自己発熱を測定してわかる白金測温抵抗体の扱いにくさ
先日サーミスタの自己発熱・熱放散係数を測ったのですが今回は白金測温抵抗体です(といっても秋月に売っている白金薄膜抵抗ですが)
残念ながら確定的な結果はまだ得られていません。これからきちんとした回路を作って再度チャレンジするつもりです。
その後いろいろ調べたのですが、単に(アルミ管に封入し放熱がよくなったので)自己発熱がとても小さくて検出できなかったということでした。
“扱いにくい”と書いたのですがやっぱり測温抵抗体がいちばん安心して使えます。
「PICで作る温度計のセンサー比較(I2C/SPI温度センサ、サーミスタ、熱電対、白金測温抵抗体、pn接合など)」
「白金測温抵抗体の自己発熱(熱放散係数)を測ってみた - 1」
「白金測温抵抗体の自己発熱(熱放散係数)を測ってみた - 2」
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今回の測定対象は白金測温抵抗体単独ではなくそれをアルミ管に封入したものです。
また静止した空気中での測定です。
実際には封入するだけでなく熱抵抗を下げるため金属片をいっしょに入れるなどしてあります。それからリード線が2本しか出ていませんが、これはテスト的に作ったときの写真でして、封入するときは通電用、測定用にリード線は二本ずつはんだづけしてあります。
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できるだけ手軽ということでこんな回路を作ります。でもお手軽すぎました (^^;;
電圧計への接続は抵抗にできるだけ近いところにします(==> 四線式)
まずS2を右側にして100Ω(1000B)の個人的標準抵抗に接続します。もちろん実際は100Ωピッタリではないでしょうが、ここでは100Ωということにします。この抵抗はBつまり±0.1%=±1000ppmです。白金測温抵抗体の温度係数は4000ppm/Kくらいなので測定した結果には±0.25℃の影響がありますが今回は温度を測定することではなく自己発熱を測定するだけなので気にしないことにします。
次にS1をR3、R4と切り替えてR2の端子電圧Voを測りR3、R4の抵抗値を求めます。
端子電圧は16bitADCであるMCP3425を使いPGA=8(±0.256VFS)にして測ります。
R = (V1 - Vo ) / (Vo/R2)
だいたいこういうのは頭で考えるほどうまくは行かないのですがいろいろやって
R3 = 2673.0[Ω]
R4 = 1780.1[Ω]
ということにしました。ここは0.1Ωまで測定することが必須になります。このくらいの抵抗値で0.1Ω違うと自己発熱の測定結果が0.02℃違ってきます。
それからV1は今回は2.5Vの基準電圧源を使っています。このV1の電圧はR3、R4がR1に対して比較的大きいので自己発熱の測定だと多少違っても問題ありません。温度測定であればこの電圧が1mVの違えば結果には0.1℃の影響があります。
もっともスイッチS1の位置によってV1の電圧が変動するようなことになると1mV変動するだけでもすべてがぶち壊しになります。
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準備ができたので自己発熱の影響を調べます。
スイッチS2を白金薄膜抵抗の方に切り替えスイッチS1をR3、R4に切り替えたときの白金薄膜抵抗の端子電圧V3、V4を測定します。
それぞれの流れる電流I3、I4を計算します。電流は以下の計算と熱放散係数を求めるとき必要です。
I3 = (V1-V3) / R3
I4 = (V1-V4) / R4
次に白金薄膜抵抗のそれぞれのときの抵抗値Rpt3、Ppt4を求めます。
Rpt3 = V3 / I3
Rpt4 = V4 / I4
これでそれぞれの温度Tpt3、Tpt4が求まります。
Tpt3 = -0.39083+SQRT(0.39083^2+4*0.00005775*(100-Rpt3))/2/-0.00005775
Tpt3 = -0.39083+SQRT(0.39083^2+4*0.00005775*(100-Rpt3))/2/-0.00005775
白金測温抵抗体は温度に対する抵抗値が(0℃以上であれば)二次式で与えられていますので抵抗値から温度を求めるときは二次方程式を解きます。
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結果はこうなりました。
自己発熱がどのくらいあるのかよくわかりません (^^;;
電流を増やした直後0.06℃程度温度が上昇しているケースが多いです(=マークしたところ)
これが自己発熱のように見えなくもありません。でも、だったら電流を減らした直後は温度が下がる様子が見えるはず、と思えなくもありません。
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参考
「白金抵抗温度計の校正とその使い方 - JCSS:計量法認定」
「JEMIC 計測サークルニュースVol.26, No.2 ~ 4 連載(1997) - 浜田登喜夫 - 白金抵抗温度計の校正とその使い方」
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