« 目で見るサーミスタの自己発熱 - 熱放散係数を求める | トップページ | 金属皮膜抵抗の温度係数を測ってみた - KOA 1kΩ(MF1/4CC1001F) »

2015年6月15日 (月)

(白金)測温抵抗体(Pt100、白金薄膜抵抗)の使い方 - 基礎編というか入門編というか....

断捨離やってます。

  「PICkit3,GPS受信モジュール,ロジックIC,OPAmp,LCR,Tr,LED等多数」 (ヤフオク)

  測温抵抗体やその測定回路も含まれています。

-----------

温度測定に関する記事をいっぱい書いているのですが測温抵抗体は熱電対やサーミスタにくらべると人気がないです。
測温抵抗体についても記事を書いてきたのですが、測温抵抗体とはどういうものか、どうやって使うのか、どういう特徴があるのか、というようなことはぜんぜん書いてないのでこの際ちょっと書いてみたいと思います。

なお測温抵抗体という堅苦しい名前を聞くと入手が難しそうですが、例えば秋月電子通商で購入できます。白金薄膜抵抗というものですがこれには二種類あって一つが\350._、もう一つが\600._です。
私のおすすめは\350._の方なんですがかなり小さいのでそういうのに慣れていない方は\600._の方がいいかもしれません。

ただ秋月電子通商のものはどちらもClass Bです。より精度の高いClass Aや1/3 DINは例えばRSオンラインで入手できます(1/3 DINが\870._で買えました。これも秋月の\350._なみに小さかったです)

Class Aは許容誤差がClass Bの1/2、1/3 DINはClass Bの1/3です。

なお使用温度範囲はけっこう広く-200℃から600℃あるいは800℃くらいまでは測れるようです(ただし許容誤差が保証される範囲はこれより狭い場合もあります)

一般に測温抵抗体というと白金線をコイル巻きにしたもののようですが、我々が入手しやすいものと言ったら薄膜抵抗でしょう。まがい物っぽい感じもしますがそんなに気にすることもないと思います。専門家が書いたものを読んだら薄膜抵抗は自己発熱が大きいと書かれたものがありましたが例えば0.03Kの自己発熱を大きいと感じるか小さいと感じるかと言えば小さいと感じる方がほとんどでしょう。

ただ薄膜抵抗を使っていていつもこれストレンゲージの代わりに使えるのはないの、と思ってしまいます。やっぱり力を加えた状態にするのはまずいと思います(ほんとにストレンゲージになるかどうかは調べていません)

ちなみにITS-90国際温度目盛だと熱力学温度計の領分を除く13.8033K~961.78℃が測温抵抗体の担当です(ただ測温抵抗体と言ってももちろんこの記事で書いているようなものとは別物です。詳しくは理科年表などにありますが温度係数がもっと大きなものを使えとあります。専門家の書かれたものを見るとそういうのはそんなそう簡単に目にするものではないらしいです)

======

タイトルを“(白金)測温抵抗体”としたのは正式な名前は“測温抵抗体”みたいだからです。これにはいろいろ種類があるのですが入手しやすいものとなると0℃での抵抗値が100Ωで温度係数が3851ppm/Kのものがふつうなので以下これ(Pt100と呼ばれます)について書きます。Pt100以外にもPt25とかあるのですがこれはとても素人が手にすることができるお値段じゃなさそうです(取り扱いも難しいらしいです)もっとも“本物の”Pt100もおいそれとは入手できないでしょうが。

またPt1000みたいなのがあるようです。これは入手は容易ですが私は使ったことがなくてよくわかりません。

-------

サーミスタや熱電対を使ったとき困るのはこういうことだと思います。

・抵抗値や起電力から温度を求めるのがめんどう

サーミスタの抵抗値はふつう基準抵抗とB定数で表されるのですがB定数が温度によって変化するのでめんどうです。

熱電対の場合は「熱電対の起電力の近似式 - 起電力と温度の相互変換」の記事がいつも人気記事ランキングに入っているのを見ればみなさん苦労されているのがよくわかります (^^;;

・求めた値がどのくらい正しいか(つまり不確かさがどのくらいか)よくわからない、あるいは許容誤差が大きい

サーミスタの場合はこれは実際に測ってみないとわからないようです。
つまり校正していないサーミスタの温度測定値の不確かさは(25℃のような点を除けば)知ることができないと思います。

熱電対は規格があるのですがK型/Class1で±2.5℃、K型/Class2で±1.5℃です。

・校正がむずかしい

サーミスタの場合25℃での抵抗値ともう一点の温度での抵抗値がわかれば精度はかなりよくなります。ただこのためには正しい温度がわかる精度の高い温度計が必要ですし、ほんとに精度を要求するのであれば使用温度全範囲での校正が必要だと思います。

