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2015年6月 2日 (火)

ケーターの可逆振り子の作り方 - 1 - 重力加速度を測る

重力加速度がほんとうに9.8m s-2なのか確かめてみようという実験です。
まず最初に思いつく方法は“もの”を落下させて落下距離と落下に要した時間から加速度を求める方法です。

重力加速度を測ってみようと思ったきっかけは「惑さんのワクワク天体観察日記 - 重力を測る」の記事なんですが、惑さんの記事もこの方法を採っています。

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今回は“能書き”だけです。実際に重力加速度を測って例は下記にあります。
  「ケーターの可逆振り子の実験例 - 重力加速度を測る

ケーターの振り子を自分で作ろうという方に役にたつかもしれない記事。
  「ケーターの可逆振り子の設計法 - 重力加速度を測る

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理科年表には“日本各地の重力加速度実測値”という項目があり例えば

  羽田(高さ -2m)  979759.62mGal

という有効数字8桁の数値が載っています。どうやって測ったらこんな精度の高い数値が求まるのだろうと疑問に思うのですが、これも“物体の自由落下”によるもののようです。

  「国土地理院 - 絶対重力測定

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重力加速度は単位から考えて距離と時間を測定することによって得られます。だから重力加速度の測定精度は距離・長さと時間の測定精度に依存します。時間はその気になれば(=原理的には)6桁あるいはそれを上回る精度での測定が可能ですが長さの方はなかなか精度がとれません。JIS 1級のものさしだと1000mmで±0.2mmですのでこれで長さ・距離を測ったとして得られる重力加速度の精度は(原理的に言っても)4桁も難しいということになります。

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とは言っても実際にやってみると時間の測定の方がネックになります。パルスの間隔を測るのとはわけが違うのでなかなか難しいです(「重力加速度測定装置 - プロトタイプ」)

時間を精度よく測定するためには振り子を使う方法が考えられます。落下に比べ速度が小さいので測りやすいということもあるのですが、それ以上に周期運動なので複数回の往復回数の時間を測ることによって時間測定の精度を上げやすいというメリットがあります。
周波数(周期?)カウンタとか持ち出さなくてもストップウォッチで時間(周期)の測定が可能です。

ただ一方振り子の長さ(支点から重心までの距離)はなかなか測りにくい(わかりにくい)です。重心がどこにあるかよくわからない、と言った方がいいかもしれません。
精度を上げようとすると慣性モーメントを求める必要がありこれは重心の位置以上に求める(測る)のが難しいです。

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ということで自由落下も振り子もあんまりかんばしい結果が得られそうに思えませんが、じつは重力加速度の測定には“ケーターの可逆振り子”という画期的な方法があります。
これは二つの支点を持つ振り子(棒の両端に穴があってその双方を支点にできるようなものをイメージしてください)でそれぞれの支点での振り子の周期が一致するように作るとその周期と支点間の距離だけから重力加速度を求めることができます。つまり重心の位置がどこにあろうと慣性モーメントがいくらだろうか測定にはまったく無関係になります。

“それぞれの支点での振り子の周期が一致するように作る(調整する)”のが難しそうですが、実際実験するときは周期が一致するはずのところの両側で測定して周期が一致したときの周期を補間で求める方法をとります。だから完全に周期が一致するように調整する必要はありません。

この方法は学生の実験教材としても使われています。

  「東京大学 久我隆弘教授 - ケーターの可逆振り子(重力加速度測定)
    原理から実験の方法、測定結果の扱い方まで詳しく記されています。
    動画も見つけたのですが、どこにあったか今思いつかないので後日追記します。
    東京大学情報基盤センター - 基礎物理学実験 - 予習用の動画ファイル

また

こひつじの家 - 想い出の名古屋工業大学 - 物理学実験 - 参考資料 - 実験3 重力加速度

に可逆振り子の実験でどの程度の精度の重力加速度が得られるものかが書かれています。

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ながながと前書きを書いてしまい具体的な作り方(設計法?)は次の記事以降になりますが、どんなものを作って測ったかだけ写真を載せておきます。
Imgp96321000

長さが30cm程度の穴のあいた鉄のプレートを使っています。ほんとはもっと大きい方がいいとは思いますが、大きいと面倒くさくなって最後まで行き着かないと思うので... (^^;;
作り方自体は大きさに関係ないものを書くつもりです。

右から二番目のボルトの先端にあるナットをつけたりはずしたりして重心の位置を調整します。ケーターの可逆振り子は重心の位置を知る必要はないのですが、重心の位置を調整する必要はあります

このボルトとその取付位置には大きな意味があります。
  「ケーターの可逆振り子の間違った作り方 - 重力加速度の測定

実験方法の比較

アマチュアの実験としての話です。一部想像で書いています。

実験方法 測定対象 検討課題(結果に影響を与えそうな主な要素)
自由落下 落下距離
落下時間
時間を測るのが難しそう
--------
空気抵抗
(形と重さに注意すれば実質問題にはならないはず。
仮に影響があっても運動方程式が違うので検出可能?)
浮力
(比重に注意すれば実質問題にならないはず。
空気抵抗と違って実験結果から影響を検出することはできないが、球などであれば影響を計算で求めることができる)
斜面を転がる球、円筒 落下距離
落下時間
慣性モーメント
いろいろ考えるのがめんどうそう
--------
空気抵抗(自由落下より影響が小さい)
浮力(自由落下より影響が大きい)
摩擦(転がっているわけだから摩擦はある。摩擦がなければすべり落ちる)
単振子

支点から重心までの距離
慣性モーメント
全質量
周期

測定対象が多く、しかも測りづらい。
--------
空気抵抗
浮力
支点の摩擦
可逆振子 支点間の距離
周期
いちばん測定しやすそう
--------
空気抵抗
浮力
支点の摩擦

よく理解しないでやるとハマります。

(「ケーターの可逆振り子の実験例 - 重力加速度を測る」に続く)
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関連

  「記事一覧(測定、電子工作、天文計算

    重力加速度測定
    「ケーターの可逆振り子の作り方 - 1 - 重力加速度を測る」 (この記事)
    「ケーターの可逆振り子の間違った作り方 - 重力加速度の測定
    「ケーターの可逆振り子の実験例 - 重力加速度を測る
    「ケーターの可逆振り子の設計法 - 重力加速度を測る


    「重力加速度測定装置 - プロトタイプ

    時刻・時間測定
    「時刻標準について

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