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2015年6月16日 (火)

金属皮膜抵抗の温度係数を測ってみた - KOA 1kΩ(MF1/4CC1001F)

以前10kΩを主に各種の抵抗器の温度係数を測ってみたことがあります。今回はその続きで対象はKOAのMF1/4CC1001Fです。

1001Fは字面のとおり1kΩ±1%を意味しますが、その前のCC(の前の方のC)はT.C.Rが50ppm/K、その前の1/4が1/4W型のことです。秋月電子通商で1/4W型金属皮膜抵抗といったらだいたいこの系統みたいです。

CCのところはDCというのがあってそれはT.C.Rが100ppm/Kになります。Amazonの袋詰抵抗はあやしい感じのが多いのですが一つだけKOAの製品であることを明記したものがありそれがDCでした。私はCCじゃなかったので買わなかったのですが、Amazonで買うんだったら他のを買うよりはこれを買った方がどんなものが来るか心配しなくていいような気がします。

(Amazonではないのですが)じつは通販の金属皮膜抵抗袋詰で失敗したことがあります (^^;;

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なぜこんなことを始めたかというと「秋月電子通商の金属皮膜抵抗器の話 - KOA MF1/4CC2002F 20kΩ」にいただいたkmnkさんの秋月(あるいは千石)で売っているKOAの±1%、±50ppm/Kの金属皮膜抵抗器についてのコメントに興味深い内容があったからです。

詳しくは上の記事のkmnkさんのコメントを読んでいただきたいのですが....

T.C.Rは抵抗値によってかなり違うとのことです。これはあたりまえの話だとは思うのですが、その違い方が私が想像していたものとぜんぜん違っていました。いただいたデータをグラフにしてみました。
Mrkmnk

私は抵抗値に応じて連続的(=何らかの規則性をもって)にT.C.Rが変化していくものだと思っていたのですがそういう傾向はまったくないように見えます。強いて書けば5.1kから100kは製造方法が同じでそういう傾向を持つと解釈できないことももないような...

とにかく1k、2k、100kのT.C.Rの小ささが目立ちます(2kはKOAではなく利久電器だったそうです)この値は以前調べたLinkmanの10kΩ、0.5%の金属皮膜抵抗の25℃での値より小さい値で、特に利久の2kになると一本150円するタクマン電子の10kΩ、0.1%の抵抗(の25℃での値)とたいして変わりません。

なおこのグラフについて補足すると....

オレンジ色っぽいのが一つありますがこれは私が以前調べた20kΩの温度係数です。これはT.C.Rではなく25℃での温度に対する抵抗の変化率つまりdR/dTです。T.C.Rを温度係数とすれば、こちらは微分温度係数と言えばいいのでしょうか。

500kΩの抵抗のT.C.Rが50ppm/Kを超えており規格外ということになりますが、kmnkさんのT.C.Rは27℃~100℃でのもの、仕様は25℃~125℃でのものなのでこれだけではなんとも言えません(例えば75℃で25℃の抵抗値より1%=10,000ppm増えても125℃でもとの抵抗値に戻ればT.C.Rは0ppm/Kということになります)

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さて本題のKOAのMF1/4CC1001Fの件です。
以前(微分)温度係数を測ったときは自動平衡ブリッジをブリッジ風(?)に使うことで分解能を上げました。今回は20.6bitADコンバータと安定性のある定電流回路(バイラテラル回路)があるので測定対象に1mAの電流を流し電圧降下を測るという直接的な方法にしました。
要するに測温抵抗体やサーミスタの抵抗値を測るのに使っている回路を流用しました。100Ωの抵抗だったら1μVくらいの分解能があるのですが1kΩとなると(電源ノイズが原因だと思いますが)そこまでの分解能はありません。できるだけデータを採って“ならす”という方針で行きます。
ヒータを仕込んだアルミブロックの上に抵抗と1/3 DINの測温抵抗体を載せ断熱材でくるんで加熱したり冷ましたりします。

Mf14cc1001f_drdt

35℃を基準にしています。温度上昇時も温度下降時もだいたい同じような動きをしているのでまあ問題ないでしょう。上昇時と下降時で同じにならないのは容器内に温度のムラがあるためでしょう。往復同一直線上に載せようと思ったらオイルバスを使うとか熱抵抗の小さい容器に入れて水中で測るとかそういうことをしないとダメだと思います。書くのは簡単ですが実際にやるのはとてもめんどうなのでたぶん実際にそういうことをすることはないと思いますが。

肝心の(35℃での)温度係数は-6ppmと小さい値になっています。kmnkさんのT.C.Rとは符号が違いますが値はだいたい同じです。kmnkさんは絶対値だけを書かれていたのかも....