これは熱電対でも同じようですが、熱電対の場合はさらに冷接点の温度の測定の精度も要求されます。

-------

Pt100は抵抗値を測りそれを温度に換算します。これだけだとサーミスタと似ていますし、熱起電力を測って温度に換算する熱電対とも似ています。ただPt100の場合はとても直線性がいいです。そしてその計算式や誤差は規格として示されています。

  0℃以上のとき温度から抵抗値を求める計算式
    Rt = R0 * ( 1 + 3.9083e-3 * T -5.775e-7 * T^2 )
  0℃以下の場合
    Rt = R0 * ( 1 + 3.9083e-3 * T -5.775e-7 * T^2  + -4.183e-12+(T-100)^3 )
    Rt = R0 * ( 1 + 3.9083e-3 * T -5.775e-7 * T^2  -4.183e-12+(T-100)*T^3 )

  抵抗値から温度を求めるのであれば0℃以上の場合
    T = -(0.39083-SQRT(0.39083*0.39083+4*0.00005775*(R0-R)))/2/0.00005775

上の式は二次式、三次式 四次式になっていますが二次~四次の項の係数はとても小さく室温くらいなら一次式とたいしてかわりはありません。つまりこれが直線性がいいということです。

抵抗値から温度を求める方で0℃以下の場合と0℃以上でもコーディングの関係でSQRTを使わずに計算したい場合についてはあらためて記事にします。 
0℃以下と言っても0℃をちょっと切ったくらいなら0℃以上の式を使っても問題ありません。

-200℃~850℃で使える換算式を用意しました。
測温抵抗体(Pt100、白金薄膜温度センサー)の抵抗値を温度に変換する(平方根を使わない)計算式
 

------ 

Pt100と言ったら必ず上の計算式にしたがいます。
これはふつう温度係数3851ppm/Kあるいは3850ppm/Kと表示されていますがこの温度係数は0℃~100℃の抵抗値変化を100で割ったものです。

そしてこれらの数値には許容誤差が決められています。R0というのは0℃における抵抗値なのですがこれについては

  1/3 DIN 100.00±0.04Ω  
  Class A 100.00±0.06Ω  
  Class B 100.00±0.12Ω


となります。また温度係数については

  1/3 DIN 3851± 4ppm/K  
  Class A 3851± 6ppm/K 
  Class B 3851±13ppm/K

です。

このことから校正なしで使っても(抵抗値を正確___ここで言う正確とは抵抗値測定の不確かさが小さいことです___に測ることができれば)例えば25℃での測定温度値の許容誤差は

  1/3 DIN ±0.14℃
  Class A ±0.20℃
  Class B ±0.42℃


となり、任意の温度に対する許容誤差は

  1/3 DIN 0.10 + 0.0017*|T|
  Class A 0.15 + 0.002*|T|
  Class B 0.30 + 0.005*|T|


となります。0℃のときがいちばん誤差が小さくプラスでもマイナスでも0℃から離れるほど誤差は大きくなります。大きくなると言っても1/3 DINなんかだと300℃でも誤差は±0.6℃に過ぎません。

誤差の式の左の項が0℃での抵抗値の誤差に起因するもの、右の項が温度係数の誤差に起因するものです。
-60℃~60℃の範囲くらいでは0℃での抵抗値の誤差の影響が大きくこの範囲以外では温度係数の誤差の影響が大きくなっています。

---------

Pt100のいいところは校正が簡単でしかもその効果が大きいことです。氷点での校正ができ、精度の高い温度計を準備する必要がありません。氷点での抵抗値を正確___ここで言う正確というのは分解能と再現性が高いことで確度は要求されません___に測定できたとすれば上の25℃での許容誤差は理屈の上では

  1/3 DIN ±0.04℃
  Class A ±0.06℃
  Class B ±0.12℃


となります。室温近辺であれば許容誤差は0℃での抵抗値の影響が支配的なので氷点で校正するだけでぐっと精度が上がります。

------

少し上の方に“校正なしでも抵抗値を正確に測ることができれば”と書いたのですが、じつはこれはけっこうたいへんです。100Ωの抵抗を少なくとも±0.01Ωの不確かさで測る必要があるからです。これを実際にやるとすれば許容誤差±0.01Ω(以上)で温度係数の小さい(室温で測るとしても±10ppm/K以下の)抵抗と比較して抵抗値を求めるというのが簡単でしょうが、そういう抵抗は結構なお値段です。私の使っているアルファ・エレクトロニクスのものは@1,200._でした。1/3 DINの測温抵抗体より高かったということになります。

