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2015年5月 5日 (火)

コルピッツ発振回路の発振条件 - LCだけでは決まらない発振周波数(2)

続きを書くような素振りを見せながら1ヶ月以上放置してしまった「コルピッツ発振回路の発振条件 - LCだけでは決まらない発振周波数」の続きです。

前回はインダクタの等価直列抵抗が発振周波数にどのような影響を及ぼすか調べましたので今回はコンデンサの等価直列抵抗(ESR)の影響について調べます。またこの結果が正しいのか間違っているのか確かめたいという方のためにExcelファイルを用意しました。

それからこういうのはLTspiceの領分のように思えますがなぜ使っていないのかをちょっと書いておきます。簡単に言えばLTspiceの使い方がよくわからないというだけなんですが....

以前、これから本格的にエレクトロニクスを勉強したいがLTspiceの使い方はどうやって覚えたらいいのだろう、と書かれている方がいらっしゃってびっくりしたことがあります。
基本的なことを勉強した上で現実の課題にそれを適用しようとすると面倒くさくてたまらない、だからLTspiceを使う、というのが自然な流れだと思うのですが、こうLTspiceが勢力を増してくるとはじめての方はLTspiceが使える=エレクトロニクスがわかっている、と思われてしまうようです。年寄りとしてこういう状況はちょっとまずいんじゃないだろうかと思いLTspiceの使い方を覚えるのはやめにしました (^^;;

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対象にするのはこういう回路です。

Colpits_
インダクタの等価直列抵抗RLとコンデンサの等価直列抵抗Rcがなければ(ゼロであれば)ただのコルピッツ発振回路で発振周波数は教科書どおりです。またオペアンプの増幅率=Rf/R3は1でだいじょうぶです。前回RLがあることによって発振周波数が教科書にあるものより高くなり必要な増幅度も1よりずっと大きくなることを書きました。

ではRcがあったら(ゼロでなかったら)どうなるかというとこれも発振周波数が高くなるように作用するようです。

L=1mH、C3=C4=0.1μF、R3=10MΩ、R2=1kΩという条件は同じでRL=0Ω、Rc=0、1、2、3Ωとしました。

0.1μFのコンデンサの1kHzくらいでの等価直列抵抗の実測値が「改訂版・PPS/PP/PETフィルムコンデンサの容量とESRを測ってみた」にあります。ものによって異なりますが数Ωから数十Ωと言ったところです。

上の回路の発振周波数は20kHz強です。0.1μFのコンデンサのESRはこの周波数帯では周波数に反比例するはずとおおまかに考えると大きくても数Ωと思われます。そこでRcを上のような値にしました(ここのところの文章を読んでおかしいのではないかと思われる方は誤解があると思います。中途半端な内容になってしまっていますが「誤解している人が多そうなコンデンサの“ESR”の意味」を参考にしていただければと思います)

Colpits_rc

ESRが大きくなるに連れて発振周波数が高くなり、それにともなって増幅器に要求される増幅率も増えて行きます。3Ωで周波数が0.5%ほど高くなるのですがこれを大きいと見るか小さいと見るかは目的次第でしょう。

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この計算はこのようにExcelでやっています。
ダウンロード Colpits_01.xls (104.0K)

Colpits_excel

どういう計算をしているかは「コルピッツ発振回路の発振条件 - LCだけでは決まらない発振周波数」に書いてあるのでお手数ですがそれを参考にしていただくとしてこのExcelのシートに特有なことだけ書いておきます。

まず発振周波数は計算で求められればいいのですが私にはできなかったのでオペアンプの出力と入力の位相の差(からπを引いたもの)が0になるような周波数をソルバーで求めるという方法をとっています。つまり

  “arg(vC4)-180°”のセルをターゲットにして目標値を指定値“0“とします。
  発振周波数を変化させるセルとします。

とした上でソルバーを実行します。

それからコイル、コンデンサのリアクタンスXC、XLはESRを含めたものです(だからESRが0でないときは純虚数にはなっていません)
同様に例えばVC4はC4の端子電圧ですが、これもESRを含めて考えたC4の端子電圧であって回路上のC4のみの端子電圧ではありません。

