(水中の)サーミスタの自己発熱・熱放散係数を測ってみた
前記事に書いたようにアルミ管にサーミスタを封入する主な目的は水中での温度測定のためです。今回は水中でのアルミ管に封入したNTCサーミスタの自己発熱を測ってみました。
熱抵抗が小さくなるようにアルミ管に封入すれば「(アルミ管入り)サーミスタの自己発熱・熱放散係数を測ってみた」にある通り自己発熱も小さくなります。これを水中に入れるわけですから自己発熱はもっとちいさくなるはずです。
======
測り方は前回の「サーミスタの自己発熱・熱放散係数を測ってみた」と同じでこんな回路を使います。
スイッチS1のON/OFFでサーミスタに流れる電流を変化させ自己発熱量をコントロールします。ツェナーの記号は実際には基準電圧源です。
「サーミスタや白金抵抗温度計の自己発熱の影響を補正する方法」に書いたようにこういうときは電流を√2倍にするというのが“実用向き”なのですが、電流を√2倍する仕組みを作るのがめんどうなので適当にやります。
------
電圧の変化です。
スイッチを閉じると電流が増えるのでサーミスタの端子電圧は増えます。
基準電圧からこの電圧を引いて抵抗(R2+R3またはR2のみ)の値で割ると流れている電流がわかります。電流がわかったらサーミスタの端子電圧をその電流で割ればサーミスタの抵抗値が求められます。
抵抗値がだらだらと減少していますが、これは実験に使ったコップに入れた水の温度が室温より2度ほど低かったため徐々に水温が上がっているためでしょう。
流す電流による抵抗値のわずかな変化がよくわかります。比熱の大きい水の中にあるので外部の温度の変化の影響が小さくなるためでしょう。
ということは空気中で測ったときの抵抗値の細かな動きはノイズではなく実際に温度が変化していたということのようです(アルミパイプや水がシールドとして働いているからという解釈もあると思うので検証が必要ですが)
抵抗値から温度への変換は
Th_T = 1/(log(R1/Rr) / B + 1/298.15) - 273.15;
を使います。R1が測定したサーミスタの抵抗値、Rrが基準になる抵抗値(25℃での抵抗値)、BはB定数です。RrとBはデータシートにある
Rr = 10kΩ±1%
B = 3380K±1% (25℃~50℃の値)
を使います。
念のために書いておくと上の式は近似式(というのか、二つの温度でだけ正しさが保証される式)でこれでRr、Bの誤差に応じた確度の温度が求まるというわけでもありません。とは言ってもそれなりの確度のある温度が得られますし今はそこが問題ではないのでそのまま使いますが、こういうことに興味がある方は「サーミスタで正確な温度を測るコツ - 基準抵抗(R0)、B定数、熱拡散係数、...」を参考にしていただければいいと思います。
わずかな変化なのですが安定しているので差がよくわかります。0.02度変化しているようです。グラフの左側がちょっと直線からずれているように見えますが、こういうときの温度変化は指数関数的になるのでそのせいだと思うことにします。
-------
それぞれの電流での発熱量(消費電力) P = RI^2 を求めます。
I=0.059mAのとき P=0.039[mW]
I=0.111mAのとき P=0.136[mW]
0.097mWに対して0.02℃上昇したわけですから
熱拡散係数 = 0.097/0.02 = 4.8[mW/K]
となります。データシートによれば静止した空気中では 1.5[mW/℃] ですから熱拡散係数は三倍以上になったことになります。
-----
得られた熱拡散係数から 136μWに対する温度上昇を求めると
0.14 / 4.8 = 0.03[℃]
で0.03度ということになります。
通常の温度測定では完全に無視できるくらいの変化ということになります。
ただ水中で測る目的として氷点での温度計の校正という目的があります。そういうときはわずか0.03度でもけっこう気になるものです (^^;;
なお氷点の場合はアルミ管が氷に接触している部分があります。この場合ちょっと熱放散係数はちょっと変わってくるかもしれません。もうどうでもいいレベルですが。
---------
関連
「記事一覧(測定、電子工作、天文計算)」
趣味の実験
趣味の気象観測
趣味の電子工作
PIC
「サーミスタで温度を測る - 温度と抵抗値の相互変換 - B定数について」
「サーミスタによる温度測定の精度 - 2 - B定数の温度特性」
「サーミスタで正確な温度を求める方法 - 抵抗値-温度変換計算の精度と誤差」
「PICで作るお手軽サーミスタ温度計 (2) - ソース付き」
「目で見るサーミスタの自己発熱 - 熱放散係数を求める」
「サーミスタ/測温抵抗体の自己発熱(熱放散係数)の測り方」
「サーミスタの自己発熱・熱放散係数を測ってみた」
「(アルミ管入り)サーミスタの自己発熱・熱放散係数を測ってみた」
「(水中の)サーミスタの自己発熱・熱放散係数を測ってみた」
「正確な温度を求めて (1)」
「氷点 - 摂氏0度の作り方」
「(趣味の)白金抵抗温度計の製作 - 準備編」
「16bitADコンバータMCP3425とPICで作る白金抵抗温度計 - 1」
「温度センサー3種の精度比較(摂氏0度~40度編)」
« (アルミ管入り)サーミスタの自己発熱・熱放散係数を測ってみた | トップページ | 恒温槽 - 温度を一定に保つアルゴリズム - 1 »
「趣味の実験」カテゴリの記事
- 100Ω抵抗器の端子間で発生した火花放電(沿面放電)(2018.07.18)
- Amazonで買った「400000V高電圧発生モジュール」の出力極性(2018.07.15)
- 高電圧モジュールの放電開始電圧 - 針状電極間の放電(2018.07.11)
- 高電圧モジュールの放電開始電圧 - 円筒電極と針状電極(2018.07.09)
- 放電開始電圧をパッシェンの法則から知る(2018.07.07)
この記事へのコメントは終了しました。
« (アルミ管入り)サーミスタの自己発熱・熱放散係数を測ってみた | トップページ | 恒温槽 - 温度を一定に保つアルゴリズム - 1 »
コメント