  「精密抵抗のお値段 - 抵抗器の精度と価格の関係

実際には氷点で校正するというのが現実的です。氷点で校正することによって温度を測定したときの確度もぐっと上がるというメリットもあります。
これは魔法瓶と水道水を用意し冷蔵庫で氷を作ればそこそこ精度のいい校正ができます。このときは抵抗値の確度はどうでもいいので温度係数が小さな抵抗を用意しその抵抗器との抵抗値の比を求めればOKです。要は0℃での測温抵抗体の抵抗値を100.00Ωと考えてしまえばいいわけですから。
とは言っても温度係数の小さい抵抗は精密抵抗といいうことになります。こういう目的に使える抵抗としては千石で売っているタクマン電子の±0.1%ものの抵抗(@150._)、マルツで売っているLinkmanの±0.5%ものの抵抗(@30._、ただし10本単位だったと思います)などがあります。

  「氷点 - 摂氏0度の作り方
  「金属皮膜抵抗と炭素皮膜抵抗の温度係数を測ってみた - まとめ

-------

ここからは実際に抵抗値を測る話です。抵抗値はとうぜん四線式で測定します。

電流を流し測温抵抗体での電圧降下を測ります。電流は1mAが定格です。この電流を大きくすると測りやすくなりますが自己発熱が電流の自乗に比例し増加します。逆に電流を小さくすると自己発熱は小さくなりますが電圧を測るのが難しくなり誤差も大きくなります。

100Ωの抵抗、3851ppm/Kですから0.1℃で約0.04Ω変化します。1mAだと電圧が約40μV変化します。16bitADコンバータMCP3425をGAIN=8で使うとフルスケール250mV、分解能8μVですからこのくらいが手頃でしょう。温度の分解能はだいたい0.02℃になります。さらなる分解能が必要な場合はMCP3553があります。

  「PICでI2C - ADコンバーター・MCP3425の使い方
  「22ビット(20.6bit)ADコンバータMCP3553の使い方

電流の流し方は以前は定電圧源から抵抗を通して行っていたのですが、今は定電流源を使っています。途中の抵抗が問題にならなくなりますし、電圧を0℃のときの電圧で割って100を掛けると抵抗値が求まるので簡単です。

  「サーミスタ/白金測温抵抗体/pn接合による温度測定のための定電流電源

--------

氷点で温度を測っている例です。

Pt100

これ(紫)は100.00Ω(0.01%)との比較で測定したPt100の抵抗値から算出した温度です。
Pt100の温度測定値が0.05℃になっていますがR0が100.00Ωではなく100.02Ωだったためです。1/3 DINを使っていますが±0.04Ωが許容誤差ですからその範囲内です。
これをもとに校正すれば上に書いたような精度の高い測定が可能になるはずです。
サーミスタ(灰色)は校正済みの温度ですが0.01℃ほど高くなっています。これは氷点が実現できていないというより測定対象の温度を正しく測れていないと考えた方がよさそうです。
Pt100の位置を調整したときほんのすこしですが段差ができています。0.1℃以下の測定はなかなかむずかしいです。そもそも氷点をちゃんと0.00℃にするというのは水道水ではムリっぽいようです。

  「氷点・摂氏0度の作り方と使い方 - センサーの位置と温度の関係


(「(趣味の)白金抵抗温度計の製作 - 準備編」へなんとなく続く)
-------

参考

  「白金抵抗温度計の校正とその使い方 - JCSS:計量法認定
  「はじめての精密工学 - 白金抵抗温度計を用いた精密温度測定
  「JEMIC 計測サークルニュースVol.26, No.2 ~ 4 連載(1997) - 浜田登喜夫 - 白金抵抗温度計の校正とその使い方

関連

記事一覧(測定、電子工作、天文計算

“温度”について
  「PICで作る温度計のセンサー比較(I2C/SPI温度センサ、サーミスタ、熱電対、白金測温抵抗体、pn接合など)
  「正確な温度を求めて (1)
  「温度センサ(サーミスタ・熱電対・(白金)測温抵抗体)の誤差
  「16bitADコンバータMCP3425とPICで作る白金抵抗温度計 - 1