なおこのシートはExcelで作成、実行していますがLibreOfficeなどでも動かすことができると思います。ただExcelとLibreOfficeはソルバーの実装がかなり違うようなので解を求めるためには工夫というか手間が必要になるかもしれません。

(「コルピッツ発振回路の発振条件 - LCだけでは決まらない発振周波数(3)」へ続く。
 出力に入っている“R2”の意味と発振条件に及ぼす影響について考えます)

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関連記事

  「コルピッツ発振回路の発振条件 - LCだけでは決まらない発振周波数」  

  記事一覧 (測定、電子工作、天文計算)

  「インダクタンスの測り方・まとめ
  「コンデンサ - ESR(誘電正接、tanδ、DF)とキャパシタンス(静電容量)の測定 - まとめ
    このあたりの記事がこんな“研究”始めた原因=発振周波数から計算したリアクタンスが実際と違う=です。

参考
  「
University of Pennsylvania - Practical Colpitts Oscillator Circuit
     (bachさんに教えていただきました)
  「
迷走の果て・Tiny Objects - LCR回路の伝達関数を求める
  「迷走の果て・Tiny Objects - LCR回路の伝達関数を求める(2)
  「
迷走の果て・Tiny Objects - LCR回路の伝達関数を求める(3):そろそろ限界かも・・・。
  「
迷走の果て・Tiny Objects - LCR回路の伝達関数を求める(4):これでおしまい(多分)

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趣味の実験」カテゴリの記事

コメント

こんばんは、いつも拝見しております。
LTspiceでシミュレーションしてみました、ループを切って周波数特性を求めてみましたが、同じ結果です。
エクセルでこのような計算が出来るとは思いませんでした、勉強させてもらいます。

じつは計算結果に自信が持てずLTspiceで確かめてみたかったのですが使い方がよくわからなくて.... (^^;;
これで安心して次の記事が書けます。
ありがとうございました m(._.)m

セッピーナさん、お早うございます。
 コルピッツ発振回路の続編、早速の記述、興味をもって、させていただきます。この手の計算は、とても面倒なので結果だけなら、回路シミュレータを使ったほうが、早いかもしれません。この回路は、伝達関数を求めると、sの3次関数になりますね。インダクタの抵抗や、増幅器の入力抵抗を考慮すると、かなり煩雑な式になります。でも、それにめげずに、突き進んでゆけるだけの腕力が欲しいところですね。(笑)
セッピーナさんのブログは、良い啓発になっていると思います。これからも、刺激的な、ブログを期待しています。

これ、解析的な解(?)を示せればスマートなんですが私の学力ではぜんぜん歯が立ちません (^^;;
ブログの趣旨を理解していただきありがとうございます。
記事をきっかけに能力とパワーのある若い人たちがより発展させてくれればいいなあ、みたいな気持ちで書いています。

やっぱりLTspiceの使い方を覚えた方がよさそうですね (^^;;

セッピーナさん
 コルピッツ発振回路の続編を拝見させていただきました。ExcelのシートもDLしました。Excelの関数は、殆ど知らないので、よい勉強になります。回路シミュレータは、便利な道具だと思いますが、自分で回路の数式モデルが記述できないとシミュレーションの方向性が見出せませんね。何事も基本が大切で、いざと言う時には、手計算出来る力量を若い方には期待したいですね。
 最近になって見つけたサイトのURLを示します。ご参考まで。
http://www.seas.upenn.edu/~ese319/Lecture_Notes/Lec_19_Colpitts_Osc_09.pdf

資料の所在お教えいただきありがとうございます m(._.)m
これからの記事もExcelを使ってということになりそうですが、もう少しまじめに勉強しておきたいと思います。

回路シミュレータもなかなか敷居が高そうですね (^^;;

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