続・未だに埒が明かないコンデンサーのESR測定
(作りかけの)自作LCRメータでコンデンサのキャパシタンス(静電容量)とESRを測ってみた話の続きです。
今回は0.1μFのコンデンサ2個を並列にしたものを二組用意して前記事「未だに埒が明かないコンデンサーのESR測定」と同じことをしてみました。
前回の結果と合わせて考えると
ある程度電流が流れるような条件でないと正しい(正しそうな)結果が得られない
ようにも見受けられます。でも
あんまり電流を流しすぎると正しい(正しそうな)結果が得られない
ことはもちろんです。
電流が小さいときヘンというのはオフセットの影響のようにも見えますが、回路各所のオフセットは丁寧に調整していますのでちょっと違うようような気がします。
となるとベクトル電圧計の低電圧(アナログ乗算器の入力として見れば低電流)での直線性に問題があるのではというような気もしてきました。
そう言えば以前そんな感じの結果も出ていました (^^;;
「ちょっと凝った交流電圧計(ミリバル)の作り方 - 1」
-------
コンデンサーの測定もキャパシタンスはコンデンサの仕様として明記されていますし、手持ちのDMM(三和電気計器 PC700)でも測定できます。
一方ESRは手元に計器がありませんし、スッペックも“tanδ○○以下”みたいな表現なので測定した結果が正しいかどうか確かめるのが難しいです。
今回は二つのコンデンサのESRを測定して、その二つを直列にしたときと並列にしたときのESRを測り全体的に整合性がとれているか確認してみました。
ESRの意味については
「誤解している人が多そうなコンデンサの“ESR”の意味」
にあります。
=====
測定にはこれまでどおり自動平衡ブリッジを使うのですが回路をちょっと変更しました。
これまではコンデンサと直列に抵抗を入れていました。前段のオペアンプの負荷を大きくしないように純リアクタンスにしないようにとしてだったのですが、今回はコンデンサだけにしました。これで抵抗分(ESR)の分解能が上がるはずです。
そしてそのために300Ωの抵抗を前段の出力に入れてあります。これで前段から見るとちょっと容量性の抵抗負荷に見えるはずです。
こういう構成になるとかなりの電流が流れることもあるのでオペアンプも出力電流最大73mAを誇る(?)NJM4556Aに変えました(一時オペアンプの出力(帰還ループ)にエミッタフォロアを入れて電流を確保していたのですが、この方法はオペアンプの出力電圧がシフトしてしまうので電源電圧が低いときに使うのは考えものです)
----
0.1μFのメタライズドポリエチレンテレフタレートフィルムコンデンサ(PET=ポリエステル/マイラー)とメタライズドポリプロピレンフィルムコンデンサ(PP)を並列にしたものを二組用意しそれぞれのキャパシタンス、ESRを測り、そのあと並列にした場合直列にした場合を測ってみました。
ESRの測定値[Ω] | 容量の測定値[nF] | 個別の測定値から 算出したESR [Ω] |
個別の測定値から 算出した容量 [nF] |
DMM(PC700) 測定値 | |
PET-R//PP-R | 1.3 | 197.6 | 195.6 | ||
PET-Y//PP-O | 1.8 | 205.1 | 203.6 | ||
並列 | 14.4 | 312.1 | 0.8 | 402.8 | 398.4 |
直列 | 1.0 | 99.8 | 3.1 | 100.7 | 99.8 |
“並列”は電流が流れすぎて回路が飽和してしまいました (^^;;
直列のESRはマイナスにはなっていませんがやはりかなり小さめと思われる値になってしまいました。
------
さらにこれまでと同じようにコンデンサに抵抗(100Ω)を直列に入れる方法でも測ってみました。
ESRの測定値[Ω] | 容量の測定値[nF] | 個別の測定値から 算出したESR [Ω] |
個別の測定値から 算出した容量 [nF] |
