られました。

Zxとして使っているのは“1001B”の抵抗なので抵抗値は妥当なのですが余計な5.2j[Ω]がついています。100nFくらいのコンデンサの容量を測るのであればリアクタンスは1000Ω以上ありますから1%くらいの分解能・確度で測定できればいいと割り切れば無視してもいいような値ですがやっぱり気になります。

Rfの値はDMMでも測定してはいるのですが、このあとにオペアンプの増幅回路が何個も入るのでRfの抵抗値の精度を追求してもあんまり意味はなく最終的にはこの“1001B”の測定結果が1000Ωになるような数値をRfの抵抗値として使います。

それから上の計算では電圧を小数点以下4桁まで求めていますが、現実にこの位までの分解能を確保するのはとてもむずかしいです。結果のインピーダンスについては小数点以下の値はほとんどあてにならない数値です。確度という面から言うと1Ωの位もあやしいです。


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オペアンプのわずかな入出力抵抗や浮遊容量、インダクタンスが問題になっているわけなのでこんなモデルを考えてみました。

Eqzfzin

これだと正確な測定ができそうですが、ZfZinの具体的な値を求めるのはけっこうたいへんです。Zxをいろいろ変えて測定を行いその結果からZfZinの値を推算するのですが、精度よく値がわかっているのは上に書いた“1001B”の抵抗やそれよりちょっと確度が落ちる“3000D”や“1000D”の抵抗しかありません。時間と手間もかかります。

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ちょっと簡略化したものとしてこんなのを考えてみました。

Eqzf_3

きっとオペアンプの増幅度が“複素数”になっているに違いないという思い込みの結果です。

で、結果としては“討ち死に“でした。
しばらく前に“合わない“、“合わない“と愚痴りながら書いた記事にあるキャパシタンスやESRの値はこのモデルによるものが多いです。ESRがマイナスになったりしていました。

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そこで次にこんなのを考えてみました。

Eqrflin

上の例で出てきた“5.2j[Ω]”分のインダクタが入力に直列に存在するという安直な考え方です(測定周波数は今のところ基本1220.7Hzなのであんまり深く考えていません)

これは簡単なわりには効果があって測定結果が“それらしく”なってきました。
例えばコンデンサの直列・並列にしたときのキャパシタンスの測定値が、単体の測定値から算出した値とまあまあ一致するようになりました。

最近の記事にあるキャパシタンス・インダクタンスやESRはこのモデルで算出したものが多いです。

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回路の手直しを進め、オフセット調整を始め測定のポイント(コツ)みたいなのもわかってきて最近入出力電圧の測定精度が向上してきました。

そうすると測定結果に系統的な誤差があるのが見えてきました。やっぱりモデルが簡単すぎたようです。

(「続・コンデンサのキャパシタンスとESR測定の現状と課題 - LCRメータ方式」へ続く)

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関連

  「記事一覧(測定、電子工作、天文計算
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