温度係数がとても小さいのは確かです。

これだったら個体差があってもたいしたことはなさそうですからオペアンプの増幅率設定なんかには最適なんじゃないでしょうか(個体差がどのくらいあるかはちゃんと調べなくてはならないのですが)

5kΩの抵抗が必要になったらこの1kΩの抵抗を5本直列にして使うかもしれません (^^;;

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関連記事

記事一覧(天文、電子工作、測定)

  「金属皮膜抵抗と炭素皮膜抵抗の温度係数を測ってみた - まとめ

  「秋月電子通商の金属皮膜抵抗器の話 - KOA MF1/4CC2002F 20kΩ
  「金属皮膜抵抗(茶帯)の温度係数を測ってみた - KOA MF1/4CC2002F 20kΩ (秋月電子通商)
  「金属皮膜抵抗(紫帯)の温度係数を測ってみた - タクマン電子 10kΩ
  「金属皮膜抵抗(緑帯)の温度係数を測ってみた Linkman - 10kΩ
  「金属皮膜抵抗(緑帯)の(室温での)温度係数を測ってみた(暫定版)
  「金属皮膜抵抗(茶帯)の(室温での)温度係数を測ってみた(暫定版)
  「炭素皮膜抵抗の温度係数を測ってみた(暫定版)

  「サーミスタ/白金測温抵抗体/pn接合による温度測定のための定電流電源(バイラテラル回路)
  「22ビット(20.6bit)ADコンバータMCP3553の使い方
    (今回測定に使ったものです)

  「自動平衡ブリッジの原理と回路の作り方
    (前回測定に使った方法です)

  「精密抵抗のお値段 - 抵抗器の精度と価格の関係
 
  PIC+SPI+I2C 自記温湿度計+気圧計+8ch電圧計+周波数カウンタ(技術要素一覧)
    (今回の測定に使った装置の概要と技術要素ごとの記事へのリンクがあります)

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コメント

セッピーナさん、なんか計測をお願いしたみたいな形になって、しかも、私の結果をグラフにまでしていただいて申し訳ありません。

各抵抗のTCRですが、ご推察の通りお送りした値は絶対値で、符号はほとんどが負です。
ただし、唯一つだけ200KΩが正です。

510KΩは負の最大値のTCRで、200KΩが唯一の正のTCRですから、全然一貫性ないですね。

この510KのTCRが-55ppm/度ですが、測定方法がいい加減なので、規格範囲外とは思ってません。
(再度測ってみましたけど、やっぱりこの程度の値になりますが。)

ナンチャッテ計測にかかる時間が、1抵抗あたり3分ぐらいのきわめて荒っぽい計測なので、
1KΩのTCRが-6ppm/度と-5ppm/度の違いなら、誤差の範囲という、私のいい加減な認識です。


話は変わりますが、1本30円(5本単位)で15ppm/度という抵抗があるのを見つけました。

http://jp.rs-online.com/web/p/through-hole-fixed-resistors/7548792/


これの実力値がどのぐらいなのか興味ありますが、測定に使ってきたDMMを明日から較正に出す事にしたので、
この手の実験はしばらくお休みします。

校正・調整費用がヤフオクで落としたのと同額ぐらい掛かるんですけど、抵抗レンジとと電流レンジで測定の
誤差が大きいのが気になってきました。気に入ったDMMなので、ちゃんと精度を保つことにしました。

いえいえ私も好きでやってますから。
校正済みの6+1/2桁となるともう怖いものなしですね (^^)
RSオンラインの抵抗安いですね。タクマン電子の0.1%以上のスペックで(千石の)1/5の価格ですから。
私も気になりますが送料が....
引き続き他の抵抗もやってみようと思っているのですが抵抗値が大きくなると電源ノイズがのってくるので今はその対策をやっています。
ところで20kΩの温度係数は私の持っているのはプラスでした。ロットが違うんでしょうかね。


えっ。家に帰ったらもう一度確認します。

お手数かけてすみません。
今符号も考慮したグラフを作っています。

利久電器の15Kと30Kを手に入れてきちゃいました。

秋月の金属皮膜には、ポツリポツリと利久電器のが入ってます。
ROで始まる型番を探せばよいのです。
# 注意: 2KはWEB上ではKOAの形式名ですが、売ってるのは利久だから、売り場での確認が必要。

2K(利久), 1K(KOA)の温度特性が良いことは分かっているのですが、私の用途だと値が小さすぎるのです。一方、100K(KOA)は大きすぎる。
そこで、15K, 30Kでも利久マジック(?)を信じてみることにしました

昨日まで使っていたDMMは較正に出してしまいました。
違うDMMで測るのでレスポンスが少し悪いのとノイズに多少弱いので、
計測がうまくいかないかもしれません。


ところで、セッピーナさんDMM計測でのPLC(Power Line Cycles)っていう単語ご存知ですか?
DMMにおいて、電源ノイズ(関東だと50Hz)を低減するため、
積分型ADコンバータの積分時間を電源周期(関東だと20ms)の何倍にするかという設定値です。
それなりのDMMでは設定が可能です。