白金測温抵抗体(白金薄膜抵抗)について
  「(白金)測温抵抗体(白金薄膜抵抗)の使い方 - 基礎編というか入門編というか....
  測温抵抗体(Pt100、白金薄膜温度センサー)の抵抗値を温度に変換する(平方根を使わない)計算式
  「(趣味の)白金抵抗温度計の製作 - 準備編
  「(趣味の)白金薄膜抵抗温度計の作り方 - 誤差について
  「16bitADコンバータMCP3425とPICで作る白金抵抗温度計 - 1
    とても単純な回路です。
  「サーミスタ/白金測温抵抗体/pn接合による温度測定のための定電流電源
    ちょっと複雑になりますが、使いやすい回路です。

“素人”でもできる校正について
  「氷点 - 摂氏0度の作り方
  「氷点・摂氏0度の作り方と使い方 - センサーの位置と温度の関係
  「体温計と魔法瓶で校正する白金測温抵抗体 - 36.5度編
  「Pt100(白金測温抵抗体)の校正状況 - 氷点=0.0℃編
  「脇の下恒温槽と体温計で白金抵抗温度計を校正してみた
  「続・(白金)測温抵抗体の氷点での抵抗値を測ってみた
  「(白金)測温抵抗体の氷点での抵抗値を測ってみた

恒温槽について
  「恒温槽 - 温度を一定に保つアルゴリズム - 1

自己発熱について
  「サーミスタや白金抵抗温度計の自己発熱の影響を補正する方法
  「白金測温抵抗体の自己発熱(熱放散係数)を測ってみた - 1

“測定装置”について
  「PIC+SPI+I2C 自記温湿度計+気圧計+8ch電圧計+周波数カウンタ(技術要素一覧)
  「PIC+SPI+I2C 自記温湿度計+気圧計+8ch電圧計のソース - main()

電圧の測定について
  「PICでI2C - ADコンバーター・MCP3425の使い方
  「22ビット(20.6bit)ADコンバータMCP3553の使い方
  「PIC18F26K22でSPI - 8ch/ADコンバータ MCP3208の使い方(ソース付き)

抵抗比を測定するための抵抗器について
  「精密抵抗のお値段 - 抵抗器の精度と価格の関係
  「金属皮膜抵抗と炭素皮膜抵抗の温度係数を測ってみた - まとめ

定電流回路(電圧電流変換回路)について
  「サーミスタ/白金測温抵抗体/pn接合による温度測定のための定電流電源(バイラテラル回路)

測定した結果を表示することについて(いずれもI2Cデバイスです)
  「I2Cのソース - PIC12F1822/16F1705/16F1938/18F26K22 - LCD(ACM1602)を例にして
  「I2C薄型液晶ディスプレイ(LCD)・AQM1602XAの使い方

測定した結果を保存することについて
  「PICでSPI SDカードを読み書きする

サーミスタについて
  「サーミスタで温度を測る - 温度と抵抗値の相互変換 - B定数について
  「PICで作るお手軽サーミスタ温度計 (2) - ソース付き

熱電対について
  「熱電対による温度測定の課題 - K型+インスツルメンテーション(計装)アンプ編

pn接合について

  温度係数
    「pn接合順方向電圧(VBE)の温度係数を測ってみた(高精度版)
    「pn接合の順方向電圧(VBE)と温度の関係 -1
     「pn接合の順方向電圧(VBE)と温度の関係 -2 測定方法

  電流-電圧の関係について
    「ログアンプ - ベース電流(IB)とベース電圧(VBE)の関係
    「pn接合の理想係数を測る

放射温度計
熱力学温度計
    「記事一覧(測定、電子工作、天文計算」の表に参考となる資料へのリンクがあります。

« 目で見るサーミスタの自己発熱 - 熱放散係数を求める | トップページ | 金属皮膜抵抗の温度係数を測ってみた - KOA 1kΩ(MF1/4CC1001F) »

趣味の実験」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く

(ウェブ上には掲載しません)

トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.f.cocolog-nifty.com/t/trackback/1994983/60390735

この記事へのトラックバック一覧です: (白金)測温抵抗体(Pt100、白金薄膜抵抗)の使い方 - 基礎編というか入門編というか....:

« 目で見るサーミスタの自己発熱 - 熱放散係数を求める | トップページ | 金属皮膜抵抗の温度係数を測ってみた - KOA 1kΩ(MF1/4CC1001F) »

フォト

サイト内検索

  • 記事を探されるんでしたらこれがいちばん早くて確実です。私も使ってます (^^;; 検索窓が表示されるのにちょっと時間がかかるのはどうにかしてほしいです。

新着記事

リンク元別アクセス数

  • (アクセス元≒リンク元、原則PCのみ・ドメイン別、サイト内等除く)

人気記事ランキング

  • (原則PCのみ、直近2週間)
無料ブログはココログ