相互インダクタンスを測ってみたらヘンなことになった
二つのコイル(インダクタ)を用意し直列にしたときのインダクタンスを測り相互インダクタンスを求めてみました。
なぜこういうことをしているかというと....
今作成中のLCRメータの測定結果の妥当性を検証するのに二つのコンデンサの単体での測定値と直列、並列にしたときの測定値を比較するということをやっています。
それと同じことをコイルでやってみようというわけですが、コイルの場合はやっかいなことに相互インダクタンスというものがあります。したがってコイルを直列にしたときのインダクタンス測定というのは相互インダクタンスの測定でもあります。
コイルの中心軸を直交させたときの結果は
「直交するコイルの相互インダクタンスを測ったらやっぱりヘンかも?」
にあります。
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ブレッドボード上にコイル二つを接するように配置し自動平衡ブリッジ+ベクトル電圧計でインダクタンスを測ります。
相互インダクタンスが大きくなるように軸は平行にしてあります。一つの位置ごとに配線を変え電流の向きが同じときと反対向きのときのインダクタンスを求めます。
二つのコイルL1=100mHとL2=4.7mHは同方向に向け近づけて配置してありますから相互インダクタンスがあります(それぞれの中心軸は2、5の位置になるので7.5mm離れていることになります。ここから一つずつ離していきます)
この回路のインダクタンスを測ると配線の仕方(巻線の向きの合わせ方)によって
L=L1+L2±2M
になるはずです。
両方測って引き算すると
(L1+L2+2M) - (L1+L2+2M) = 4M
となりますので相互インダクタンスも求まります。
測定結果
横軸は二つのコイル間の距離、縦軸はインダクタンスです。
測定周波数は1220.7Hz、印加電圧は約1.1Vrmsです。
形としては予想通りのものが得られています。距離が大きくなるとコイルの接続の向きに無関係に一定の104mHあたりに収束します。実測99.5mH+4.7mHですから妥当な値です。
ところで左端、いちばん距離が小さいときの結果がヘンなような気がします。
M = ( ( L1+L2+2M ) - ( L1+L2-2M ) )
から M=3.2mH ということになりますがこれから
L1+L2 = L - 2M
を計算すると L1+ L2 = 106.8mH となって上の結果と一致しません。
上のグラフを見ると上下非対称ですからこうなるのはあたりまえですが。
なぜ一致しないのか?
L1(L2)がL2(L1)の近くにあるとL2(L1)のコアの影響でL1(L2)の自己インダクタンスが増えるから
と解釈したのですが、これで正しいのでしょうか?<==== ぜんぜん正しくないようです。また別に実験してみたらこんどは逆の現象が起きました (^^;;
実験の手順やデータの処理に間違い、勘違いがないか調べてみます。
<==== 調べたら二回目の実験の方は(製作中の)LCRメータの設定が間違っていました (^^;;
相互インダクタンス(M)と自己インダクタンスの和(L1+L2)を図に追加してみました。
二つのコイルが近づくと相互インダクタンスだけでなく自己インダクタンスの和も大きくなります。
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なお直列にしたときのESR(等価直列抵抗)は224Ωでした。L1の方のESRの実測値は200ΩちょうどでしたのでL2、4.7mHのESRは24Ωということになります。
(L1の巻線直流抵抗は190Ωくらいでした。L2はまだ測っていません)
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ほぼ相互インダクタンスがなくなった距離=25.4mmのときの位置関係を示す写真です。
平行にしていてもこれだけ離しておけば相互の影響はあんまりないということは直交して配置すればけっこう近づけてもだいじょうぶ(?)ということなんでしょう。
追記
三回目の実験結果。
実験条件は一回目とまったく同じです。次はちょっと実験条件を変えてやってみようと思っています。
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