積分区間が1PLC以下や、整数倍ではない場合など、どうしても電源ノイズの影響を強く受けます。
ご参考までに。


こんなに色んな抵抗を買うくらいなら、最初からえいやっと高精度抵抗を買えば良い。っていう気がしてきました。。。

温度係数はけっきょく測ってみないとわからないですね。
10kΩの温度係数が1ppm/K以下なので安心して使っていたタクマン電子の0.1%も他の抵抗値ではもっと大きいようです。無条件で使えるものと言ったらもうメタルフォイルしかないんじゃないでしょうか (^^;;
私の使っているMCP3553の上位にあたるMCP3530-50とかMCP3530-60が電源50Hz/60Hz除去率120dBとありましたのでそういう手法を採っているんじゃないでしょうか。SPSもそんなことをやっている感じです。
私のはそういうのはないので電源の一周期分のサンプル数を調べておいてその整数倍回数測って平均をとる方法でやっています。これでかなりというか相当に改善しますがノイズがのらないようにするのがいちばんだと思うのでノイズ対策中です。

セッピーナさん、
20KΩの抵抗の温度係数の符号ですが、やっぱり負です。

温度が上がると抵抗値が小さくなってます。


しかし、この程度の温度係数がプラスになったりマイナスになったりするように、
製造ばらつきがあるとか、材料を変えたりとかするのでしょうか?

そうならば、買うたびに一喜一憂しないといけませんね。

わざわざありがとうございました。
おそらくロットが違うんでしょうが40ppm以上違うとなるとつらいですね。
同じロット(同じ袋)でこういうことがなければいいんですが....
今、同じ袋に入っている抵抗は同じ温度係数を持つという前提で回路を作っておりこの前提がくずれるとかなり痛いです。

セッピーナさん、
利久の15Kと30Kをざっと調べてみました。
やっぱり測定器が違うので、今ひとつ安定した値が得られません。

それでも、利久の15Kはかなり小さいように見えてます。
利久の30Kも、KOAの20Kよりは小さいけれど、すごく小さいとは言えません。
いずれも温度係数は負です。

定量的に数値を言えなくてすみません。

いま、温度の設定がもう少しまっとうにできる方法を考えてます。
それができたら全部測定しなおすつもりです。

ものによってけっこう違いがあるようですね。
同じメーカーの同じ製品の系列なら温度係数の傾向は似ているはずという前提(思い込み)でやっていましたが考えを改めた方がよさそうですね。
同じロットなら温度係数はだいたい同じ、というのが正しいかどうかから始めた方がいいかもしれませんね (^^;;

セッピーナさん、

従来より、少しはましな温度設定ができるように、極小恒温槽もどきを作りました。

細いアルミパイプに10本ぐらい抵抗を巻きつけてヒータとして加熱し、
外部を発泡スチロールで断熱しました。
管内の温度を見ながら抵抗に与える電圧を手で変えて温度を一定にしてます。
温度測定は、秋月の1000円テスターの熱電対温度計なので、
数度の誤差はあると思います。
(室温が3度ぐらい高く表示されている)


これを使って、利久の15kΩの温度係数を調べてみました。
室温時 30度(本当は27度) 14.9750kΩ
100度時 ΔR = +7.4Ω
したがって、70度温度差で+494ppm
だとすると、この抵抗の温度係数が+7ppmとなります。


以前、15kΩの温度係数は負と書きましたが、これは正です。

変だと思って、別の15kΩを測ったら、-4ppmぐらいと負でした。
さらに別のを測ると+5ppmぐらいで正でした。

同じ袋に入っているものでもこのくらいばらついてます。
しかし、測った15kΩはいずれも温度係数は小さかったです。


一方、利久の30kΩの方を3本測定したら、
-14ppm, -10ppm, -7ppm
となって、倍ぐらいちがいます。

利久の抵抗の袋にはロット番号のようなものは書かれておらず、
一袋の中が同一のロットなのかどうかわかりません。

利久の温度係数の保障値は100ppmですから、当てにする方が悪いのですが、、、


その点KOAは同一ロットのように見えますから、もう少し特性が揃っていると良いのですが。

おお、測定装置まで作られましたか!
私も測定方法の改善アイデアはいろいろあるのですがぜんぜん手がついていません (^^;;
今回も貴重なデータありがとうございます m(._.)m
わざわざ別のロットを混ぜあわせるのは手間ですから同じ袋だったら同じロットのような気がするのですが....
教訓としては、正確な抵抗値、小さい温度係数の抵抗がほしかったらそれなりのものを買いなさい、ということでしょうか。
こうなってくると先日紹介していただいたRSオンラインの抵抗は期待できるかもしれませんね。
抵抗値の許容誤差は使用可能温度範囲で満たされていると思うので、もしそうなら0.5%もの0.1%ものとどんどん温度係数が小さくなるのではないでしょうか。
実際0.1%ものは温度係数を測るのがものすごくたいへんです。まだ二つしかやっていませんが (^^;;

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