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2015年6月29日 (月)

サーミスタ温度測定の精度と誤差 - 製品のばらつきによる不確かさ

温度測定と言っても±0.1℃くらいの不確かさで測りたいこともあれば±1℃で十分というケースもあります。前者の場合測温抵抗体を使えばいいわけですが後者の場合サーミスタあるいは熱電対で済ませるられるかというとそうでもないです。

サーミスタの場合ふつう25℃での抵抗値と(例えば50℃での)B定数が定義されその許容誤差もわかります。だから温度に換算すれば(NCP18XH103F03RBの場合)25℃で±0.3℃の許容誤差(これは25℃での抵抗値の許容誤差によります)があるのはわかりますし、50℃で±0.6℃の許容誤差(これは25℃での抵抗値の許容誤差と50℃でのB定数の許容誤差によります)があるのもわかります。

ところが25℃での抵抗値と50℃でのB定数の許容誤差がわかっても40℃での許容誤差や0℃での許容誤差はさっぱりわかりません。この“許容誤差(不確かさ)がはっきりしない”というのがサーミスタでの温度測定に二の足を踏んでしまう理由でした(測温抵抗体だったら許容誤差は温度の関数として明示されています)

サーミスタの抵抗値に見る村田製作所の驚くべき温度測定能力」を書いたときあまりに話がヘンなのでいろいろ調べたらメーカー(村田製作所)が任意の温度での許容誤差を算出できるだけの資料(後述)を公開していることに気づきました。

例えばNCP18XH103F03RBの0℃での抵抗値は「村田製作所 - NTCサーミスタ」によれば27.219kΩとなっています。この資料によればこのサーミスタの0℃での抵抗値は実際には26.6780kΩ~27.7675kΩの範囲にあることがわかります。これは(抵抗値=温度の変換プログラムをきちんと作れば0℃で±0.46℃の許容誤差での測定が可能な温度計が作れることを意味しています。

さっそく温度に対する許容誤差のグラフを作ってみました。NCP18XH103F03RB(抵抗値の許容誤差もB定数の許容誤差も±1%)の場合です。

Vs

 

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まず今回使ったデータですが「村田製作所 - サーチエンジン」で探します。“サーミスタ”を選択し、次に“NTCサーミスタ(温度検知・温度補償用)”を選択します。ここで“チップタイプ 1608サイズ”を選ぶと製品の一覧表が表示されますので“NCP18XH103F03RB”をクリックします。右側の詳細情報にいろんな資料の一覧がありますので“抵抗温度特性表”を表示すれば温度に対する抵抗値の中央値と下限、上限が得られます。

温度の抵抗値に対する感度を求めておけば抵抗値の下限、上限を温度の下限、上限に換算できます。

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上に書いたようにこれを許容誤差と考えるためには“抵抗値=温度の変換プログラムをきちんと作る”ことが条件です。例えば「サーミスタで正確な温度を求める方法 - 抵抗値-温度変換計算の精度と誤差」にある1の方法つまりB定数が温度にかかわらず一定としてしまうと例えば0℃での誤差は +0.3℃~+1.3℃とプラス側にシフトします。

またサーミスタは自己発熱があり、この影響がある場合も誤差はプラス側にシフトします。特にサーミスタを定電流で使っている場合低温側での影響が顕著です。ただこの記事で例に上げているNCP18XH103F03RBの場合は基板にハンダ付けしただけで熱放散定数はかなり大きくなりますのでこういう場合自己発熱の影響はそれほど大きくありません(「サーミスタ温度測定の精度と誤差 - 熱放散定数と自己加熱」参照)

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タイトルは“不確かさ”としながら記事では“許容誤差”という表現を使っています。“不確かさ”と“許容誤差”の関係がよくわからないのですが、“許容誤差“を“その範囲内にあることは保証されるが範囲内での出現率は一定している”つまり一様分布と解釈すると許容誤差を√3で割ったものが標準不確かさ、それを2倍したものが拡張不確かさ(k=2)ということになります。こう考えると例えば0℃でのサーミスタによる温度測定は±0.53℃の拡張不確かさ(k=2)を持つということになります。

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以下余談です。

私はB定数は25℃より高い温度で定義してあるのでサーミスタというのは高温に強いと思っていました。しかし実際は上のグラフでわかるように低温に強いです。
高温側で許容誤差が大きくなるためその対策としてB定数は25℃より高い側で定義する、ということなのかもしれません。

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関連

記事一覧(測定、電子工作、天文計算

サーミスタについて
  「サーミスタで温度を測る - 温度と抵抗値の相互変換 - B定数について
  「サーミスタによる温度測定の精度 - 2 - B定数の温度特性
  「サーミスタで正確な温度を求める方法 - 抵抗値-温度変換計算の精度と誤差
  「サーミスタ温度測定の精度と誤差 - 熱放散定数と自己加熱
  「サーミスタ温度測定の精度と誤差 - 製品のばらつきによる不確かさ」 (この記事)

  「サーミスタの抵抗値とB定数を実測する(25℃編)
  「サーミスタの抵抗値とB定数の実測値(55℃編)
  「計測の腕が試される? サーミスタの抵抗とB定数の測定

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