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2015年5月20日 (水)

ADコンバータMCP3425と計装アンプLT1167で作るK熱電対温度計 - オフセットの自動補正

熱電対の起電力を順方向、逆方向で測り、計装アンプ(インスツルメンテーションアンプ)のオフセットを測る準備ができたのでオフセットを調べてみました。

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使用するのは「オペアンプ(差動増幅器、計装アンプ)のオフセット自動調整する」の記事に書いたこの回路です。
Lt116703
コンパレータ出力のプルアップは省略してあります。

PICから送られてくる信号によって次のような測定ができます。

1. A:ON、D:ON  起電力を順方向で測定します。
2. B:ON、C:ON  起電力を逆方向で測定します。

オフセットがなければこの二つは±が逆転した電圧になり、また熱接点・冷接点の温度差がなければ両方ともゼロになるはずです。実際はオフセットがあるので温度差がなくてもゼロにはならずオフセット電圧になります。温度差があれば両者の平均がオフセット電圧になるはずです。

3. A:ON、B:ON  オフセット電圧を測ります。
4. C:ON、D:ON  これもオフセット電圧を測ります。

3.と4.は同じ電圧(オフセット電圧)になり、またこれらは1.と2.の平均になるはずです。

温度が比較的一定している夜熱接点と冷接点を熱的に結合した上で測定を行います。
Lt1167offset01

起電力を順方向に測った赤い点と逆方向に測った緑色の点はだいたい一致しています。熱接点と冷接点を熱的に結合していますのでこうなるのはあたりまえなのですが、ゼロにはなっておらずオフセットがあることを示しています。オフセットは前半はだいたい4μVですが室温が下がった後半は3μVあたりに落ち着きます。

一方オフセットのうち一方のオフセット2(空色)は前半4μV、後半3μVと起電力の測定から算出したオフセットと一致しています。これは予想したとおりです。

もう一方のオフセット1(紫色)は前半5μV、後半4μVとちょっと違った値を示しています。不思議なのですが今のところ理由はわかりません。
じつはアナログスイッチのON/OFFのパターンが間違っていた、ということでなければいいのですが.....

アナログ・スイッチのON抵抗にばらつきがあり計装アンプのバイアス電流が影響しているのかもしれません(ほとんど根拠のない話です)

なお差は1μVありますが、これは温度で言えば0.025℃くらいに相当します。そう考えると目くじらを立てるほどのことでもないとも思えます。

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ひとまず

  A:ON、B:ONでオフセット測定、A:ON、D:ONで起電力を測定する。
  起電力からオフセット電圧を引く

というやり方で行こうかと思います。

それから室温が変化したとき測定値がちょっと乱れているようです。測定部は外部の温度が変化したときその影響を緩和するように断熱材などでくるんでおいた方がよさそうです。

また室温2℃の変化でオフセットは1μVくらい変化しています。0.5μV/Kの温度係数はデータシート(典型値0.3μV/K)から見るとまあ妥当なところだと思います。

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Lt1167offset02

オフセット2で順方向の電圧(赤)と逆方向の電圧(青)を補正した結果です。
前半と後半の室温が落ち着いてからの電圧はほぼ0Vになっておりオフセットの補正が可能なことを意味しています。
温度が急激に変化するときのオフセット調整がうまくいっていないようですが、これはLT1167を載せている基板上で温度差が生じてしまいそこで熱起電力の不一致が発生したためではないかと思います。ここは回路とか補正方法ではなく基板上の配置や基板のカバーで解決できると思います(赤と緑が離れてしまう測定開始時と温度急変時の直後の動きは熱伝導の不均衡で実際に二つのセンサーで温度差が発生したものだと思われます)

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関連

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参考

岩手大学農学部 岡田益己 - 温度の正しい測り方(3)熱電対の作り方・使い方
    この論文は熱電対を扱う上で参考になると思います。


アナログ・デバイセズ - 熱電対温度計測に関する不明瞭な部分の理解

株式会社東京熱学 - 2-3 熱電対の許容差

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