PICとMCP3425で作るK熱電対温度計 - やっぱり計装アンプLT1167を使う
先日計装アンプ(インスツルメンテーションアンプ)LT1167の調子が悪いのでOPA277PAを使うと書いたばっかりなんですが、やっぱりLT1167を使うことにしました。
あきらめきれずにいろいろ触っていたらノイズ(ゆらぎ?)を1/10程度に減らすことができました。現在のノイズレベルは温度に換算すると0.01℃相当くらいになっています。これでもまだノイズがあると言えばあるのですが私の技術力ではもう限界です。
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データシートにあった入力側のRFI対策ははずしました。前回の記事「熱電対による温度測定の課題 - K型+インスツルメンテーション(計装)アンプ編」を書いた時点では効果があったのですがその後ノイズ対策が進むに連れてかえって邪魔になってきたためです。単に作り方が悪い(シールドをちゃんとしていない等)思うのですが....
そのかわり出力側にCRの簡単なローパスフィルターを入れました。回路図的にはこれだけなんですが、部品の配置や電源などはかなり見直しました。
それから「PICとMCP3425で作るK熱電対温度計 - OPA277PAでプリアンプを作る」ではスライドスイッチでやっていた極性の切り替えをアナログ・スイッチで行うようにしました。
回路(の近くに)に手を触れないのが(熱的にも電気的にも)いちばんだと思ったからです。
今「PIC+SPI+I2C 自記温湿度計+気圧計+8ch電圧計+周波数カウンタ(技術要素一覧)」で作った“装置”を使っているのですが、これにはマルチプレクサをコントロールするための信号が2ビット出力されておりこれを流用してアナログ・スイッチをコントロールします。
PICの出力をいったんコンパレータでレベル変換し正負の信号を作ってアナログスイッチを駆動します。
LT1167とコンパレータは±3Vで動作しているのですがアナログ・スイッチの電源はVDDを+3V、VSSを-3Vとしてあります。だからPICの出力を直接あるいはインバータを通さずコンパレータを使っています。
なお±3Vは「RS232CインターフェスIC/MAX232Nで作るオペアンプ用正負電源 - 定電圧機能つき」で作ったものです。このあといろいろ回路を追加していくのですが健気に一定の電圧を出し続けています。
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実際に測定した結果です。
冷接点と熱接点はほぼ同じ場所においてありますが、冷接点のレスポンスがちょっと悪くなるようにしてあります。
PICの信号で測定のたびに極性を逆転しながら熱起電力を測定しています。
赤い線が通常の接続、緑の線が極性を逆にした接続です。
こうやると赤い線と緑の線の平均がオフセットになるはずです。これを紫の線で示してあります(同時に測定しているわけではないので実際には前後の時間の純極性の電圧の平均と純極性の電圧との平均をとるというやり方をしています。だから温度が急激に変化するときオフセット電圧のグラフは乱れます。このグラフの範囲外にあるデータもあります)
ほとんど温度が変化していないのに熱起電力がだんだん大きくなっている(4μV、0.1℃相当)こと、気温が高くなっているのにレスポンスのいいはずの熱接点の温度が下がっていることが不思議で理由を調べる必要があるのですが、この図で見る限りオフセットは約1μVでほとんど変化していないことがわかります。1μVというのは0.025℃に相当しますからこのグラフに関してはもうどうでもいいレベルなのですが、LT1167のオフセットの温度係数は0.3μV/Kくらいあったと思うので実際に使うとき無視するのはまずそうです。
これからいろんなケースで測定してみてちゃんと熱起電力が測れているものか確かめて行きたいと思っています。
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上の測定のあと窓を開けて室温をさげ、また窓を閉めたときの熱起電力の変化です。
これは次のように解釈するとうまく説明できます。
室温が下がるとレスポンスのいい熱接点の温度が下がります。熱接点と冷接点の温度差は2.5℃前後になっています。そのあと室温が上がってくるとまた熱接点と冷接点の温度差は小さくなっていくのですが、室温が下がったときレスポンスの悪い冷接点もいくぶんかは温度が下がっているわけでレスポンスのいい熱接点の方が温度が高くなるという現象が起きているのでしょう。
この後熱接点と冷接点の温度が一致して起電力がゼロになるというところまで確かめなければいけなかったのですが.....
上のグラフは最初のグラフよりスケールが小さいのでオフセットだけグラフにしてみます。二つのグラフは時間軸も違っています。最初のグラフは8時間ほどの間の現象、上のグラフは10分くらいにあいだに起きたことです。このグラフに室温がないのは今使っているプログラムは間隔の短い測定の場合温度は測らないようになっているためです。ちょっとプログラムを手直しすればいいだけののですが億劫で (^^;;
室温が下がったためオフセットも変化しているようです。ただこの部分は温度変化が大きいので上に書いたオフセットの計算法ではうまくオフセットが算出できていない可能性もあります。
オフセットの直接測定もやってみるつもりです(というかやったのですが記事にはまだしていないだけですが)
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参考
「岩手大学農学部 岡田益己 - 温度の正しい測り方(3)熱電対の作り方・使い方」
この論文は熱電対を扱う上で参考になると思います。
「アナログ・デバイセズ - 熱電対温度計測に関する不明瞭な部分の理解」
「株式会社東京熱学 - 2-3 熱電対の許容差」
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