補償導線で熱電対を作る - コンスタンタンの電気抵抗(体積抵抗率)
熱電対は秋月で扱っていて(一つを除けば)そんなに高いものでもありません。ただ使い方・設置方法にあまり自由度がなくもう少しフレキシブルな使い方ができるものがほしくなります。
熱電対素線も売っていますしこれも単価はたいしたことはないのですが“一巻き”単位だったりします。
割高になりますがメーター売りを買おうかと思っていたら先日居酒屋ガレージ店主(JH3DBO)さんから補償導線をいただきました。現物を見ると銅・コンスタンタンのようです。そこでこれで熱電対を作ってみることにしました。
ちゃんと使えてます => 「はんだの融点(共晶点)で熱電対を校正できるか? - 1」
なお、銅コンスタンタンだからT型熱電対、ということになるのかよくわかりません。規準起電力を見るとK型(クロメル・アルメル)とT型(銅・コンスタンタン)の起電力はみわけることが難しいほど似ているのですが、銅コンスタンタンの補償導線を使っていると思われる秋月の“K型熱電対 ステンレス管タイプ”ではクロメルアルメル熱電対と銅コンスタンタン補償導線の起電力は明らかに違っていました。
熱電対に使うコンスタンタンと補償導線に使うコンスタンタンは組成が違うのかもしれませんし、T型熱電対はK型以上に規準起電力があてにならないのかもしれません。今のところこれについてはなんとも言えません。
コンスタンタンの組成についてはWikipediaにはCu:55%、Ni:45%とあります。一方理科年表の熱伝導率の表にはCu:60%とあります。いろいろな組成があるのかもしれません。
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これが居酒屋ガレージ店主(JH3DBO)さんからいただいた補償導線(の先端部分)です。
外皮が青っぽいのでK型熱電対の補償導線と思われます。端子部分に“CA+”とあるのはクロメル・アルメルのプラス極に相当することを言っているのでしょう。“3M”がちょっと気になりますがおそらくもとの長さが3mだったのでしょう。
写真を撮り忘れたのですが、上の“CA+”の方の電線は“銅色”をしていました。おそらく銅なんでしょう。K型熱電対の補償導線でプラス極が銅のものとなると必然的にマイナス極はコンスタンタンということになります。
この銅線は約0.65mmのものを7本より合わせてあります。さすがにこの太さの銅線を温度測定には使いたくないのでコンスタンタンの方だけ利用することにします。
コンスタンタンも同じ撚り線なのですが、理科年表によればコンスタンタンは熱伝導率(Cu:60%、0℃)が銅の1/18しかないので0.65mm径としても熱抵抗は0.15mm径の銅線と同じです。これだったら温度測定にも問題なく使えそうです。
そこでコンスタンタンを取り出すことにします。
左側の外側の被覆はナイフで切れ目いれると簡単にとれます。中央のそれぞれの電線の被覆はこれも“蛇の抜け殻”的に簡単にとれました。問題は右側のそれぞれの電線の内側の被覆です。これはテープ状のものを二重に向きを変えて巻きつけてあるようです。
こういうのをお仕事にしている方がどうやって被覆を剥がしているのかわからないので、手で少しほどいたり、水につけてほどいたり、さらにゴシゴシやったりして剥がしました。この最後の“工程”がけっこう時間がかかりました。
撚り線から一本だけ取り出したコンスタンタンのはずの電線です。
コンスタンタンだとは思うのですが念のために電気抵抗(体積抵抗率)を測ってみます。
60cmの抵抗値を測ったら0.94Ωでした。線径を0.65mmとすると体積抵抗率は5.2e-17Ωmとなります。理科年表でこの体積抵抗率に近い金属を探すといちばん近いのがコンスタンタンで49e-18Ωm、二番目がマンガニンの41.5e-18Ωm、三番目がリチウムとジルコニウムの40e-18Ωmでした(注)
これからするとこの電線はコンスタンタンに間違いないでしょう。
コンスタンタンの組成と電気抵抗がどう関係するかもよくわかりませんが....
注 もう一度調べたらこんなのもありましたので念のために書いておきます。
鉄(鋳) 57~114e-18Ωm 鉄(純)、鉄(鋼)はもっとずっと小さいです。
ニッケリン 27~45e-18Ωm 洋銀のことらしいです(コトバンク/大辞林)
プラチノイド 34~41e-18Ωm Almaany.comによれば銅、亜鉛、ニッケル(、タングステン)
こうやって見ると銅・ニッケル系の合金が多いです。コンスタンタンもそうですが。
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おまけ 電気抵抗を測定しているときの記録
100Ωの抵抗とコンスタンタンに交互に電流を流し電圧降下を測りそれから抵抗値を算出します。測定途中に電流を流すのをやめオフセット(ADコンバータのバイアス電流の影響)がないか確かめます。
Aで示したところはコンスタンタンの方でオフセットをチェックしているところですが、この抵抗値だったほとんどゼロのはずが10μVくらいあり、熱起電力が発生していることがわかります。この熱起電力をT型の規準起電力で考えると電線の両端に0.25℃の温度差があるということになります。
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関連
「記事一覧(測定、電子工作、天文計算)」
「PICで作る温度計のセンサー比較」
「正確な温度を求めて (1)」
「氷点 - 摂氏0度の作り方」
「補償導線で熱電対を作る - コンスタンタンの電気抵抗(体積抵抗率)」 (この記事)
「あんまり違いがないK型熱電対とT型熱電対の熱起電力」
「K型熱電対プローブ(秋月電子通商)による温度測定」
「K型熱電対 ステンレス管タイプ(秋月電子通商)による温度測定」
「測温抵抗体と熱電対とサーミスタの温度測定値を比較してみた」
「“K型熱電対 ステンレス管タイプ”(秋月電子通商)に関するディベート」
「K型熱電対 ステンレス管タイプ(秋月電子通商)の誤差を考える」
「じつはT型のような気がする秋月のK型熱電対」 <== 事実誤認記事
「熱電対素線(タイプK、クロメル=アルメル)をハンダ付けしてみた」 <== 事実誤認記事
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「熱電対起電力を直接測定できる22bit(20.6bit)ADコンバータMCP3553」
「「PICとMCP3425で作るK熱電対温度計 - やっぱり計装アンプLT1167を使う」」
「PICとMCP3425で作るK熱電対温度計 - OPA277PAでプリアンプを作る」
「熱電対の起電力の近似式 - 起電力と温度の相互変換」 (-20℃~120℃編)
「熱電対の起電力の近似式 - 起電力と温度の相互変換 (250℃~1300℃編)」
参考
「学習院 - 仲山英之・石井菊次郎 - 2-1 温度測定」
「岩手大学農学部 岡田益己 - 温度の正しい測り方(3)熱電対の作り方・使い方」
「アナログ・デバイセズ - 熱電対温度計測に関する不明瞭な部分の理解」
「株式会社東京熱学 - 2-3 熱電対の許容差」
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