未だに埒が明かないコンデンサーのESR測定
コンデンサーの測定もキャパシタンスはコンデンサの仕様として明記されていますし、手持ちのDMM(三和電気計器 PC700)でも測定できます。
一方ESRは手元に計器がありませんし、スッペックも“tanδ○○以下”みたいな表現なので測定した結果が正しいかどうか確かめるのが難しいです。
今回は二つのコンデンサのESRを測定して、その二つを直列にしたときと並列にしたときのESRを測り全体的に整合性がとれているか確認してみました。
ESRの意味については
「誤解している人が多そうなコンデンサの“ESR”の意味」
にあります。
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測定にはこれまでどおり自動平衡ブリッジを使うのですが回路をちょっと変更しました。
これまではコンデンサと直列に抵抗を入れていました。前段のオペアンプの負荷を大きくしないように純リアクタンスにしないようにとしてだったのですが、今回はコンデンサだけにしました。これで抵抗分(ESR)の分解能が上がるはずです。
そしてそのために300Ωの抵抗を前段の出力に入れてあります。これで前段から見るとちょっと容量性の抵抗負荷に見えるはずです。
こういう構成になるとかなりの電流が流れることもあるのでオペアンプも出力電流最大73mAを誇る(?)NJM4556Aに変えました(一時オペアンプの出力(帰還ループ)にエミッタフォロアを入れて電流を確保していたのですが、この方法はオペアンプの出力電圧がシフトしてしまうので電源電圧が低いときに使うのは考えものです)
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0.1μFのメタライズドポリエチレンテレフタレートフィルムコンデンサ(PET=ポリエステル/マイラー)を二個用意しそれぞれのキャパシタンス、ESRを測り、そのあと並列にした場合直列にした場合を測ってみました。
ESRの測定値[Ω] | 容量の測定値[nF] | 個別の測定値から 算出したESR [Ω] |
個別の測定値から 算出した容量 [nF] |
DMM(PC700) 測定値 |
|
PET-Y | 3.8 | 102.8 | 103.4 | ||
PET-R | 5.8 | 98.1 | 98.7 | ||
並列 | 3.0 | 202.7 | 2.4 | 201 | 201.8 |
直列 | -4.7 | 50.3 | 9.5 | 50.2 | 50.4 |
並列の方のESRはなんとなくそれらしい値になっているのですが、直列の方はめちゃくちゃです。なんと負性抵抗になってしまっています (^^;;
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さらにこれまでと同じコンデンサに抵抗(100Ω)を直列に入れる方法でも測ってみました。
ESRの測定値[Ω] | 容量の測定値[nF] | 個別の測定値から 算出したESR [Ω] |
個別の測定値から 算出した容量 [nF] |
DMM(PC700) 測定値 |
|
PET-Y | 8.7 | 103.5 | 103.4 | ||
PET-R | 9.3 | 98.8 | 98.7 | ||
並列 | 3.0 | 202.2 | 4.5 | 202.3 | 201.8 |
直列 | 32.5 | 50.7 | 18.0 | 50.7 | 50.4 |
今度は直列のときのESRの値はちゃんと正になっているのですが、かなり高めです。
その前にESRの値が上とぜんぜん違いますが (^^;;
(「続・未だに埒が明かないコンデンサーのESR測定」
「作れそうな気がしてきたPICで作るキャパシタンス/ESRメータ」へ続く)
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