精密抵抗100Ω/±0.01%の見つけ方(あるいは作り方)はあるのか?
先日の記事について別のところでこんなコメントがあるのを見つけました(以下に書く内容は“オリジナル”のコメントとはちょっと変えてあります。)
1. 100.00Ωの抵抗が欲しければ(温度係数は別として)たくさん100Ωの抵抗を集めてその中から選別すればいい。
2. 100*nΩの抵抗をn個集めてn個並列にすれば精度のいい100Ωの抵抗ができるはず。
おそらくこれを書かれた方は業界の方なのだと思います。
残念ながら素人にはどちらもムリだと思います。そのことについて書きます。
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まず1.について
100Ω/0.01%の抵抗(つまり100.00Ωの抵抗)が必要なのでそれを選別するためには少なくとも0.01%より小さい不確かさの測定器が必要です。上のコメントを書かれた方はそういう測定器をお持ちか自由に使える立場にいらっしゃるのだと思います。
私もそういう測定器を持っていれば秋葉原で店員さんに怒られながら探したりはしません。
業界の事情には疎いのですがざっと調べた結果を「精密抵抗のお値段 - 抵抗器の精度と価格の関係」に書きました。100.00Ωの抵抗を選別するために使える測定器は少なくとも20万はするようです。
私が必要とするのは100.00Ωの抵抗一本なわけでそのために20万円投資する気にはなれません。そもそもお金持ってません。100.00Ωの抵抗は千円前後で買えるのですから(じつは今日届きました)
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次に2.ついて
メーカーは100Ωの抵抗を作るのであればできるだけ100Ωぴったりになるようにつくるはず。だったら100Ωの抵抗は平均100Ωの正規分布に従うはず、という理論だと思います。
これは私も正しいと思います(ちょっと疑問もあります。そのことは補足1に書きます)
ただ100Ωぴったりになるように作ってもいろいろな要因があるためぜんぶ100Ωぴったりにならず正規分布になるわけですから、これはロット単位で見ても起こるはずです。
つまり、できるだけ多くのロットを集めその中から一本(あるいは数本)ずつ抜き出す、ことが必要になると思います。秋月の抵抗は袋入りでロットが書かれていたような気がします。これだったらロットが違うものがあつめられそうですが一袋100本入りですし、袋が違えばロットも違うということはないでしょう。
ロットが違う抵抗をたくさん集めるということは素人にはできないと思います。お金がかかるということもありますが、現実に集められても秋月さんの袋いりだと100ロット集めれば一万本になるわけでそれを使わないからと捨てるのは忍びないです。
同じロットの抵抗の平均値と標準偏差がどうなるかは調べてみたいと思います。100.00Ω±0.01Ωの抵抗を入手したのですから。
(以前20kΩの抵抗を調べたら平均が20kΩより小さかったということは記事にしたのですが、あれはあくまで私のDMMで測ったら、ということにすぎないです)
ついでに書いておくと100Ω1%ものの抵抗から0.1%の抵抗を見つけよう(作ろう)とすると(10本ではなく)100本の抵抗が必要です。いまは0.01%の抵抗が必要なのですから一万本必要ということになります。一袋100本だとすると少なくとも一万袋100万本の抵抗を買ってこないと100Ω1%の抵抗から0.01%の抵抗は作れないということになります。
まあ1000ロットから10本ずつでもいいとは思いますが。
1%ものから0.01%を探そう(作ろう)とするから10000本必要です。0.1%から0.01%を作ろうとすれば100本あればいいですから手間としてはこちらの方が楽です。
でも0.1%ものの抵抗は1本のお値段が1%とはぜんぜん違います。1%ものの100倍以下のお値段だったらもとはとれるのですがロットの違うものを探すというのが難しそうです。
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補足1
いっぱい集めれば平均100Ωになるはず、という考え方にはもう一つ勘違いがあるように思います。100Ωの抵抗製造の目標として例えば25℃で100Ωになるように作るという前提だと思いますがそれは違っていると思います。どの抵抗もどのメーカもそうなのかわかりませんが、使用可能温度全範囲において許容誤差内にあることを保証する、とした資料もありました。この場合使用可能温度範囲の抵抗値の中央値が100Ωになるように作るわけでそうなると25℃で100Ωかどうかなんてぜんぜんわからなくなります(温度係数は全温度範囲に渡って一定であるわけではありません)
補足2
温度係数のことはじつはあんまり気にしていません。私の測定環境は25℃±5℃を考えています。白金測温抵抗体の抵抗値を測るときの分解能を考えると最悪温度係数が10ppm/Kが条件なのですが、これは一本150円で売っている千石電商さんの0.1%ものの抵抗だと(スペック値ではなく実測値で)余裕で(一桁)クリアしています。秋月電子通商さんで売っている100本300円の1%の金属皮膜抵抗でも(これも実測値では)ギリギリ使えます我慢すれば使えないこともない感じです(「金属皮膜抵抗と炭素皮膜抵抗の温度係数を測ってみた - まとめ」)
ちなみに今日届いた100.00Ωの抵抗は温度係数のスペックは±2.5ppmなのですが、メーカーの資料を見る限り実際にはそこまでなくさらに25度近辺に限ればもっとずっと小さいようです(25℃あたりで温度係数が正負逆転するように、つまりゼロになるように作ってあるようです)
届いたらまず温度係数を測ろうと待ち構えていたのですがすでに戦意を喪失しています (^^;;
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「JEMIC 計測サークルニュースVol.26, No.2 ~ 4 連載(1997) - 浜田登喜夫 - 白金抵抗温度計の校正とその使い方」
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