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2015年4月 9日 (木)

作れそうな気がしてきたPICで作るキャパシタンス/ESRメータ

前二回に渡ってコンデンサのESRが正しく測れないという記事を書いたのですが、だんだん正確な(と思われる)結果が得られるようになってきました。つまりESRを測るコツというのがわかってきました。

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回路を見直し、計算法を再検討しあらためてコンデンサの容量とESRを測りグラフにしてみました(測定周波数は1220.7Hz、印加電圧は0.5~1Vrms程度です)
Capesr

ポリエステル(PET)とポリプロピレン(PP)の100nFのコンデンサを2個ずつ用意しそれぞれの単体の結果、並列にしたとき、直列にしたときの容量とESRを測ります。

一回測定すると静電容量とESRが得られますのでそれを横軸:容量、縦軸:ESRのグラフにプロットしていきます。一組の測定で100nFのところに二つ、200nF(並列)と50nF(直列)のところに一つプロットされます。

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いろいろ条件を変えて測定してみたのですが、まず言えることはキャパシタンスはどんな測り方をしてもだいたい同じ値が得られるということです。そして得られた値は(この容量では±1nFの確度の)DMMで測った値とも一致していました。

このところ実験するときどのコンデンサの測定をしたのかメモするのをやめました。測定結果を見れば容量からどのコンデンサの測定結果かすぐわかるからです  (^^;;

かなり工夫したつもりですがそれでもESRは測定条件によってばらつきが出ます。特に直列にしたときはとんでもない値になるケースもあります。

この中で単体、直列、並列での測定結果の整合性がいちばんよかったのは赤い点線で結んだポリエステルの結果で、次は青い点線で結んだポリプロビレンの結果でした。


いずれも1kΩ(1001B)の抵抗を直列に入れて測定したものでした。

ESRは小さいので抵抗を直列に入れて測ると誤差が大きくなるはず、抵抗を入れない方が正確に測れるだろう、と考えていたのですが、これが勘違いでした。

なぜ抵抗を入れた方が正しく測れるのか考えてみました。

測定する前に校正をするわけですが、校正点は純抵抗1kΩのケースとインピーダンス無限大(測定回路オープン)のケースです。一方インピーダンスがゼロのところでの校正ができません。オペアンプの出力をショートしてしまうことになるからです。ゼロ点でのオフセットはいろいろなデータから推算するしかありません。

正弦波成分だけゼロにすればいいのでショートする必要はないはずなのですが、正弦波成分だけゼロにする方法というのが思いつきません。

コンデンサーを自動平衡ブリッジに入れて測るときESRがとても小さいので出力の正弦波成分はほとんどゼロになります。オフセットがはっきりしないのでこれを正確に測ることができません。

コンデンサを直列にするとESRはほぼ2倍になるので単体のときより測りやすくなるのではないか、と考えたのも誤解でした。こういうフィルムコンデンサになると誘電正接 tanδは0.01あるいはそれ以下になります。これは正弦波成分は余弦波(正弦波と90度位相が違う波形)成分より二桁小さくなります。これがESRをなかなか正確に測定できない原因です。
直列にしてESRは2倍になるのですが、直列にした結果リアクタンスも2倍になりますから正弦波成分が1/100であることはかわりませんし、リアクタンスが2倍になった結果出力電圧も1/2になりますので正弦波成分の測定はますます難しくなります。
並列にするとESRは半分になってしまいますが、リアクタンスも半分になり出力電圧は2倍になるので測りやすくなります。上のグラフでも並列にした結果はPP、PETともかたまっており測定の再現性がいいことがわかります。


一方抵抗を直列に入れると正弦波成分はかなり大きくなります。つまり測定点が校正点に近づきます。これが抵抗を入れた方がESRを正確に測れる理由のようです。もともと測定回路の分解能はかなり高く、これまでの抵抗での測定結果を見ていると校正点の近くであれば確実に1Ω以下の確度で抵抗値(正弦波成分)の増減を検出することができます。

コンデンサの測定をするのに抵抗を入れるのはなんとなくみっともないような気がしていたのですがそうでもないようです。ほんものの(?)LCRメータにも100Ωくらいの抵抗が入れてあるようです。同じ効果を狙ったものか負荷が純リアクタンスになるのを嫌ったのかはたまた短絡事故防止のためなのかわかりませんが。

上の赤い線の測定結果です。

ESRの測定値[Ω] 容量の測定値[nF] 個別の測定値から
算出したESR
[Ω]
個別の測定値から
算出した容量
[nF]
DMM(PC700)
測定値[nF]
(±1.1nF)
PET-1 14.2 98.3 98.7
PET-2 13.5 103.0 103.5
並列 7.1 201.4 6.9 201.3
直列 29.4 50.3 27.7 50.3

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