オペアンプ(差動増幅器、計装アンプ)のオフセット自動調整する
正確に言うと“プリアンプ付きのADコンバータのオフセットを自動調整する”です。サーミスタなどで温度を測りオフセットのドリフトを補償するという意味ではないです。測定対象の電圧を測るとともにオフセット電圧も測り測定値からオフセット電圧を引き算してしまおうという方法です。
なお“趣味”としてはオフセット自動調整もおもしろいのですが、実用的に考えると温度を固定してしまう、つまり恒温槽の方が有効なのではないかという気もします。
「恒温槽 - 温度を一定に保つアルゴリズム - 1」など参考になるのではないかと思います。これはPID制御に似た手法__条件を限定したPID制御(?)__です。温度を一定に保つという意味では有効でサーモスタット式(?)などに比べるとはるかに温度の安定性が高いはずです。オペアンプあるいはそれを載せた基板であればPIC+サーミスタ2個+抵抗器数個でできてしまうと思います。
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それから以下必要な機能をデジタル回路で作っていますが、これは手元に部品があるとかこういうやり方の方が慣れているというだけで、プログラムを書いたり書き込んだりするのが苦でなければPICなどで済ますという方法もあると思います。というかそちらの方が簡単・確実でしかも安上がりだと思います。
またPICを使うにしてもPIC16F1705などにあるCLC機能、COG(CWG)機能を使うという方法もおもしろいかもしれません。これは使ったことがないので興味がある方はきむしげさんの記事を参考にされるといいと思います。
「きむ茶工房ガレージハウス - PICの動かせ方入門はこちら - CLC機能を動作させて見ます」
「きむ茶工房ガレージハウス - PICの動かせ方入門はこちら - COG機能を動作させて見ます」
(今回は前記事に書いたように電源の使い方変則的でPIC側でアナログスイッチの制御信号を作った場合はそのあとでレベル変換が必要になります)
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前記事「PICとMCP3425で作るK熱電対温度計 - やっぱり計装アンプLT1167を使う」で熱電対とインスツルメンテーションアンプLT1167の接続部分はこうなっていました。
アナログスイッチのうちA,DをONにして順方向の電圧を測定し、BCをONにして逆方向(逆極性)の電圧を測定し、それらを平均してオフセットを求めるというやり方をしていました。
ここでA,BをONにするか、C、DをONにすればオフセット電圧が直接測定できるはずです。
わかりやすいように表にしてみます。ぜんぶで四つの状態ですのでPICのマルチプレクサコントロール用の2bitの信号を使えばどうにかなるはずです。
順方向測定 | 逆極性測定 | オフセット測定(1) | オフセット測定(2) | |
制御信号 bit 0 |
1 | 0 | 1 | 0 |
制御信号 bit 1 |
1 | 1 | 0 | 0 |
A | ON | OFF | ON | OFF |
B | OFF | ON | ON | OFF |
C | OFF | ON | OFF | ON |
D | ON | OFF | OFF | ON |
アナログ・スイッチAはON/OFF/ON/OFFですからこれはbit0とおなじ動きです。bit0の信号をそのままAに与えれば済みます。
Cはこれと逆の動きをしています。つまりbit0をインバータで反転すればOKです。
Bは制御信号が00、11のときOFF、01、10のときONとなりますのでこれはエクスクルーシブオアとおなじ動きです。
DはBを逆転したものなので上のエクスクルーシブオアの出力をインバータで反転すればいいです。
こんな回路になります。
コンパレータ出力のプルアップは省略してあります (^^;;
これで問題なく動くはずですが、ちょっと癪なことがあります。エクスクルーシブオアは4個のうち1個、インバータは6個のうち2個しか使わないことになります。
そこでインバータもエクスクルーシブオアで作ります。
これもコンパレータ出力のプルアップは省略してあります (^^;;
これはすでに作っていて快調に動いています。
それからLT1167+74HC4066+2093+74LS86+インディケータ(LEDが4個)の電源は「RS232CインターフェスIC/MAX232Nで作るオペアンプ用正負電源 - 定電圧機能つき」だけでぜんぶまかなえています。けっこう使いでがあります。
なお74LS86はこれしか手元になかったので使っているだけです。あえてこれを使う理由は何もありません。
実際にこれでオフセット電圧が測れたのか?というのを次の記事に予定しています。 は
「ADコンバータMCP3425と計装アンプLT1167で作るK熱電対温度計 - オフセット」
にあります。
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参考
「岩手大学農学部 岡田益己 - 温度の正しい測り方(3)熱電対の作り方・使い方」
この論文は熱電対を扱う上で参考になると思います。
「アナログ・デバイセズ - 熱電対温度計測に関する不明瞭な部分の理解」
「株式会社東京熱学 - 2-3 熱電対の許容差」
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