サーミスタよりずっと自己発熱が小さかった(=熱放散係数が大きかった)白金測温抵抗体
サーミスタや白金測温抵抗体は電流を流して温度を測ります。電流を流せば電力を消費するわけでその分温度が上昇します。温度を測定したらそれから自己発熱による上昇分を差し引いて始めて正しい温度がわかるのでやっかいです。
先日自己発熱(熱放散係数)を測るために電流を変化させて温度の測定値の変化を調べました。
比較的はっきりした自己発熱による温度の上昇が見られたサーミスタに対し白金測温抵抗体(白金薄膜抵抗)は温度が上昇しているのかどうかよくわかりませんでした。
このことについて理由がはっきりしました。
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自己発熱による温度上昇は次の式で表されます。
温度の上昇分 = 発熱量 / 熱放散係数
サーミスタの場合1.5mW/くらいですので1mA流して0℃あたりで使うと0.1℃以上違ってきます。もっともサーミスタはもっとも条件がいいときでも(校正を行っていないと)±0.25℃くらいの誤差があるわけですが。
では白金測温抵抗体ではどうかというと先日は熱放散係数を書いた資料が見つからなくて実験結果と比較できなかったのですが、秋月の製品紹介のところにちゃんとありました。
最近追加されたのか私が気付かなかっただけなのかわかりません(秋月電子通商 - 超小型 白金薄膜温度センサ R0K1.232.6W.B.008(100Ω) - 参考技術資料)
それによると私の使っている“超小型 白金薄膜温度センサ R0K1.232.6W.B.008(100Ω) ”については静止空気中で4mWKになっていました。サーミスタに比べるとずいぶんと大きいです。
白金測温抵抗体はふつう100Ωであんまり抵抗値は変化しません。標準的な使い方である1mAの電流を流した場合だと1mA、100mVでだいたい0.1mWの発熱量ですから0.025℃しか変化しないことになります。
先日はアルミパイプに入れたものでやってましたからこれよりさらに熱放散係数は大きくなり温度上昇は小さかったものと思われます。これだと私の測定方法(分解能0.02℃~0.03℃)では自己発熱を検出できるわけがありません。
(熱抵抗が小さくなるようにアルミパイプに入れたようなケースだと)自己発熱は考慮しなくていい、という前回の結論で問題はないようです。
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参考
「白金抵抗温度計の校正とその使い方 - JCSS:計量法認定」
「JEMIC 計測サークルニュースVol.26, No.2 ~ 4 連載(1997) - 浜田登喜夫 - 白金抵抗温度計の校正とその使い方」
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