DMM(PC700) 測定値 | |
PET-Y | 2.2 | 197.0 | 195.6 | ||
PET-R | 2.0 | 204.4 | 203.0 | ||
並列 | 5.0 | 396.7 | 1.1 | 401.4 | 398.4 |
直列 | 6.7 | 100.4 | 4.2 | 100.3 | 99.8 |
今回は直列の方は(かなり開きはあるものの)それらしい値になってきました。
一方並列の方は明らかにおかしいです。
ただ上の表と比べると単独で測定したときのESRの値は「未だに埒が明かないコンデンサーのESR測定」よりばらつきが小さくなってきているようです。
(「作れそうな気がしてきたPICで作るキャパシタンス/ESRメータ」へ続く)
---------
関連
測定全般
「記事一覧(測定、電子工作、天文計算)」
「LCRメータの仕組みと作り方」
「自動平衡ブリッジの原理と回路の作り方」
「キャパシタンスメータの原理と作り方 - 続・実戦的ベクトル電圧計の数学」
「キャパシタンスメータの原理と作り方 - 実戦的ベクトル電圧計の数学」
「キャパシタンスメータを作る - ESR・誘電正接の測定精度」
「LCRメータの製作に向けて - 自動平衡ブリッジの測定精度」
「誤解している人が多そうなコンデンサの“ESR”の意味」
「コンデンサーの容量とESR・誘電正接(tan δ)を測ってみた」
「メタライズドポリエステルフィルムコンデンサの温度係数を測ってみた」
「フイルムコンデンサ・静電容量の温度特性 - PPS(ポリフェニレンスルフィド)とPET(ポリエステル)」
水晶発振器
「確度0.0005ppmの周波数測定 - GPSの1PPS出力を使った高精度周波数カウンタ」
バイナリカウンタ
「24ビットバイナリーカウンター(12STAGEリップルキャリー・バイナリー・カウンター TC4040BP+SN74HC4040AP)」
周波数カウンタ
「GPS/RTC(DS3234)の1PPS出力を利用した超高精度周波数カウンター」
正弦波発生器
「PIC16F1705のDAコンバータを使った正弦波発振器(発生器) - 改良版」
自動平衡ブリッジ
「自動平衡ブリッジの原理と回路の作り方」
ベクトル電圧計
「ベクトル電圧計の製作と調整 - 交流電圧計(ミリバル)」
“ふつう”の交流電圧計については
「交流電圧計(ミリバル)の簡単な作り方」
「一歩進んだ交流電圧計(ミリバル)の製作 - 1」
「交流電圧計(ミリバル)を作る - 高周波電圧計 - 1」
16bitADコンバータMCP3425
「PICでI2C - ADコンバーター・MCP3425の使い方」
分解能については
「MCP3425の精度を調べてみた - 16bitADコンバータの分解能」
SDカード
「PICでSPI SDカードを読み書きする」
PIC18F26K22
「PIC+SPI+I2C 自記温湿度計+気圧計+8ch電圧計+周波数カウンタ(技術要素一覧)」
「PIC+SPI+I2C 自記温湿度計+気圧計+8ch電圧計のソース - main()」
« 未だに埒が明かないコンデンサーのESR測定 | トップページ | 作れそうな気がしてきたPICで作るキャパシタンス/ESRメータ »
「趣味の実験」カテゴリの記事
- 100Ω抵抗器の端子間で発生した火花放電(沿面放電)(2018.07.18)
- Amazonで買った「400000V高電圧発生モジュール」の出力極性(2018.07.15)
- 高電圧モジュールの放電開始電圧 - 針状電極間の放電(2018.07.11)
- 高電圧モジュールの放電開始電圧 - 円筒電極と針状電極(2018.07.09)
- 放電開始電圧をパッシェンの法則から知る(2018.07.07)
この記事へのコメントは終了しました。
« 未だに埒が明かないコンデンサーのESR測定 | トップページ | 作れそうな気がしてきたPICで作るキャパシタンス/ESRメータ »
コメント