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2015年5月27日 (水)

100Ω±0.1%の精密抵抗の抵抗値を測ってみた - 定電流回路と20.6bitADコンバータMCP3553を使う

これまで我が家の実験室(?)で基準となる抵抗として1000Bつまり100.0Ω±0.1%のものなどを使っていました。これでも一本150円するというかなり高価(?)なものなのですが、今回清水の舞台から飛び降りる(?)つもりでさらに精度の高い±0.01%の抵抗(以下100R00と書きます)を購入しました。
確度が10倍ですからとうぜんお値段も10倍でした (^^;;

これを使うことによって白金測温抵抗体の抵抗値を高い確度で測定することが可能になります。つまり測温抵抗体を校正なしで使ってもそこそこの確度の温度(Class 1/3B、25℃で±0.15℃程度)が得られるようになります。

そこで予備的な確認のためこれを基準にこれまで使っていた1000Bの抵抗の抵抗値を測定してみました。

なお以下で温度特性、温度係数については考えていませんが、これは温度の影響はないと判断したためです。
1000Bの抵抗はスペック的には50ppm/Kとふつうの金属皮膜抵抗なみの温度係数なのですが実際に25℃近辺の温度係数を測ってみたら1ppm/K程度でした。一方100R00の方はスペック的にも2.5ppm/Kと小さく、さらに資料を見ると25℃付近で温度係数の正負が逆転するように作ってあるためもっとずっと小さいようです(そのうち実際に測定してみるつもりはあるのですが、たぶん検出限界以下・測定不能で終わりそうです)

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実験には「思わぬところで見つけた負性抵抗 - 定電流回路(バイラテラル回路)」で作った定電流回路を用います。これは実際にはこのように作りました。
(詳細は「サーミスタ/白金測温抵抗体/pn接合による温度測定のための定電流電源」にあります)
Imgp96001000

回路の左側2/3くらいは定電流回路です。HのターミナルブロックあるいはNのピンソケットに測定対象物を接続します。どちらを測定するかはKとLのスライドスイッチで切り替えます。NのソケットやK,Lのスイッチがちゃちいと思われるかもしれませんが四線式になっており見かけよりずっとしっかり測れます。
またADコンバータは16bitMCP3425ではなく22(20.6)bitMCP3553を使い分解能をあげてあります。

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最初にHに100R00、Nに1000Bを接続して交互に測定し、次にHに1000B、Nに100R00を接続して交互に測定します。三回目は最初と同じ方法で測定します。
1000b100r00

赤い点の100R00の方が青い点の1000Bより多少抵抗値が高いようです。

ただいずれもターミナルブロックHに接続したときの方がコネクタNに接続したときより電圧降下(つまり抵抗値)が高くなっています。

数MΩではなく100Ωの抵抗ですから抵抗値は(配線抵抗などで)大きくなることはあっても小さくなることはなさそうです。そう考えるとターミナルブロックHの方に問題があるのかもしれません。こちらは厳密には四線式になっていないのですがターミナルブロックで抵抗のリード線を締め付けていますし配線長もほととんどないのでだいじょうぶだろうと思っていたのですがそれが甘かったのかもしれません。

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原因を追求すべきですが、ここではNのコネクタに接続して測定したものが正しいと考えてどちらも低い電圧降下を示している方を採用することになります。そうすると

  100R00 0.9984 / 10.99[V]
  1000B  0.9954 / 10.99[V]

ということになります。100R00の抵抗値が100.00Ωですから1000Bの抵抗は99.97Ωだったという結論になります。

これまで1000Bの抵抗を基準に(100.00Ωだと考えて)今使っている測温抵抗体の氷点での抵抗値を100.02Ωとしていたのですが

  基準とした抵抗が100.00Ωではなく99.97Ωらしい
  この測定方法だとコネクタNに接続した抵抗の電圧降下は0.02%くらい低めにでる

ことを考慮すると実際の抵抗値は100.01Ωということになります。ただもう一度測ったらこの値にはならないような気もします (^^;;

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その後実装方法を見なおした上で再度測定してみました。
99.96Ωが正解のようです。
  参考
  「四線式抵抗測定用マルチプレクサ(4回路2接点スイッチ相当)
Photo


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