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2015年5月12日 (火)

pn接合順方向電圧(VBE)の温度係数を測ってみた(高精度版)

20℃から50℃くらいの範囲でpn接合の順方向電圧を測り温度による変化を調べてみました。ただ実際にはダイオード1N4148を使っています。
今回は順方向電圧を温度計に使えないかという視点で記事を書いています。別に電流電圧特性も調べていますので詳細な分析結果は理想係数・飽和電流が求まってから記事にしたいと思います。
なお測定方法はこれまでも書いてきたので省略します(記事の末尾にあるリンクから参照できるようにしておきました)

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さっそく結果です。順方向電流は115μAで一定(のつもり)です。
_01

黒(灰色)の線が温度でその他の色が順方向電圧です。温度の上昇、下降を二回繰り返しています。二回目は段差がありますが、これは上昇の速度を抑えるためヒータのパワーを切り替えて行ったためです。

温度が上昇すると順方向電圧が低下するという傾向がきれいにとらえられています。

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今度はこのデータから温度と順方向電圧の関係をグラフにしてみます。
_02

上でパワーを徐々に高くして行ったのは温度の上昇速度が大きいと温度ムラ(温度計と測定対象の温度差)が発生し温度上昇時と下降時の結果がずれることが気になったからなのですがその心配はなかったようです。上昇、下降二回ずつの結果が完全に一本にかさなっています。実験の再現性はとてもいいです。

この範囲の温度係数は-2.4mV/Kとなっています。-2.1mVでないことが気になる方がいらっしゃるかもしれませんが、あれは“典型値”であって実験条件によってはかなり異なった値になりますので問題ないと思います。このあたりは次回の記事で詳しく書けると思います。

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30℃から32℃のところを拡大してみます。
_03

このくらいに拡大するとさすがに完全に一致しているとは言えなくなります。でも電圧に対する温度と見るとだいたい±0.04℃におさまっているようです。

赤い点、緑の点等それぞれのケースで考えると直線性はよく、系統誤差が発生しているようです。上に書いた上昇・下降時の温度分布の違いや順方向電流のドリフトが原因として考えられます。原因はこれから追求していくわけですが、これを見る限り系統誤差を取り除き校正がちゃんとできれば±0.1℃近い不確かさ、0.01℃の分解能も実現できないこともなさそうです。
もっとも現在実現できている温度測定の不確かさはこの温度帯では±0.2℃でしかないのですが....

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関連

  「測定対象別記事一覧(測定、電子工作、天文計算)
    温度、気圧をはじめいろんな物理量の測定方法について

  「過去記事の一覧(測定、電子工作、天文計算)

これまでの測定結果(雑です)
  「pn接合順方向電圧(VBE)の温度係数を測ってみた(高精度版)」  (この記事)
  「pn接合の順方向電圧(VBE)と温度の関係 -1
  「pn接合の順方向電圧(VBE)と温度の関係 -2 測定方法
 
電圧=電流の関係については
  「ログアンプ - ベース電流(IB)とベース電圧(VBE)の関係
  「pn接合の順方向電圧(VBE)と電流(IB)の関係
  「pn接合順方向電圧(VBE)の理想係数や温度特性の測定装置
  「pn接合の理想係数を測る

その他
  「続々・コレクタ電圧(ICE)とコレクタ電流(IC)の関係を調べてみた
  「ベース電流(IB)とベース電圧(VBE)、コレクタ電流(IC)の関係を調べてみた

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測定方法

一定の割合で変化する電圧(参照電圧)を作りこれを定電流回路(電圧電流変換回路)に与えて電流源を作ります。これをダイオードに流し端子電圧をADコンバータで測定、表示しSDカードに保存します(回路的には「定電流回路(バイラテラル回路)の出力抵抗を測ってみたけれど....」にあるものと同じです。RLのかわりにダイオードを使います。
ダイオードは(水中での測定を考え)アルミパイプに収め防水処理してあります。これを白金薄膜抵抗とともに断熱容器の中にあるアルミブロックに載せます。アルミブロックを抵抗器で作ったヒータで温めます。

定電流回路(電圧電流変換回路)について
  「思わぬところで見つけた負性抵抗 - 定電流回路(バイラテラル回路)

定電流回路(電圧電流変換回路)の参照電圧の作り方について
  「ログアンプ - ベース電流(IB)とベース電圧(VBE)の関係」の回路図

順方向電圧の測定
  「PICでI2C - ADコンバーター・MCP3425の使い方

参照電圧の測定
  「PIC18F26K22でSPI - 8ch/ADコンバータ MCP3208の使い方(ソース付き)

定電流源の出力電流を測定するための抵抗については
  「精密抵抗のお値段 - 抵抗器の精度と価格の関係
  「金属皮膜抵抗と炭素皮膜抵抗の温度係数を測ってみた - まとめ
     (紫帯あるいは緑帯の抵抗を使っています)

“測定装置”について
  「PIC+SPI+I2C 自記温湿度計+気圧計+8ch電圧計+周波数カウンタ(技術要素一覧)
  「PIC+SPI+I2C 自記温湿度計+気圧計+8ch電圧計のソース - main()

測定した結果を表示することについて(いずれもI2Cデバイスです)
  「I2Cのソース - PIC12F1822/16F1705/16F1938/18F26K22 - LCD(ACM1602)を例にして
  「I2C薄型液晶ディスプレイ(LCD)・AQM1602XAの使い方

測定した結果を保存することについて
  「PICでSPI SDカードを読み書きする

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